再生医療等の安全性確保等のための基準策定に関する研究

文献情報

文献番号
201335002A
報告書区分
総括
研究課題名
再生医療等の安全性確保等のための基準策定に関する研究
課題番号
H25-実用化(再生)-指定-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
澤 芳樹(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 楠岡 英雄(国立病院機構大阪医療センター)
  • 紀ノ岡 正博(国立大学法人大阪大学 大学院工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(再生医療関係研究分野)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
再生医療等において、薬事法に基づく再生医療製品は2品目ある。一方、「ヒト幹細胞を用いた臨床研究に関する指針」に則るヒト幹細胞臨床研究は91件(2014年3月11日現在)あり、厳正な審査を受けた後に、初めてヒトに実施されるが法的根拠はなく研究者の遵守精神に任されている面がある。また我が国では、有用であると考える技術を医師の責任で行う自由診療という仕組みがある。再生医療等の分野では、リンパ球活性化療法や難病に対する細胞療法などが行われているが、現状を把握するシステムはない。この状況で、幹細胞投与後の死亡事例(2010年京都)や日本に海外から幹細胞を持ち込んで多数投与する事例などが生じている。このため日本再生医療学会は、2011年1月に声明文を発出し、学会会員には未認可の幹細胞治療に関与しないことを、患者及びその家族には、「未承認の再生医療等」に対する冷静な判断を、行政に対しては、新たな医療提供体制の構築により患者の安全性を早急に確保することを、それぞれ求めている。
厚生労働省では、2012年9月から、「再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会」を7回開催し、それら検討の成果は、2013年4月18日に「再生医療の安全性確保と推進のための枠組み構築について」として報告され、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律案」(平成25年第183回国会提出)に活用された。この法案は、再生医療等の安全性の確保等を図るため、再生医療等を提供する際の計画の提出及び特定細胞加工物の製造の許可等の制度の実施その他の措置について定めていて、両院での審議を経て、再生医療等の安全性確保等に関する法律(平成25年法律第85号)として平成25年11月27日に公布された。今後、再生医療等の提供、認定再生医療等委員会、特定細胞加工物の製造、に係る取り決めを政省令として公布施行していく必要があり、「再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会」での検討に資するよう当該研究班にて検討するものである。
研究方法
本研究は、研究分担者等が座長を務めた「再生医療等提供基準WG」「認定再生医療等委員会WG」「特定細胞加工物製造WG」にて、議論がなされた。また、これら3WGにおいて、複数のWGにわたる議題を集めて、研究班合同会議を開催した。一方、自由診療の実態については、本検討をする上で、欠かせない情報であるため、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社に調査を委託し、web及びインタビュー調査を実行した。
結果と考察
再生医療等の安全性の確保は、厚生労働行政として実現しなければならない課題である。「再生医療を国民が迅速かつ安全に受けられるようにするための施策の総合的な推進に関する法律」(平成25年法律第13号)で「再生医療を国民が迅速かつ安全に受けられるようにする」と謳っているとおり、再生医療を国策として推進していくためには、安全性の確保の仕組みが必要である。
再生医療等の提供に関する基準の検討では、対象となる再生医療等技術の範囲を整理し、対象となる再生医療等技術のリスクの分類、再生医療等提供基準などを検討し、この法律の及ぶ範囲を明確に説明すると共に、再生医療の実施に必要な規則を設けるところを目指した。
認定再生医療等委員会に関する基準の検討では、プロトコールを審査する委員会の要件及び規則を定めることにより、質の高い倫理審査が実施できるところを目指した。
特定細胞加工物の製造に関する基準の検討では、微生物汚染を起こさずに特定細胞加工物の製造を行うに足る構造設備、運用規則を定めることにより、企業等が参入して再生医療がより普及していく道筋を描くところを目指した。
研究班合同会議での検討では、再生医療等技術の範囲、認定再生医療等委員会の質の担保や、特定細胞加工物の製造を委託する際の医療機関よりの指示事項などを改めて議論し、各WGの垣根を越えた合意を得るところを目指した。
自由診療については、再生医療等を実施している国内医療機関数を概算し、代表施設にインタビューを実施して、実態の把握を目指した。
これらの研究をもとに、「再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会」での議論を経て政省令に係る取り決めを形成することにより、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」の目的とする安全性の確保が果たされることとなる。
結論
安全性が確保された再生医療等は、国民が安心して享受することができ、今後の再生医療等の発展を促進し、持って健康寿命の延長に資することとなる。当該研究班は真に時期を得たものであった。今後、未曾有の高齢化社会を迎える日本にとって再生医療等は欠かすことができない治療となると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-03-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201335002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」の対象とする再生医療等技術の範囲やリスク分類、再生医療等提供基準について原案を作成し、再生医療等に対する枠組みの方向性を示した。また認定再生医療等委員会の認定基準・運営基準や申請書の記載事項の原案について作成し、再生医療等に対する倫理審査の在り方の方向性を示した。
臨床的観点からの成果
再生医療等において必要となる、細胞培養加工施設の構造設備、特定細胞加工物の製造管理、品質管理に係る規則並びに定期報告事項について原案を作成した。細胞培養加工施設に関する基準が定まると、再生医療等への新規参入が加速し、再生医療等の一層の普及が期待される。また、再生医療等を実施している医療機関数を調査しており、再生医療等の件数を予測できるとともに、将来「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」のもたらしたインパクトを普及度の面からも評価することができる。
ガイドライン等の開発
第9回(平成25年12月20日開催)及び第10回(平成26年1月29日開催)「再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会」にて、本研究班での議論をもとに、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」の政省令案について討議が行われた。
その他行政的観点からの成果
本研究班における検討などにより、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が予定通り施行されると、再生医療等への枠組みが整備されたことにより、日本の再生医療等への政策が先進的であると世界的に評価される可能性がある。
その他のインパクト
本研究班における検討などにより、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が予定通り施行されると、日本における再生医療等以外の研究等に対する枠組みの在り方に影響を及ぼす可能性がある。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
2014年3月第13回日本再生医療学会シンポジウム「産業化に向けた制度設計と展 望」にて3演題発表した。演者:森尾友宏、紀ノ岡正博、畠賢一郎
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に係る政省令の作成について、 「再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会」での検討に資する議論を実 施した
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
2018-06-05

収支報告書

文献番号
201335002Z