臨床研究に活用するiPS細胞の安定性・安全性を保持した保存体制の確立

文献情報

文献番号
201335012A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床研究に活用するiPS細胞の安定性・安全性を保持した保存体制の確立
課題番号
H25-実用化(再生)-指定-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
江良 択実(熊本大学 発生医学研究所 幹細胞部門 幹細胞誘導分野)
研究分担者(所属機関)
  • 粂 昭苑(熊本大学 発生医学研究所 )
  • 斉藤 典子(熊本大学 発生医学研究所 )
  • 白木 伸明(熊本大学 発生医学研究所 )
  • 松本 志郎(熊本大学医学部附属病院 総合周産母子医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(再生医療関係研究分野)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
iPS細胞は、すべての体細胞になれる優れた分化能力を持っているが、誘導した細胞の持つ機能や治療効果については未だ不明な部分も多く、加えて、未分化細胞の混入による腫瘍形成の問題も存在する。臨床現場でこれらの問題が起こった時や予期せぬトラブルが生じた場合、用いた細胞と同じロットの細胞を使って、様々な方向からトラブルの原因を検証できる体制の構築は必須である。本研究では、1)臨床に実際用いるiPS細胞を収集・保存し、緊急時にすみやかに細胞を解析できるシステムの構築2)iPS細胞を安定にかつ安全に維持・保存する方法の開発、が研究の目的である。
平成25年度は、他機関より、樹立方法、保存期間、継代数の異なるヒトiPS細胞を入手し保存管理を行うと同時にiPS細胞に、継代方法、細胞源や樹立方法が与える影響について、コロニー形成能を中心に解析する。
研究方法
1. 臨床研究に用いるiPS細胞の収集と保存
国内の研究機関から樹立方法、保存期間、継代数が異なるiPS細胞株を入手し保存管理を行う。
2. iPS細胞の機能・発癌に影響を与える因子の検討
継代時の細胞状態、特にRho-associated coiled-coil forming kinase inhibitor (ROCK inhibitor) がどのようにiPS細胞の増殖能力やコロニー形成能に影響を与えるかを調べる。
3. 作製方法の違う健常者由来iPS細胞間での分子生物学的、細胞生物学的解析
このようにして樹立したiPS細胞を異なる方法にて樹立したiPS細胞(レトロウイルスベクターやプラスミド等)と比較し、前述の方法に従ってコロニー形成に与える影響について解析する。
結果と考察
1. 臨床研究に用いるiPS細胞の収集と保存
理化学研究所バイオリソースセンターへ保存してあるヒトiPS細胞、201B7(レトロウイルスベクターにて作成), 409B2, 454E2(両細胞ともプラスミドにて作成)を入手した。
2. ROCK inhibitorのiPS細胞コロニー形成に与える影響
継代直後のiPS細胞のALP陽性のコロニー形成に与えるROCK inhibitor の効果を検討するため、ROCK inhibitor 処理条件をいくつかに分け、条件を検討し、適正条件を決定した。この条件は、レトロウイルスにて樹立されたiPS細胞株、201B7、私たちが独自にセンダイウイルスベクターを用いて樹立したiPS 細胞株の両方に適応させることが可能であった。したがって、作成方法にかかわらず、iPS細胞すべてに通じることが示唆された。
しかしながら、センダイウイルスベクターにて私たちが作成したiPS 細胞株は、レトロウイルスベクターを用いて作成した201B7と比較して、コロニー形成能力の違いが見られた。これらのiPS細胞株は、由来は同じであるが、作成方法が異なる。そこで、iPS 細胞の由来や誘導方法の違いにより、コロニー形成率に違いがあるかについて検討を行った。その結果、iPS コロニー形成率はiPS 細胞の誘導方法や由来により、異なる割合を示すことが分かった。
結論
1. 平成25年度は理研バイオリソースセンターからの細胞を提供していただき、その安全性への実験を行うことができた。今後、他の研究施設からの提供も促進して行う予定である。
2. ROCK inhibitor については、今後そのメカニズムを解析する。
3. 試験管内でのコロニー形成能力はがん化能力を測定する指標として使われることもある。したがってコロニー形成能力が高いiPS細胞株は安全性について注意深くその発ガン性を検討する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201335012Z