文献情報
文献番号
201335020A
報告書区分
総括
研究課題名
外来因子フリー難病由来iPS細胞のライブラリー構築とそれを使った疾患モデルと薬剤開発
課題番号
H25-実用化(再生)-指定-020
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
江良 択実(熊本大学 発生医学研究所 幹細胞部門 幹細胞誘導分野)
研究分担者(所属機関)
- 粂 昭苑(熊本大学 発生医学研究所 )
- 西中村 隆一(熊本大学 発生医学研究所)
- 中尾 光善(熊本大学 発生医学研究所)
- 入江 徹美(熊本大学大学院生命科学研究部)
- 篠原 康郎(北海道大学大学院先端生命科学研究院)
- 房木 ノエミ(慶應義塾大学医学部眼科学教室)
- 松本 志郎(熊本大学医学部附属病院)
- 有馬 英俊(熊本大学大学院生命科学研究部)
- 杉山 大介(九州大学大学院医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(再生医療関係研究分野)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
38,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
iPS細胞は、疾病の標的細胞誘導が可能であり、増幅し長期保存にも耐えられる。したがって、生体試料が限られる難治性疾患(難病)の創薬研究に優れた効果を発揮すると考えられる。iPS細胞を用いて、創薬研究を幅広く展開するためには、多くの疾患由来iPS細胞を有するライブラリーと疾患標的細胞への安定した再現性の高い分化誘導方法を備えた基盤構築が求められる。
本研究の目的は、
1)外来因子フリー難病由来iPS細胞の作製とそのバンク化
2) 中・内胚葉系子孫細胞への分化誘導方法の確立とそれを用いた疾患解析と薬剤開発
平成25年度には、難病由来iPS細胞作製を進めると伴に、中胚葉・内胚葉系、特に骨・軟骨、血管内皮、肝、膵、腎細胞の分化誘導法の確立、誘導した細胞の機能評価系の確立、これらの細胞が侵される疾患由来iPS細胞を使ったモデル作製と薬剤開発を行う。
本研究の目的は、
1)外来因子フリー難病由来iPS細胞の作製とそのバンク化
2) 中・内胚葉系子孫細胞への分化誘導方法の確立とそれを用いた疾患解析と薬剤開発
平成25年度には、難病由来iPS細胞作製を進めると伴に、中胚葉・内胚葉系、特に骨・軟骨、血管内皮、肝、膵、腎細胞の分化誘導法の確立、誘導した細胞の機能評価系の確立、これらの細胞が侵される疾患由来iPS細胞を使ったモデル作製と薬剤開発を行う。
研究方法
1. 難病由来血液細胞、皮膚線維芽細胞の収集と樹立
倫理委員会の承認済である全国の大学病院等から、線維芽細胞、血液細胞の収集を行う。
2. 外来因子フリー難病由来iPS細胞の樹立と保存
センダイウイルスベクター(SeV)によって患者由来細胞へ初期因子(Oct3/4, Sox2, KLF4, c-Myc)を一過性に発現させ、iPS細胞を作製する。血液細胞からの場合は、ConAや抗CD3抗体にてリンパ球(T細胞)を5日間刺激後、iPS細胞を誘導する。樹立したiPS細胞については、未分化マーカーの発現を調べiPS細胞の確認を行う。さらに、三胚葉系細胞への分化を誘導し多能性を確認する。
3. ヒトiPS細胞から中胚葉系細胞、内胚葉系細胞への分化
成熟度の高い中・内胚葉由来の細胞誘導方法を確立する。PDGFR、KDR、CXCR4を指標に行う。
4. 疾患由来iPS細胞を用いた疾患モデル開発
疾患iPS細胞を用いて、ニーマンピック病C型(NPC)の根底にある病態の分子機構を解明すると伴に、治療薬開発に向けたモデル系を確立する。
倫理委員会の承認済である全国の大学病院等から、線維芽細胞、血液細胞の収集を行う。
2. 外来因子フリー難病由来iPS細胞の樹立と保存
センダイウイルスベクター(SeV)によって患者由来細胞へ初期因子(Oct3/4, Sox2, KLF4, c-Myc)を一過性に発現させ、iPS細胞を作製する。血液細胞からの場合は、ConAや抗CD3抗体にてリンパ球(T細胞)を5日間刺激後、iPS細胞を誘導する。樹立したiPS細胞については、未分化マーカーの発現を調べiPS細胞の確認を行う。さらに、三胚葉系細胞への分化を誘導し多能性を確認する。
3. ヒトiPS細胞から中胚葉系細胞、内胚葉系細胞への分化
成熟度の高い中・内胚葉由来の細胞誘導方法を確立する。PDGFR、KDR、CXCR4を指標に行う。
4. 疾患由来iPS細胞を用いた疾患モデル開発
疾患iPS細胞を用いて、ニーマンピック病C型(NPC)の根底にある病態の分子機構を解明すると伴に、治療薬開発に向けたモデル系を確立する。
結果と考察
疾患由来iPS細胞を作製する線維芽細胞、血液細胞については、平成25年度(研究期間6か月)の間に、線維芽細胞(15症例、7疾患)、血液(5症例、4疾患)合計20例、11疾患、樹立・収集した。またiPS細胞作製については、計8症例、5疾患から80株あまりの細胞株を樹立した。
ヒトiPS細胞からVEGFR2+,PDGFR+の中胚葉様細胞を誘導した。これ-から血管内皮細胞の誘導に成功した。またiPS細胞から直接、血管内皮細胞の誘導にも成功した。
ヒトiPS細胞からCXCR4+の内胚葉系細胞を効率よく誘導する条件を確立し、CXCR4陽性細胞から効率よく肝様細胞(アルブミン産生細胞)を誘導する条件を確立した。
ニーマンピック病C型由来iPS細胞から肝様細胞を誘導、その細胞での遊離型コレステロールの蓄積や機能異常を新たに発見し、この疾患の細胞レベルでのモデルを確立した。さらに2-hydroxyproply --cyclodexrin (HPBCD)にて4日間処理することで、コレステロールの蓄積は劇的に減少した。以上より、iPS細胞が疾患モデルと薬剤の効果を調べる系として活用できることが明らかとなった。
ヒトiPS細胞からVEGFR2+,PDGFR+の中胚葉様細胞を誘導した。これ-から血管内皮細胞の誘導に成功した。またiPS細胞から直接、血管内皮細胞の誘導にも成功した。
ヒトiPS細胞からCXCR4+の内胚葉系細胞を効率よく誘導する条件を確立し、CXCR4陽性細胞から効率よく肝様細胞(アルブミン産生細胞)を誘導する条件を確立した。
ニーマンピック病C型由来iPS細胞から肝様細胞を誘導、その細胞での遊離型コレステロールの蓄積や機能異常を新たに発見し、この疾患の細胞レベルでのモデルを確立した。さらに2-hydroxyproply --cyclodexrin (HPBCD)にて4日間処理することで、コレステロールの蓄積は劇的に減少した。以上より、iPS細胞が疾患モデルと薬剤の効果を調べる系として活用できることが明らかとなった。
結論
1.線維芽細胞の収集と樹立、血液細胞の収集は計画どおりに進んいる。
2.中胚葉系細胞、内胚葉系細胞の誘導について、VEGFR2、PDGFR、CXCR4がマウスES細胞と全く同様に使用できることが確認された。
3.NPC由来iPS細胞から誘導した肝様細胞では、著明な遊離型コレステロールの蓄積が見られ、HPBCD処理にてこのコレステロールの蓄積は劇的に改善した。この結果は、NPC由来のiPS細胞が疾患モデルとなり、薬剤の効果を調べる系として有効であるを示唆している。
2.中胚葉系細胞、内胚葉系細胞の誘導について、VEGFR2、PDGFR、CXCR4がマウスES細胞と全く同様に使用できることが確認された。
3.NPC由来iPS細胞から誘導した肝様細胞では、著明な遊離型コレステロールの蓄積が見られ、HPBCD処理にてこのコレステロールの蓄積は劇的に改善した。この結果は、NPC由来のiPS細胞が疾患モデルとなり、薬剤の効果を調べる系として有効であるを示唆している。
公開日・更新日
公開日
2015-03-11
更新日
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