疾患特異的iPS細胞を用いた創薬スクリーニングシステムの開発

文献情報

文献番号
201335017A
報告書区分
総括
研究課題名
疾患特異的iPS細胞を用いた創薬スクリーニングシステムの開発
課題番号
H25-実用化(再生)-指定-017
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
澤 芳樹(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 吉川 秀樹(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 )
  • 大薗 惠一(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 )
  • 西田 幸二(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 )
  • 堤 康央(国立大学法人大阪大学 大学院医薬学研究科 )
  • 土井 健史(国立大学法人大阪大学 大学院薬学研究科 )
  • 水口 裕之(国立大学法人大阪大学 大学院薬学研究科 )
  • 明石 満(国立大学法人大阪大学 大学院工学研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(再生医療関係研究分野)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
38,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
体細胞からiPS細胞を樹立し、当該細胞に分化させ、3D組織を作成し、薬効・安全性を判定する評価系システムを構築する。本システムによりドラッグリポジショニングや疾患概念変更による薬物適応拡大を行い、創薬候補濃縮化合物ライブラリ作成への展開を行う。
研究方法
1)患者の体細胞からiPS細胞を作成
2)iPS細胞から当該細胞への分化誘導、組織化
3)化合物ライブラリの蓄積
患者由来のiPS細胞を用い、網羅的プロテオーム解析を行い、バイオライブラリ、低分子化合物ライブラリの充実を目指す。
4)ドラッグリポジショニングの対象となりうる薬剤の選別
結果と考察
1. iPS細胞から心筋細胞細胞への分化誘導、心筋組織構築 :
現在iPS細胞から心筋細胞への分化誘導に成功している。また、iPS細胞由来心筋細胞の組織化の前に、新生仔心筋細胞を用いた三次組織体を構築しており、組織体に心筋組織収縮刺激剤を投与すると心拍数が向上することを確認した。次に、iPS細胞由来心筋細胞の組織体の作成に着手し、同組織は、同調した拍動を示す三次元心筋組織であった。またこれまでの三次元構築法を用いて作成した心筋組織は組織体に空隙がるため、心筋細胞の組織化に関して、新しい方法論の確立が必要である。これまでの積層化法は細胞のバイアビリティーが低下してしまうが、フィルター法を使用した場合、細胞のダメージが少なく、組織構築も可能であることが判明した。
最終的には疾患特異的iPS細胞を使用する予定であるため、家族歴のある心不全患者(拡張型心筋症)の選定を行い、同患者から同意書を取得し、iPS細胞の樹立を行っている。他、心筋組織に薬剤を投与した際の反応性を定量化するために、心筋組織の収縮力の定量化、電気伝導性の解析等に着手している。
2.疾患特異的iPS由来肝細胞を用いた薬効評価
本研究において、遺伝子異常を伴う先天性難治疾患の病態解明や疾患モデルの開発、治療薬創出に期待されている遺伝病患者から作製したiPS細胞疾患(特異的iPS細胞)から肝細胞を分化誘導し、有効な疾患モデル細胞を用いた新規薬効評価系の構築を行った。本年度は、これまで有効な治療薬が開発されておらず、救命のために肝移植を要する肝臓疾患である進行性家族性胆汁うっ滞症(progressive familial intrahepatic cholestasis; PFIC)2型患者由来のiPS細胞の樹立を行い、肝細胞への分化誘導を行った。
健常人およびPFIC2型患者から採取した末梢血から、山中4因子を発現するセンダイウイルスベクターを用いてインテグレーションフリーiPS細胞を樹立し、末梢血に山中4因子を遺伝子導入することで、典型的なiPS細胞様コロニーが多数出現した。樹立したiPS細胞株における未分化関連遺伝子の発現量は当研究室で従来培養しているヒトES細胞やヒトiPS細胞と同程度であることを確認し、アルブミン産生能をもつ肝細胞に分化できることが確認できた。
3.整形疾患におけるiPS細胞の分化誘導、新規薬剤の検討
 マウスiPS細胞株(20D17)を用いて、サイトカインと低分子化合物併用による間葉系前駆細胞への誘導効率について基礎検討を行った。
 iPS細胞の有効な分化誘導を行うには、誘導開始時の播種密度が最も重要であることが分かった。他、2%血清含有培地に比べ無血清培地の方が著しく誘導効率が良好であり、サイトカイングラディエントによる培養誘導が適していた。また、間葉系前駆細胞への誘導技術に分化の途中段階で一定期間の低酸素培養が有用であることも分かっている。来期は、上記条件を適正化し、間葉系前駆細胞への分化誘導効率を向上させる予定である。
4.   ライブラリの蓄積 :
低分子化合物ライブラリーの蓄積を行うと同時に、大量の化合物ライブラリーから特定の機能のある低分子化合物を選定する方法を構築中である。

考察
今回の検討で、iPS細胞由来心筋細胞特有の組織化の方法を構築することができた。今後、血管新生解析モデル、心毒性解析モデル等の各種心筋組織を作成する予定である。各、心筋組織モデルにおいて、含有する細胞を変えることが必要であり、十分な検討を要するものと思われる。他疾患に関しても、適切な分化誘導法の検証、薬効を定量化できるような組織構築を行う予定である。
結論
本プロジェクトで作成した各種心筋組織体を用いて新規低分子ライブラリーの心毒性、各種有効性をex vivoで示すことにより、ドラッグリポジショニング、新規薬剤の開発が可能であるものと思われる。

公開日・更新日

公開日
2015-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201335017Z