診療報酬の適正評価のための看護ケア技術体系化に向けた研究

文献情報

文献番号
201401002A
報告書区分
総括
研究課題名
診療報酬の適正評価のための看護ケア技術体系化に向けた研究
課題番号
H24-政策-一般-011
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
山田 雅子(学校法人聖路加国際大学 教育センター)
研究分担者(所属機関)
  • 井部 俊子(学校法人聖路加国際大学 看護学部)
  • 岡谷 恵子(東京医科大学 医学部看護学科)
  • 任 和子(京都大学大学院 医学研究科人間健康科学系専攻)
  • 齋藤 訓子(公益社団法人日本看護協会)
  • 小野田 舞(飯塚 舞)(東京医科大学 医学部看護学科)
  • 浅田 美和(学校法人聖路加国際大学 聖路加国際病院)
  • 田倉 智之(大阪大学大学院医学系研究科 医療経済産業政策学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,320,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、看護サービスの診療報酬の適正評価に向け、専門性の高い知識と技術が必要とされる「看護ケア技術」を抽出し、それを技術提供の負荷と成果の指標を用いて価値に基づく体系化を行うことをめざした。最終年度は、専門家会議を招集し「生命危険度」と「セルフケア依存度」の2軸を用いた9つの患者マトリックスを試作し、それぞれの「看護ケア技術」において看護師が期待する成果と看護実践の負荷について調査を行い、「看護ケア技術」の体系化を試みることである。
研究方法
看護系学会および団体から参加者を募り、専門家会議を招集し、「看護ケア技術」ごとに患者マトリックスを試作し洗練した結果、「ポジショニングケア技術」、「服薬管理ケア技術」および「リンパ浮腫ケア技術」の3技術についてそれぞれの患者マトリックスを作成した。
作成した患者マトリックスを用いて、該当する「看護ケア技術」の期待すべき成果と、それを実践する際の看護師の負荷について、調査票を用いて調査した。調査には病院を対象に2,180部の調査票を配布し、631名からの有効回答が得られた。内訳は、「ポジショニングケア」には545名、「服薬管理ケア」には501名、そして「リンパ浮腫ケア」には227名の看護師が回答した。
結果と考察
その結果、「看護ケア技術」別、9つの患者像別に、看護師が期待する成果と看護実践の負荷を得点化することができ、各「看護ケア技術」の特徴を記述することができた。また、看護師実践の負荷に関する得点を、ベースラインとなる「看護ケア技術」と比較することで、3つの「看護ケア技術」の「看護師の負荷」を1本の串で束ね、それを一つの価値の視点として「看護ケア技術」の体系化を試みた。結果、「生命危機度」、「セルフケア依存度」の双方が最も高いとする患者像(A3)に対する「ポジショニングケア技術」が最も価値が大きいとされた。以降、患者像(A2)に対する「ポジショニングケア技術」が第二位。患者像(A3)に対する「リンパ浮腫ケア技術」が第三位となった。
今後は、更に多くの「看護ケア技術」について患者マトリックス化を進め、病棟のみならず外来、介護保険施設、在宅等における「看護ケア技術」の価値の評価を進めることで、「看護ケア技術」に基づく看護の経済的な評価につながるものと考える。
結論
看護ケア技術として「ポジショニングケア技術」、「服薬管理ケア技術」、「リンパ浮腫ケア技術」を取り上げ、看護師の負荷を軸にした体系化を試みた。「生命危機度」と「セルフケア依存度」の2軸で患者像を表すことで、同じ看護ケア技術であっても患者像が異なると期待する効果や看護師の負荷も異なることがわかった。この方法を用いて、広く看護ケア技術の体系化につながることが示唆された。「セルフケア依存度」については特に、子どもや高齢者を想定し、認知能力に関連するセルフケア依存度に焦点化した看護ケア技術を価値に基づき評価していこうことで、医療機関のみならず、介護保険施設等における看護師配置等の検討に役立つものと考えた。 

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

文献情報

文献番号
201401002B
報告書区分
総合
研究課題名
診療報酬の適正評価のための看護ケア技術体系化に向けた研究
課題番号
H24-政策-一般-011
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
山田 雅子(学校法人聖路加国際大学 教育センター)
研究分担者(所属機関)
  • 井部 俊子(学校法人聖路加国際大学 看護学部)
  • 岡谷 恵子(東京医科大学 医学部看護学科)
  • 任 和子(京都大学大学院 医学系研究科人間健康科学系専攻)
  • 齋藤 訓子(公益法人日本看護協会)
  • 小野田 舞(飯塚 舞)(東京医科大学 医学部看護学科)
  • 浅田 美和(学校法人聖路加国際大学 聖路加国際病院)
  • 田倉 智之(大阪大学大学院医学系研究科 医療経済産業政策学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在の診療報酬における入院基本料は看護師の人員配置を中心にした体制評価であり、実際に提供されている看護の質を正確に反映したものとはいえず、患者・国民にとってもわかりづらい考え方である。そのため、看護の専門的知識・技術が必要とされる各ケア技術に対する独立した看護の評価体系の確立が必要だと考える。本研究の初年度である平成24年度は、看護系学会等社会保険連合加盟学会・団体と協同し、診療報酬の適正評価を行うための専門性の高い知識と技術が必要とされる「看護ケア技術」を抽出し、技術難易度・アウトカム・医療費原価等による評価指標を検討することを目的とした。
研究方法
【初年度】文献検討と体系化すべき「看護ケア技術」の抽出をおこなった。調査対象は看護系学会等社会保険連合に加盟している学会および団体とし、合計171項目が挙げられた。(一次調査)【2年目】一次調査で挙げられた「看護ケア技術」をどのように類型化するのかについて、主に研究分担者と共に意見交換をし、「生命危機度」および「セルフケア依存度」の2軸で患者像マトリックスを作成する方法を見出した。またそれを用いて技術の難易度、効果としてのアウトカム、人件費等の評価指標を用いて、「看護ケア技術」の評価が可能であるのかを確認するために二次調査のプレテスト(第1回目)を実施した。
【最終年度】第一回目のプレテストの結果から見えてきた課題を基に、2次調査を計画し実施した。まず、専門家会議を招集し、「看護ケア技術」ごとに患者像マトリックスを作成した。そのうち、「ポジショニングケア技術」を取り上げ2回目のプレテストを実施した。2回目のプレテストの目的は、調査票が詳細でわかりにくいことが課題であったため様式を大幅に変更し、必要なデータが得られるかどうかを把握することであった。その後、「服薬管理ケア技術」、「リンパ浮腫ケア技術」を加え二次調査を実施した。
結果と考察
看護ケア技術」別、9つの患者像別に、看護師が期待する成果と看護実践の負荷を得点化することができ、各「看護ケア技術」の特徴を記述することができた。また、看護師実践の負荷に関する得点を、ベースラインとなる「看護ケア技術」と比較することで、3つの「看護ケア技術」の「看護師の負荷」を1本の串で束ね、それを一つの価値の視点として「看護ケア技術」の体系化を試みた。結果、「生命危機度」、「セルフケア依存度」の双方が最も高いとする患者像(A3)に対する「ポジショニングケア技術」が最も価値が大きいとされた。以降、患者像(A2)に対する「ポジショニングケア技術」が第二位。患者像(A3)に対する「リンパ浮腫ケア技術」が第三位となった。
患者像を表す軸として「セルフケア依存度」を取り上げたが、動作能力に関連したセルフケア依存度、認知能力に関連したセルフケア依存度、さらには、家族を単位としたセルフケア依存度といった要素に分けてさらに細かく患者像を表すことで、高齢者や小児といった対象者への看護ケア技術の価値を見える化することができると考えた。
結論
看護ケア技術として「ポジショニングケア技術」、「服薬管理ケア技術」、「リンパ浮腫ケア技術」を取り上げ、看護師の負荷を軸にした体系化を試みた。「生命危機度」と「セルフケア依存度」の2軸で患者像を表すことで、同じ看護ケア技術であっても患者像が異なると期待する効果や看護師の負荷も異なることがわかった。この方法を用いて、広く看護ケア技術の体系化につながることが示唆された。「セルフケア依存度」については特に、子どもや高齢者を想定し、認知能力に関連するセルフケア依存度に焦点化した看護ケア技術を価値に基づき評価していこうことで、医療機関のみならず、介護保険施設等における看護師配置等の検討に役立つものと考えた。 

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201401002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
多様な患者に対し多様な意図を持った看護ケア技術が多様に存在する現実の中で、これまで、患者分類、看護ケア分類、成果分類はそれぞれ研究されてきたが、患者像に合せた看護ケア技術の評価をした研究はなかった。本研究で、同じ看護ケア技術であっても患者像ごとにその期待する成果と看護師の負荷には違いがあることに注目し体系化を試みた研究はない。看護ケア技術別に患者像を作成するという発想は新しく、今後、看護ケア技術をその価値を軸として体系化を進める作業につながるものと考えた。
臨床的観点からの成果
診療報酬における看護の評価は、患者の重症度別に区分けされた病床特性に合せた看護職員の配置人数でなされている。そこでは患者の病状が重症であればあるほど看護師の配置人数が多くなるという仕組みとなっている。しかし医療現場での課題は、病状が重症であるばかりでなく、コミュニケーションに高度な技術や時間を要する患者への看護に関する評価が少ないという声が多く挙がってきているので、その実態を、本研究を継続することによって可視化できるものと考えている。
ガイドライン等の開発
該当なし。
その他行政的観点からの成果
該当なし。
その他のインパクト
第10回 三保連合同シンポジウム(平成25年2月13日日本看護協会ビルにて開催)で中間報告した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
山田雅子・井部俊子・岡谷恵子他(2014)看護技術評価の試み,日本内科学会雑誌,103(12),2913-2917.
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
 山田雅子他(2013).日本の診療報酬で看護をどう評価するか 看護ケア技術の体系化に向けた研究の進捗より,第33回日本看護科学学会学術集会.
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201401002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,818,000円
(2)補助金確定額
3,818,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,117円
人件費・謝金 682,600円
旅費 669,988円
その他 1,960,295円
間接経費 498,000円
合計 3,818,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2016-03-15
更新日
-