都市と地方における地域包括ケア提供体制の在り方に関する総合的研究

文献情報

文献番号
201401005A
報告書区分
総括
研究課題名
都市と地方における地域包括ケア提供体制の在り方に関する総合的研究
課題番号
H25-政策-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
西村 周三(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 山内 直人(大阪大学)
  • 園田 眞理子(明治大学)
  • 井上 由起子(日本社会事業大学)
  • 所 道彦(大阪市立大学)
  • 藤井 麻由(北海道教育大学)
  • 藤原 朋子(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 金子 隆一(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 佐々井 司(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 中川 雅貴(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 川越 雅弘(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 泉田 信行(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 菊池 潤(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 西森 和寛(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 鎌田 健司(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 山本 克也(国立社会保障・人口問題研究所)
  • 金子 能宏(国立社会保障・人口問題研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、人口学、保健学、建築学、社会学、経済学、公共政策学等の学際的な観点から、超高齢社会における地域包括ケア提供体制のあるべき姿を、地域特性や地域課題が異なる都市と地方別に明示した上で、実現に向けた具体的な政策手法の検討と政策提言を行うことを目的とする。
研究方法
本研究では5つのサブテーマ(1.先行事例分析、2.人口・世帯・住宅動向分析及び地域類型化の検討、3.医療・介護需要及び提供体制分析、4.世帯の経済・雇用状況分析、5.総合データベース構築)を設定し、これらテーマ毎に、現状分析、課題抽出、課題解決策の検討を行う。本年度は、テーマ1に関し、ヒアリング及び視察を、テーマ2に関し、①市町村別死亡者/出生者数の将来推計方法の開発、②85歳以上世帯の将来推計、③高齢者の人口移動分析、④小地域における将来人口推計方法の開発、⑤サ高住の整備状況分析などを、テーマ3に関し、①介護人材の都道府県別需給推計、②在宅医療実施診療所の配置とサービス範囲分析、③OECD諸国におけるインフォーマルケア支援策の動向分析などを、テーマ4に関し、地域の経済状況と高齢者の就業率の動向の分析などを、テーマ5に関し、人口・世帯/医療・介護/経済状況に関する都道府県版、及び市町村版総合データベースの構築を実施した。
結果と考察
テーマ1に関し、様々な先進自治体を調査した結果、地域との「共生」を活かした施策を展開するためには、①リーダーシップの重要性、②成功事例における下地となる「地域力」の存在、③「防災」を契機とした地域づくりの可能性などの要素が必要であることがわかった。
テーマ2に関し、高齢者の人口移動分析では、①大都市圏の転出超過は、おもに、中心部や政令指定都市で生じており、その周辺部では転入超過であった、②非大都市圏では、中心部での転入超過や非中心部における転出超過という、大都市圏域とは逆の傾向がみられたなどが、また、サ高住調査では、①月額費用が高い「東京都」では地価の高さから整備が進まず、月額費用が手頃で厚生年金層や共済年金層が比較的多い「それ以外の政令市と中核市」で堅調であった、②東京では高額物件が38.6%と極めて多く、地方で低額物件が20%を超えているなどがわかった。
テーマ3に関し、介護人材の需給分析では、2025年までに、生産年齢人口に占める介護職員の割合を1.44~1.90倍に増やさなければ、急増する介護需要に対応できないことが、また、在宅医療実施診療所調査では、人口分布に従って在宅医療を実施している診療所が立地し、それにより所要時間で在宅サービスを提供する所在地から移動できる範囲が決まっていることがわかった。
テーマ4に関し、都道府県別のデータを用いて、地域の経済状況や高齢者の就業状況を観察した上で、年金給付の高齢者の就業率に及ぼす影響について回帰分析を行い考察した。
テーマ5に関し、昨年度は都道府県ベースでの人口・世帯・住宅・医療・介護・財政に関する総合データベースを構築したが、本年度はさらに二次医療圏ベース及び市町村ベースで整備した。
近年、地域包括ケアに関する研究は、社会的にもその注目度が増し、さまざまな角度から広範囲になされている。類似の研究と比べた本研究の特徴は、次の点にある。第一に、近年日本で急速に関心を呼んでいる「人口減少」「高齢化」「少子化」という現象に配慮しつつ、地域の将来像を垣間見るという視点をおいたこと、第二に、今後ますます重要性を増すと思われる「医療と介護との連携」という観点に視野をおいて分析を進めたこと、第三に、多くの地域の実例を基礎に議論ができるよう、日本全国の先行事例を幅広く収集するよう努めたこと、第四に、今後のこの種の研究の発展に寄与するよう、各種のデータベースの整備に努めたことである。本研究は、研究対象となる範囲が多方面にわたるため、データの利用可能性について、多方面の研究者間の情報交換がきわめて有効であった。
結論
地域包括ケアシステムを構築するためには、①人口・世帯動向を含む地域特性の把握、②地域包括ケアを構成する住まい、医療、介護、生活支援・介護予防の各領域の実態把握、③地域課題に対する解決策の検討と推進といった、市町村の地域マネジメント力強化に加えて、それをバックアップする都道府県の役割の強化、地域類型に応じた国の施策展開も重要となる。これを研究面から側面支援するためには、地域類型別の総合的な課題整理と対応策の提言が重要となる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201401005Z