慢性肝炎・肝硬変・肝癌の病態解明と各病態および都市形態別で求められる医療を考慮したクリティカルパスモデルの開発のための研究

文献情報

文献番号
201333010A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性肝炎・肝硬変・肝癌の病態解明と各病態および都市形態別で求められる医療を考慮したクリティカルパスモデルの開発のための研究
課題番号
H23-実用化-肝炎-指定-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
泉 並木(武蔵野赤十字病院  消化器科)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷部 千登美(旭川赤十字病院 消化器内科)
  • 中田 良(日赤医療センター 消化器内科)
  • 和田 秀一(長野赤十字病院 内科)
  • 折戸 悦朗(名古屋第二赤十字病院 消化器内科)
  • 大崎 往夫(大阪赤十字病院 消化器内科)
  • 上甲 康二(松山赤十字病院 肝臓胆のう膵臓内科)
  • 玉田 尚(高槻赤十字病院 消化器科)
  • 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 朝比奈 靖浩(東京医科歯科大学 分子肝炎制御学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(肝炎関係研究分野)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
42,845,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
初年度に各都市形態別に医療連携の問題点の調査研究を行った。必要とされる診療体制は各病態や治療及び都市形態毎に異なるため、それぞれに則したクリティカルパスと診療体制を整備する必要がある。初年度の調査研究では、医療資源が乏しい都市形態ⅠやⅡでは、専門医療機関の数が少なく距離が遠いため、専門医への紹介率が低く肝疾患の医療連携パスの作成がすすんでおらず、肝疾患に関する勉強会の開催が行われていないなどの問題点があきらかとなった。そこで、都市形態に合わせた連携パスを作成し、これを導入前後でかかりつけ医にアンケートを送付して、それぞれについて解析した。特に連携パス導入による専門医への紹介や、自院で行う治療内容の変化、連携パス導入によるかかりつけ医の役割意識の変化について検討した。
研究方法
都市形態の区分は医療資源について、4つに分け集計した。すなわち、①医療資源の極端に少ない地域形態、②1つの強力な地域中核病院をもつ地域形態、③多くの県庁所在地などの中核都市で認められる②と次に述べる④との中間的都市形態、④大都市ならびにその周辺地域に見られる豊富な医療資源があり自由なアクセスが可能な地域形態である。肝疾患の医療連携パス導入による前後の評価のため、各都市形態別に代表となる医療機関を選定して、肝疾患医療連携パスを導入し、連携を組むかかりつけ医の意識が変化したか否かについて前後での評価を行うことを目的とした。都市形態の違いによる医療連携の最も重要な差異は専門医が少ないこととアクセスが悪いことであった。いずれの都市形態でも専門医で行う診内容には相違がないため、都市形態①と②で専門医への受診間隔と、画像診断を施行する間隔が異なる連携パスを作成した。
結果と考察
肝疾患連携パス導入前後の変化では、かかりつけ医が血小板数の測定や腹部超音波を行う率が実際に連携パスを導入した施設で増加していた。肝疾患連携パス導入前後の比較では、都市形態①において、陽性者全員を専門医に紹介する率が上司していた。全体で解析すると、前後での比較を行ったが、HBs抗原陽性者の70%以上を専門医に紹介する比率が上昇していた。専門医へ紹介するめやすは、HBe抗原・HBe抗体やHBVDNA値、AST・ALT値を目安にして専門医へ紹介するという回答が増加し、肝疾患に対する適切な検査を実施するための啓発につながっていると考えられた。肝疾患連携パスを使用したかかりつけ医では、強力ミノファーゲンやウルソデオキシコール酸内服などの肝庇護薬による治療を行う比率が低下し、インターフェロン治療を行ったり専門医との連携のもとに治療を行う医師の比率が上昇していた。HCV抗体陽性者に対して、かかりつけ医が次に行う検査について調査したところ、連携パスを用いた施設ではHCVRNAを測定する比率が上昇し、血小板を測定する率が増加し、腹部エコーを実施する率が向上していた。HCV抗体陽性者を専門医に紹介する率について、肝疾患連携パス導入前後で調査した。都市形態別では、とくに都市形態①でHCV抗体陽性者を全例専門医に紹介する率が上昇していた。都市形態③や④でも連携パスの導入によって全例を専門医に紹介する率が上昇していた。全体で解析すると、肝疾患連携パスを導入したかかりつけ医ではHCV抗体陽性者の70%以上を専門医に紹介する率が増加していた。連携パスの導入前後でかかりつけ医が自院で行う治療内容を調査したところ、強力ミノファーゲンやウルソデオキシコール酸内服などの肝庇護薬を行う率が低下していた。連携パスを使用したかかりつけ医に調査したところ、専門医へ紹介しやすくなったという回答が多く、肝機能をより意識したり、積極的に専門医へ紹介するという回答が多くなっていた。
結論
肝疾患連携パスが進んでいない地域を選択して、都市形態別に連携パス導入前後のアンケート調査を行った。肝疾患連携パスの導入によってB型肝炎やC型肝炎に対して専門医へ紹介する機会が増加し、適切な医療が推進できることが判明した。かかりつけ医が専門医へ紹介しやすくなるなどの大きな利点があり、自院で肝庇護薬で治療する率が低下することが判明した。肝疾患の連携パスを積極的に導入するよいに働きかけることが重要である。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201333010B
報告書区分
総合
研究課題名
慢性肝炎・肝硬変・肝癌の病態解明と各病態および都市形態別で求められる医療を考慮したクリティカルパスモデルの開発のための研究
課題番号
H23-実用化-肝炎-指定-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
泉 並木(武蔵野赤十字病院  消化器科)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷部 千登美(旭川赤十字病院 消化器内科)
  • 中田 良(日赤医療センター 消化器内科)
  • 和田 秀一(長野赤十字病院 内科)
  • 折戸 悦朗(名古屋第二赤十字病院 消化器内科)
  • 大崎 往夫(大阪赤十字病院 消化器内科)
  • 上甲 康二(松山赤十字病院 肝臓胆のう膵臓内科)
  • 玉田 尚(高槻赤十字病院 消化器内科)
  • 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 朝比奈 靖浩(東京医科歯科大学 分子肝炎制御学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(肝炎関係研究分野)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国の肝炎対策の推進に関する基本的な指針には「地域における診療連携体制を強化するため、地域における連携の推進に資する研究を行う」ことが明記されており、診療連携体制の充実が求められている。しかし、必要とされる診療体制は各病態や治療及び都市形態毎に異なるため、それぞれに則したクリティカルパスと診療体制を整備する必要がある。都市形態に合わせた連携パスを作成し、これを導入前後でかかりつけ医にアンケートを送付して、それぞれについて解析した。特に連携パス導入による専門医への紹介や、自院で行う治療内容の変化、連携パス導入によるかかりつけ医の役割意識の変化について検討した。
研究方法
初年度は全国の日本赤十字社病院に班員ならびに班長協力者を依頼し、都市形態別に区分してウイルス肝炎検診を行っている医療機関(医師会員)に対して、ウイルス肝炎検診や肝疾患の診療におけるアンケート調査を実施した。3,344件を発送し、2,058件が回収され、回収率は61.5%であった。これを、各都市形態毎に区分けして集計し、それぞれの解決すべき点を解析した。都市形態の区分は医療資源について、4つに分け集計した。すなわち、①医療資源の極端に少ない地域形態、②1つの強力な地域中核病院をもつ地域形態、③多くの県庁所在地などの中核都市で認められる②と次に述べる④との中間的都市形態、④大都市ならびにその周辺地域に見られる豊富な医療資源があり自由なアクセスが可能な地域形態である。とくに肝疾患の医療連携パス導入による前後の評価のため、各都市形態別に代表となる医療機関を選定して、肝疾患医療連携パスを導入し、連携を組むかかりつけ医の意識が変化したか否かについて前後での評価を行うことを目的とした
結果と考察
HBs抗原が陽性とわかったときの対応について調査した。自院でB型肝炎について精査をすると回答した割合が、都市形態①では64%と高かったのに対し、都市形態②~④では、38%~42%であった。HBs抗原陽性と判明したら専門医を紹介するとした施設は、都市形態①で19%と低かったのに対し、②~④では51%~55%であった。C型肝炎も同様の傾向であった。都市形態の違いによる医療連携の最も重要な差異は専門医が少ないこととアクセスが悪いことであった。そこで、これを配慮した肝疾患連携パスを作成した。HBs抗原陽性者を専門医へ紹介する率を解析した。肝疾患連携パス導入前後の比較では、都市形態①において、陽性者全員を専門医に紹介する率が上司していた。HCV抗体陽性者に対して、かかりつけ医が次に行う検査について調査したところ、連携パスを用いた施設ではHCVRNAを測定する比率が上昇し、血小板を測定する率が増加し、腹部エコーを実施する率が向上していた。連携パスを使用したかかりつけ医に調査したところ、専門医へ紹介しやすくなったという回答が多く、肝機能をより意識したり、積極的に専門医へ紹介するという回答が多くなっていた。
結論
都市形態別に肝疾患診療の実態をアンケート調査した。(1)都市形態①では基幹病院まで車で30分以上かかるため、HBs抗原もしくはHCV抗体陽性者を専門医に紹介する率が低かった。(2)B型・C型肝炎いずれも腹部エコーが施行されていないと考えられるのが2割程度存在する。(3)C型肝炎では、①以外のどの都市形態でも専門医を紹介するのが40%台であり、ALT値が正常値でも紹介するという施設はどの都市形態でも30%以下にとどまった。(4)どの都市形態においても肝疾患の医療連携パスが作成されている率が半数以下であり、診療所でインターフェロンを行う率が低かった。また、肝疾患に関する勉強会が開催されていない地域がみられ、都市形態に応じた開催母体によって勉強会が開催されるシステムを構築する必要がある。(5)肝疾患連携パスが進んでいない地域を選択して、都市形態別に連携パス導入前後のアンケート調査を行った。都市形態①と②で専門医への受診間隔と、画像診断を施行する間隔が異なる連携パスを作成した。導入によってB型肝炎やC型肝炎に対して専門医へ紹介する機会が増加し、適切な医療が推進できることが判明した。(6)連携パス導入により、かかりつけ医が専門医へ紹介しやすくなるなどの大きな利点があり、自院で肝庇護薬で治療する率が低下することが判明した。肝疾患の連携パスを積極的に導入するよいに働きかけることが重要である。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-05-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201333010C

収支報告書

文献番号
201333010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
50,000,000円
(2)補助金確定額
50,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,084,553円
人件費・謝金 0円
旅費 3,070,973円
その他 36,689,474円
間接経費 7,155,000円
合計 50,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
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