ヒト幹細胞アーカイブを活用する同種細胞を用いた新規再生医療技術の開発

文献情報

文献番号
201335015A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト幹細胞アーカイブを活用する同種細胞を用いた新規再生医療技術の開発
課題番号
H25-実用化(再生)-指定-015
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
大和 雅之(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岩田 隆紀(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所)
  • 金井 信雄(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所)
  • 渡辺 夏巳(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(再生医療関係研究分野)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
私共は歯周病で失われた歯周組織の再生を成し遂げるために、患者自身の歯を抜去し、自己歯根膜細胞をシート状に加工し、欠損部位に移植してきた。小動物・大動物にてその有効性を確認したので現在臨床研究を実施している。その中で問題となったのは抜去可能な歯を持っていない患者は本治療を享受できないことと、患者間で細胞特性に個人差が大きいことであった。近年の報告では他家間葉系幹細胞を用いても免疫拒絶が起きにくく、また、移植片対宿主病においては他家間葉系幹細胞は免疫調整機能を発揮し、病状を改善することが知られてきた。そこで間葉系幹細胞の一種である歯根膜細胞を用いた他家細胞移植の有効性・安全性を検討するとともに、細胞を凍結保存するプロトコールを見出すことが本研究の目的である。
研究方法
 1)大型動物(ビーグル犬)の歯周欠損モデルを用いて、自己移植と他家移植の有効性および安全性を比較検討した。具体的には、8頭の動物を用いて4頭は自己歯根膜細胞を、残りの4頭は他家歯根膜細胞を移植し、8週後に屠殺し、組織学的な評価を実施した。また、経時的に末梢血を採取し、免疫拒絶と相関のある炎症性タンパクをELISAにて定量した。
 2)ヒト歯根膜細胞の凍結保存による性質の変化を調査する目的で、2種類の細胞凍結保存液(セルバンカー1(血清入り)もしくはセルバンカー3(無血清))にて細胞を凍結保存し、保存後1ヶ月後、12ヶ月後に細胞を起こして品質管理試験を実施した。具体的には、継代を2回した細胞を凍結し、起こした後に継代を6回実施した。各継代時に、生細胞数・コロニー形成能・骨芽細胞分化能・脂肪細胞分化能などの基本的な細胞特性試験を実施するとともに、温度応答性培養皿を用いて細胞シートを作製し、出荷試験に準じた検査を実施した。さらには凍結した細胞としていない細胞からRNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いて遺伝子発現の差を確認した。
 動物を用いた実験並びにヒト細胞を用いた実験に関してはそれぞれ東京女子医科大学の動物実験倫理委員会、臨床研究倫理委員会の承認を得た後に実施した。
結果と考察
結果
 1)大型動物を用いた歯根膜細胞シートの移植実験においては、自己・他家共に歯周組織の再生が確認され、他家移植においては免疫拒絶を示すような肉眼的所見は観察されなかった。また、末梢血中のCRP,CD30、IFN-γ、IL-10をELISAで測定したところ、両群において差は見られなかった。
2)ヒト歯根膜由来間葉系幹細胞の凍結融解後の細胞特性試験においては、1ヶ月、12ヶ月凍結共に継代7回までは良好に増殖したが、継代8代では細胞増殖が低下する傾向にあった。細胞生存率・ALP活性・分化能などには凍結期間や継代数による変化は観察されなかった。細胞凍結液による変化は観察されなかった。

考察
 1)大型動物を用いた他家間葉系幹細胞移植による歯周組織の再生は自家移植と同等であり、著明な副作用は観察されなかったことから、ヒト臨床への移行が可能であることが示唆された。
2)他家移植ににおいて凍結融解した細胞を用いることが必須となる。そこで本研究では2回継代した細胞を短期(1ヶ月)と長期(12ヶ月)の凍結保存を実施し、融解後の細胞特性を調査したところ、融解後5回の継代間に細胞特性の変化は観察されなかった。継代を重ねると間葉系幹細胞はその多分化能が減弱することが報告されているが、5回程度以内の継代であれば移植に供ずることが可能であることが示唆された。
結論
 大動物実験において他家歯根膜由来間葉系幹細胞は歯周組織の再生を促進し、有害な事象が観察されなかったことから、臨床応用可能な細胞ソースであることが示唆された。ヒト歯根膜由来間葉系幹細胞は12ヶ月程度の凍結期間の後に融解しても、総継代数7回程度までは細胞特性を損なわず増殖可能であることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-05-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
201335015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
19,500,000円
(2)補助金確定額
18,412,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,088,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 12,554,951円
人件費・謝金 488,711円
旅費 0円
その他 868,611円
間接経費 4,500,000円
合計 18,412,273円

備考

備考
人件費において技師の雇用が遅れた為

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-