文献情報
文献番号
201336005A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫難病に対する先駆的治療薬開発-生物製剤を中心とした早期臨床試験拠点の医・薬集学的整備によるFIMの実施とPOCの確立
課題番号
H23-実用化(臨床)-指定-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
竹内 勤(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 金井 隆典(慶應義塾大学 医学部)
- 河上 裕(慶應義塾大学 医学部)
- 佐谷 秀行(慶應義塾大学 医学部)
- 佐藤 俊朗(慶應義塾大学 医学部)
- 佐藤 裕史(慶應義塾大学 医学部)
- 三宅 真二(慶應義塾大学 医学部)
- 小川 葉子(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(早期・探索的臨床試験研究分野)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
90,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
悪性腫瘍や幾つかの自己免疫性疾患に著効を示してきた生物学的製剤は,他の免疫難病での臨床開発が困難である.我々は消化器内科領域,リウマチ内科領域において既存あるいは新規化合物のPOC/FIM試験を行いこうした状況を改善することを本事業の目的とし,平成25年度には各領域における候補化合物に関して,付加的な非臨床試験の遂行に注力しつつ,臨床試験の準備・開始を目標とした.
研究方法
(1)消化器内科領域:我々は腸管上皮幹細胞培養技術を開発し,ヒト細胞への応用にも成功した.本技術はマウス腸炎モデルに対する培養細胞移植技術の確立と治療効果から,粘膜再生治療の実現が期待された.我々は,本技術の臨床応用を視野に入れ,大動物(ブタ)を用いた内視鏡的な培養腸管上皮細胞の移植技術の開発を推進している.ブタから内視鏡的に腸管上皮粘膜を採取し,培養,レンチウィルスを用いたGFP可視化を行う.さらに線維芽細胞の培養法を確立し,共に内視鏡的に投与する.腸管上皮細胞の臨床グレードでの培養法確立のため,動物由来成分を含むマトリジェルの代替物のスクリーニング,またWnt蛋白の安定化には血清が必要であり,化合物によるWnt活性化を試みる.
(2)リウマチ内科領域:医薬品医療機器総合機構との対面助言を経て、治験プロトコールを固定し、治験届け提出、治験開始のスケジュールを計画した。2010年3月から2012年3月までに、TCZ治療を1剤目生物学的製剤として開始されたRA患者70例を対象とした。十分な説明の後文書同意を得て、TCZ投与前から経時的に1年間、研究目的でも血液採取を行った。 採血検体から血漿を分離し、検出限界1pg/mlの感度で測定可能なSECTOR Imager 2400 (Meso Scale Discovery, MSD)を使用した電気化学発光ELISA法により、サイトカインを含めた種々のバイオマーカー濃度を測定した。臨床情報は匿名化のうえで診療録から収集し、バイオマーカーとの関連を統計解析した。
(3)先端医科学研究領域:マウス慢性GVHDモデルを用いて、既存薬スクリーニングによって取得した薬剤(トラニラスト)の抗炎症・抗線維化効果を検証する非臨床試験を実施した。GVHD動物モデルを用いて、薬物動態(PK)や薬効(PD)や副作用について検討を行った。慢性GVHDマウスモデルでは8週齢B10.D2 (H-2d)マウスの全骨髄細胞を採取し、放射線照射後のBALB/c(H-2d)マウスに移植した。移植後3週後と8週後のレシピエントにおける涙液産生能、涙腺組織における病理組織像、線維化マーカーの発現を検討し、さらに超微形態を含めた組織学的解析にて、コントロールと比較して評価した。トラニラストのin vivoでの抗炎症効果、線維化抑制効果、抗EMT効果および適切な投与量と投与期間、投与方法の検討をした。投与方法は腹腔内投与に加えて、臨床応用のために経口投与の検討を加えた。投与期間は移植後造血細胞が生着する10日目から慢性GVHD発症21日までの12日間の予防的投与と発症21日目から35日目までの治療的投与を検証した。トラニラストによるGVHD標的臓器の炎症・線維化抑制効果の検討では、炎症の指標には免疫細胞浸潤やサイトカイン等の評価、線維化の指標には組織切片における単位面積あたりの線維化部位 (Ruzek, Arthritis Rheumatism, 2004)を用いた。臨床試験プロトコールの作成について内科と連携のため討論を重ねプロトコール作成に着手し作成をすすめた。
(2)リウマチ内科領域:医薬品医療機器総合機構との対面助言を経て、治験プロトコールを固定し、治験届け提出、治験開始のスケジュールを計画した。2010年3月から2012年3月までに、TCZ治療を1剤目生物学的製剤として開始されたRA患者70例を対象とした。十分な説明の後文書同意を得て、TCZ投与前から経時的に1年間、研究目的でも血液採取を行った。 採血検体から血漿を分離し、検出限界1pg/mlの感度で測定可能なSECTOR Imager 2400 (Meso Scale Discovery, MSD)を使用した電気化学発光ELISA法により、サイトカインを含めた種々のバイオマーカー濃度を測定した。臨床情報は匿名化のうえで診療録から収集し、バイオマーカーとの関連を統計解析した。
(3)先端医科学研究領域:マウス慢性GVHDモデルを用いて、既存薬スクリーニングによって取得した薬剤(トラニラスト)の抗炎症・抗線維化効果を検証する非臨床試験を実施した。GVHD動物モデルを用いて、薬物動態(PK)や薬効(PD)や副作用について検討を行った。慢性GVHDマウスモデルでは8週齢B10.D2 (H-2d)マウスの全骨髄細胞を採取し、放射線照射後のBALB/c(H-2d)マウスに移植した。移植後3週後と8週後のレシピエントにおける涙液産生能、涙腺組織における病理組織像、線維化マーカーの発現を検討し、さらに超微形態を含めた組織学的解析にて、コントロールと比較して評価した。トラニラストのin vivoでの抗炎症効果、線維化抑制効果、抗EMT効果および適切な投与量と投与期間、投与方法の検討をした。投与方法は腹腔内投与に加えて、臨床応用のために経口投与の検討を加えた。投与期間は移植後造血細胞が生着する10日目から慢性GVHD発症21日までの12日間の予防的投与と発症21日目から35日目までの治療的投与を検証した。トラニラストによるGVHD標的臓器の炎症・線維化抑制効果の検討では、炎症の指標には免疫細胞浸潤やサイトカイン等の評価、線維化の指標には組織切片における単位面積あたりの線維化部位 (Ruzek, Arthritis Rheumatism, 2004)を用いた。臨床試験プロトコールの作成について内科と連携のため討論を重ねプロトコール作成に着手し作成をすすめた。
結果と考察
各領域で定めた候補化合物について,適宜医薬品医療機器総合機構の薬事戦略相談や対面助言で助言を得,対象疾患における臨床試験の準備・開始と,非臨床試験の完遂を進めてきたが,①regulatory scienceの観点からの十分な吟味と,②規制要件と費用・行程表とを全て満足した効率的運営(円滑迅速な産学連携による企業・他学との協力を含む)の二点が,全ての研究計画に共通した喫緊の要事であり,本研究事業の完遂に向けてこれらの点での注力を続ける.
結論
数年の準備期間を経て,早期・探索的臨床試験(医師主導型治験)の開始に至り,次年度以降も複数の臨床試験が順次進行していく予定である.化合物や対象疾患の特性によって極めて多様な規制要件上,技術上,運営上の課題があり,加えて稀少疾患故の組入れの難しさも大きいが,研究全体の完遂に向けて,一試験の準備・運営から得られた規制科学・臨床研究・運営それぞれの経験と工夫を,他試験にも十二分に活用していくことで,より効率よく確実な試験進捗が期待できるものと考えられる.
公開日・更新日
公開日
2015-03-11
更新日
-