構造並びに機能再生を目指す脂肪組織由来幹細胞治療の開発

文献情報

文献番号
201337002A
報告書区分
総括
研究課題名
構造並びに機能再生を目指す脂肪組織由来幹細胞治療の開発
課題番号
H24-実用化(国際)-指定-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
後藤 百万(名古屋大学医学部附属病院 泌尿器科)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 徳則(名古屋大学医学部附属病院 泌尿器科)
  • 舟橋 康人(名古屋大学医学部附属病院 泌尿器科)
  • 亀井 譲(名古屋大学医学部附属病院 形成外科)
  • 水野 正明(名古屋大学医学部附属病院 先端医療・臨床研究支援センター)
  • 安藤 昌彦(名古屋大学医学部附属病院 先端医療・臨床研究支援センター)
  • 加藤 勝義(名古屋大学医学部附属病院 先端医療・臨床研究支援センター)
  • 平川 晃弘(名古屋大学医学部附属病院 先端医療・臨床研究支援センター)
  • 清水 忍(名古屋大学医学部附属病院 先端医療・臨床研究支援センター)
  • 高橋 雅英(名古屋大学大学院医学系研究科 病理学)
  • 松尾 清一(名古屋大学医学部附属病院 腎臓内科)
  • 丸山 彰一(名古屋大学医学部附属病院 腎臓内科)
  • 尾崎 武徳(名古屋大学医学部附属病院 腎臓内科)
  • 若林 俊彦(名古屋大学医学部附属病院 脳神経外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(国際水準臨床研究分野)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
90,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本事業では、体性幹細胞のひとつである脂肪組織由来幹細胞を用いて構造再生医療と機能再生医療のそれぞれを共通基盤に載せて開発することを目的とし、対象疾患として構造再生医療開発では「腹圧性尿失禁」を、機能再生医療開発では「強皮症」を取り上げ、5年以内の治験実施を目指す。平成25年度は、腹圧性尿失禁については臨床研究及び基礎的研究、強皮症については基礎的研究を行い、さらに多施設共同臨床試験実施に向けての基盤整備を行った。
研究方法
腹圧性尿失禁に対する臨床研究では、医師主導型治験の実施を目的として、非培養自己ヒト皮下脂肪組織由来幹細胞(脂肪組織由来再生細胞adipose-derived regenerative cells: ADRCs)を用いた腹圧性尿失禁治療の有用性と安全性に関する先行臨床研究を、平成23年3月ヒト幹臨床研究審査委員会により承認されたプロトコールに準拠して実施した。腹部皮下から吸引した脂肪250gから、CelutionTMシステムを用いて幹細胞を分離濃縮後、2種類の細胞溶液を準備し(1mlの幹細胞溶液と自己脂肪20g・幹細胞4ml混和液)、経尿道的内視鏡下に各液を外尿道括約筋内と膜様部尿道粘膜下に注入した。基礎的研究では、腹圧性尿失禁の再生治療に用いる脂肪由来幹細胞(ASCs)から筋分化の過程について、ネットワーク解析及びExpression profile解析、さらにメタボローム解析を行った。本再生治療の対象に前立腺癌術後腹圧性尿失禁症例が含まれることから、ADRCsの前立腺癌細胞に対する影響を、in vitro(ADRCs・前立腺癌細胞混合培養上清中の前立腺特異抗原測定)およびin vivo(ヌードマウスへのADRCsと前立腺癌株移植実験)により検討した。ASCsの強皮症治療に関する基礎的研究では、低血清培養法により得られるASCsの細胞性質の解析、安全投与量の検討、細胞凝集率の検討、マイクロアレイ溶媒が細胞の生存率に及ぼす影響について検討した。また、名古屋大学医学部附属病院における新たな治療方法の提供を推進するにあたり、脂肪組織由来幹細胞を用いた腹圧性尿失禁と強皮症を対象に、ICH-GCPに基づいた臨床試験の支援体制を提供するための整備を進め、腹圧性尿失禁を対象とした治験を実施するため、作成した試験計画の骨子を基に、厚生労働省医政局と医薬品医療機器総合機構(PMDA)と協議しながら、開発方針を決定した。
結果と考察
腹圧性尿失禁に対する臨床研究では、18症例を実施し、有効性と安全性に関する中間解析を行い、有望な臨床成績と安全性を確認した。男性14例では、術後尿失禁量は継時的に減少し、術後1年での改善例は14例中10例で尿失禁量は37.8%へ減少し、1例は術後6ヶ月で尿失禁が消失した。女性4例は、術後3ヶ月の時点で4例中2例が改善中である。基礎的研究では、ASCsから脂肪結合蛋白(FABP)が分泌され、オートクリーン、パラクリーンに作用して、筋分化を促進する現象について、ASCsが脂質の分解、取り込み、TCA回路亢進を介して行っていることを明らかにし、FABPは代謝亢進を介したASCsの新規・筋分化バイオマーカとなる可能性が示唆された。ADRCsの前立腺癌増殖に対する影響に関する基礎的研究では、ADRCsはin vitro実験における前立腺癌細胞による前立腺特異抗原産生、およびin vivo実験における移植前立腺癌細胞の増殖、いずれも抑制効果を示し、ADRCs傍尿道注入は前立腺癌術後腹圧性尿失禁症例に対して安全に実施できる臨床治療であることが示唆された。強皮症については、低血清培養法により得られるASCsの細胞性質の解析により、細胞の接着性・凝集性が低いことを確認し、全身性強皮症に対する静脈投与において安全性が高いことを示した。多施設共同臨床試験実施に向けての基盤整備では、厚生労働省医政局とPMDAと協議し、ADRCsによる腹圧性尿失禁の多施設共同臨床試験を医師主導型治験として実施する開発方針を決定した。
結論
世界初の本ADRCs傍尿道注入による腹圧性尿失禁治療は安全で有望な再生治療と考えられる。自己ADRCsを用いること、体外での細胞培養操作を必要としないことから、脂肪吸引・幹細胞抽出・尿道注入までを3時間以内の一連の操作で実施でき、低侵襲、安全な有望な治療法と考えられる。現在、医師主導型治験のためにPMDAと事前相談中であり、次年度はPMDAとの本相談を経て、多施設による医師主導型治験の実施を計画している。
強皮症については、培養ADSCsの全身投与による治療を念頭に研究を進めているが、今回の基礎的検討により、我々が実施する低血清培養法の有効性と安全性を確認することができた。

公開日・更新日

公開日
2015-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201337002Z