文献情報
文献番号
201335007A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト成体間葉系幹細胞の再生医療実現のためのゲノム科学に基づく品質管理と体内動態研究
課題番号
H25-実用化(再生)-一般-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
落谷 孝広(独立行政法人国立がん研究センター研究所 分子細胞治療研究分野)
研究分担者(所属機関)
- 石川 俊平(東京医科歯科大学 難治疾患研究所、ゲノム病理学分野(疾患ゲノミクス分野))
- 石井 強(ロート製薬株式会社、再生医療研究企画部 幹細胞研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(再生医療関係研究分野)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
46,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究はヒト脂肪由来間葉系幹細胞(hAD-MSC)の肝硬変を標的とした医薬品開発を目標とし、細胞の均質化及び細胞移植後の体内動態、生着状況、分化状況の定量的解析方法を開発し、安全かつ効果的な再生医療の実現を目的とする。
初年度は分泌型microRNA解析法の構築をはじめ、動物モデル(肝硬変)を用いて移植細胞の動態を高解像度イメージング技術により解析、2、3年度目はよデジタルPCRを用いたヒト由来ゲノムの高感度絶対定量を行い生着状況をモニターすると共に、並列型シーケンサーによる遺伝子発現解析から生着細胞の分化状況を定量解析する。
初年度は分泌型microRNA解析法の構築をはじめ、動物モデル(肝硬変)を用いて移植細胞の動態を高解像度イメージング技術により解析、2、3年度目はよデジタルPCRを用いたヒト由来ゲノムの高感度絶対定量を行い生着状況をモニターすると共に、並列型シーケンサーによる遺伝子発現解析から生着細胞の分化状況を定量解析する。
研究方法
①ストレス応答性 miRNAの探索及び同定については、Lonza社から購入したhAD-MSCを培養フラスコで4継代培養した細胞(P4細胞)および11継代培養した細胞(P11細胞)を作製、それぞれの培養上清からエクソソームを精製した。 精製したエクソソームをAgilent社Human miRNA microarrayによりP4細胞及びP11細胞から分泌されたmiRNA発現プロファイルを比較した。
②hAD-MSCsの肝障害モデルマウス及び肝線維化モデルマウスによる有効性評価については、
1)肝障害モデル:BALB/cマウスの腹腔内に四塩化炭素を投与し肝障害を誘発した。四塩化炭素投与1日後に1x106cells/bodyの用量でhAD-MSCを尾静脈から投与した。細胞投与1日後にそれぞれのマウスから採血を行い、各種生化学検査を行った.2)肝線維化モデル: BALB/cマウスの腹腔内に四塩化炭素を週2回、8週間投与し肝線維化を誘発させた。8回目の四塩化炭素投与後、1x106cells/bodyの用量でhAD-MSCを尾静脈から投与した。細胞投与4週後、マウスから採血及び肝臓を摘出し、各種生化学検査及びMasson trichrome染色により線維化部分を染色し、画像解析により線維化部分の面積を算出した。③蛍光標識hAD-MSCsによる体内動態解析については、 hAD-MSCにDiRを添加しDiRラベルhAD-MSCsを作製した。DiR-MSCsをマウス肝線維化モデルに1 x106cells/bodyの用量で尾静脈から投与、投与2時間、1日、2日、3日、1週間、2週間、3週間、4週間における蛍光シグナルの継時変化をIVISにより解析した。
②hAD-MSCsの肝障害モデルマウス及び肝線維化モデルマウスによる有効性評価については、
1)肝障害モデル:BALB/cマウスの腹腔内に四塩化炭素を投与し肝障害を誘発した。四塩化炭素投与1日後に1x106cells/bodyの用量でhAD-MSCを尾静脈から投与した。細胞投与1日後にそれぞれのマウスから採血を行い、各種生化学検査を行った.2)肝線維化モデル: BALB/cマウスの腹腔内に四塩化炭素を週2回、8週間投与し肝線維化を誘発させた。8回目の四塩化炭素投与後、1x106cells/bodyの用量でhAD-MSCを尾静脈から投与した。細胞投与4週後、マウスから採血及び肝臓を摘出し、各種生化学検査及びMasson trichrome染色により線維化部分を染色し、画像解析により線維化部分の面積を算出した。③蛍光標識hAD-MSCsによる体内動態解析については、 hAD-MSCにDiRを添加しDiRラベルhAD-MSCsを作製した。DiR-MSCsをマウス肝線維化モデルに1 x106cells/bodyの用量で尾静脈から投与、投与2時間、1日、2日、3日、1週間、2週間、3週間、4週間における蛍光シグナルの継時変化をIVISにより解析した。
結果と考察
平成25年度に計画していた研究内容は、①hAD-MSCの均質性評価系の構築の基盤研究、②hAD-MSCの肝硬変モデルマウスにおける有効性評価及びIVISによる体内動態の解析である。
均質性評価系構築の基盤研究の進捗としては、ストレス負荷で変化する分泌型miRNAの同定を目的とし、継代ストレス(P4,P6,P11)による分泌型miRNAの発現プロファイル解析を進めている。現在までに、培養上清中の分泌型miRNA量が継代ストレス負荷により増加するという結果が得られており、継代ストレスが分泌型miRNA発現に影響を及ぼすことが示唆された。現在は個々の分泌型miRNA発現量についてMicro array解析を実施中であり、平成25年度中には20~30種類のターゲットmiRNAの同定を完了した。またデジタルPCRによる高感度miRNA解析についても既に培養上清を用いた条件検討に着手しており、分泌型miRNAによる品質管理の実践については計画より早く実用化できると考えている。
肝硬変モデルマウスにおける有効性評価及びIVISによる体内動態解析については、四塩化炭素誘発肝硬変モデルに対してhAD-MSCを既に投与しており、AST及びALT等の改善を図る事に成功した。一方で本試験モデルは最短でも8週間を要するため、別途四塩化炭素誘発急性肝障害モデルを用いた検討も並行して進めている。現在までに急性肝障害モデルを用いたhAD-MSCの有効性の確認、さらにhAD-MSCに最適な蛍光色素及び標識条件の確立は終了し、疾患モデルにおいて、hAD-MSCの肝臓への集積を示すIVISの結果も得られている。
均質性評価系構築の基盤研究の進捗としては、ストレス負荷で変化する分泌型miRNAの同定を目的とし、継代ストレス(P4,P6,P11)による分泌型miRNAの発現プロファイル解析を進めている。現在までに、培養上清中の分泌型miRNA量が継代ストレス負荷により増加するという結果が得られており、継代ストレスが分泌型miRNA発現に影響を及ぼすことが示唆された。現在は個々の分泌型miRNA発現量についてMicro array解析を実施中であり、平成25年度中には20~30種類のターゲットmiRNAの同定を完了した。またデジタルPCRによる高感度miRNA解析についても既に培養上清を用いた条件検討に着手しており、分泌型miRNAによる品質管理の実践については計画より早く実用化できると考えている。
肝硬変モデルマウスにおける有効性評価及びIVISによる体内動態解析については、四塩化炭素誘発肝硬変モデルに対してhAD-MSCを既に投与しており、AST及びALT等の改善を図る事に成功した。一方で本試験モデルは最短でも8週間を要するため、別途四塩化炭素誘発急性肝障害モデルを用いた検討も並行して進めている。現在までに急性肝障害モデルを用いたhAD-MSCの有効性の確認、さらにhAD-MSCに最適な蛍光色素及び標識条件の確立は終了し、疾患モデルにおいて、hAD-MSCの肝臓への集積を示すIVISの結果も得られている。
結論
バイオマーカー候補として約40種類のmiRNAを同定することができた。今後qRT-PCRなどで検証することで候補となるmiRNAを絞り込み、デジタルPCRによる高感度発現解析を進める。肝障害モデルマウスにhAD-MSCsを投与することにより、その有効性を確認。さらに、蛍光標識した細胞のIVIS解析を行うことで、移植後細胞の体内動態、特にターゲット部位への細胞の集積が確認できた。今後は、デジタルPCRによるヒト由来細胞の絶対定量評価系とIVIS解析の結果を比較検討を行い、新しい体内動態解析手法の開発を進める予定である。
公開日・更新日
公開日
2015-03-11
更新日
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