文献情報
文献番号
201333006A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性ウイルス性肝疾患の非侵襲的線維化評価法の開発と臨床的有用性の確立
課題番号
H23-実用化-肝炎-一般-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 正俊(近畿大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 矢田 典久(近畿大学医学部)
- 椎名 毅(京都大学)
- 藤本 研治(国立南和歌山医療センター)
- 大崎 往夫(大阪赤十字病院)
- 住野 泰清(東邦大学医療センター大森病院)
- 野尻 俊輔(名古屋市立大学)
- 玉井 秀幸(和歌山県立医科大学)
- 孝田 雅彦(鳥取大学医学部)
- 佐藤 秀一(島根大学医学部附属病院)
- 三好 久昭(香川大学医学部)
- 日浅 陽一(愛媛大学)
- 坂元 亨宇(慶應義塾大学医学部)
- 鹿毛 政義(久留米大学病院)
- 中島 収(久留米大学病院)
- 吉村 健一(神戸大学医学部)
- 村上 卓道(近畿大学医学部)
- 今中 和穗(大阪府立成人病センター)
- 國土 典宏(東京大学医学部)
- 河田 則文(大阪市立大学)
- 竹山 宜典(近畿大学医学部)
- 宮瀬 志保(くまもと森都総合病院)
- 日高 央(北里大学東病院)
- 小川 力(高松赤十字病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(肝炎関係研究分野)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
38,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
慢性ウイルス性肝疾患において、肝線維化が強くなるほど発癌・胃食道静脈瘤などの門脈圧亢進症状・肝不全のリスクなどが上昇する。肝線維化の評価は、肝生検で行うことが多いがサンプリング・エラーの問題は無視できない。また出血のリスクもあり患者にとっては負担も大きく繰り返し行うことには不向きであり、治療経過の評価に利用できない。これらの理由から肝生検に代わる非侵襲的肝線維化診断法を確立することが望ましい。
組織の歪み情報を画像化する超音波技術elastographyを新たに開発すると共に、全体研究として慢性ウイルス性肝疾患における肝線維化定量的評価と診断支援の実現を実現することを目的とした。
組織の歪み情報を画像化する超音波技術elastographyを新たに開発すると共に、全体研究として慢性ウイルス性肝疾患における肝線維化定量的評価と診断支援の実現を実現することを目的とした。
研究方法
肝生検や肝切除術を受けるB型あるいはC型慢性肝炎および肝硬変患者を対象とし、肝生検前後あるいは肝切除術前2週間以内に血液検査、各種Real-time Tissue Elastography (RTE)をはじめとしたエラストグラフィを施行。肝組織は、3名の肝臓専門病理医によりブラインド・リーディングを行った。RTE画像も動画をブラインド・リーディングし、特徴量解析を行った。これらの結果を用いてRTE画像の評価方法の検討および肝線維化定量的評価を行った。
結果と考察
687例のうち良好なRTE画像、良好な組織サンプルが得られた症例665例の解析を行った。
線維化ステージとRTE画像特徴量との間に一定の関係が存在することが判明した。つまり、びまん性肝疾患において、線維化の進行による結節の分布を反映して組織弾性像のテクスチャが変化した。
特徴量を独立変数、肝線維化ステージを従属変数として重回帰分析を行い、肝線維化予測式Liver Fibrosis Index (LFI) (= -0.00897×MEAN - 0.00502×SD + 0.0232×%AREA + 0.0253×COMP + 0.775×SKEW - 0.281×KURT + 2.08×ENT + 3.04×IDM + 40.0×ASM - 5.54)を算出した。LFIによる肝線維化診断能のAUCはF1以上 0.846、F2以上 0.833、F3以上 0.887、F4 0.863(non-validation date)と非常に高値であり、また、各ステージ間で有意差を認めた。
さらにetiologyごとにLFIの評価を行なったところ、HBVではHCVに比べてLFIが低値であった。これは、etiologyによる肝線維化形態の違い、つまりHCVでは小結節性で隔壁線維が多いのに対して、HBVでは大結節性で隔壁の線維が薄いことを反映した結果であると推測した。
統計学的解析の結果では、各超音波エラストグラフィは、いずれも高い肝線維化診断能を有したが、いずれのエラストグラフィであっても各線維化ステージ間での測定値に重なりが大きかった。そこで、データマイニングを用いて、エラストグラフィと血清マーカーによる肝線維化診断について評価しディシジョン・ツリーを算出した。
また、力学的モデル解析により、RTE画像で得られる変化(線維化進行に伴い低歪み領域が増え斑な画像になる)は、肝線維化の進行に伴う肝組織の変化そのものを捉えた現象であることを確認した。
線維化ステージとRTE画像特徴量との間に一定の関係が存在することが判明した。つまり、びまん性肝疾患において、線維化の進行による結節の分布を反映して組織弾性像のテクスチャが変化した。
特徴量を独立変数、肝線維化ステージを従属変数として重回帰分析を行い、肝線維化予測式Liver Fibrosis Index (LFI) (= -0.00897×MEAN - 0.00502×SD + 0.0232×%AREA + 0.0253×COMP + 0.775×SKEW - 0.281×KURT + 2.08×ENT + 3.04×IDM + 40.0×ASM - 5.54)を算出した。LFIによる肝線維化診断能のAUCはF1以上 0.846、F2以上 0.833、F3以上 0.887、F4 0.863(non-validation date)と非常に高値であり、また、各ステージ間で有意差を認めた。
さらにetiologyごとにLFIの評価を行なったところ、HBVではHCVに比べてLFIが低値であった。これは、etiologyによる肝線維化形態の違い、つまりHCVでは小結節性で隔壁線維が多いのに対して、HBVでは大結節性で隔壁の線維が薄いことを反映した結果であると推測した。
統計学的解析の結果では、各超音波エラストグラフィは、いずれも高い肝線維化診断能を有したが、いずれのエラストグラフィであっても各線維化ステージ間での測定値に重なりが大きかった。そこで、データマイニングを用いて、エラストグラフィと血清マーカーによる肝線維化診断について評価しディシジョン・ツリーを算出した。
また、力学的モデル解析により、RTE画像で得られる変化(線維化進行に伴い低歪み領域が増え斑な画像になる)は、肝線維化の進行に伴う肝組織の変化そのものを捉えた現象であることを確認した。
結論
慢性肝疾患における肝線維化定量的評価と診断支援の実現を目指して、多施設共同横断研究として肝生検と超音波エラストグラフィとの比較を行った。RTE、FibroScan、VTQをはじめとした超音波エラストグラフィは、肝線維化を非侵襲的に診断できた。更に、RTEは、FibroScanやVTQとは異なり、炎症・黄疸・鬱血などの影響を受けずに肝線維化ステージを診断できた。エラストグラフィや血清線維化マーカーによるデータマイニングを用いることで、実臨床で肝生検に代わる非侵襲的肝線維化診断ツールとなりうる。
しかし、肝生検を用いた肝線維化の正診率は約75%であるといわれており、診断精度を上げるためには、肝切除標本診断をゴールドスタンダードとした肝線維化診断脳評価を行う必要があると考える。
また、肝発癌リスク評価などの予後予測について評価を行うために、長期的なフォローが必要である。
しかし、肝生検を用いた肝線維化の正診率は約75%であるといわれており、診断精度を上げるためには、肝切除標本診断をゴールドスタンダードとした肝線維化診断脳評価を行う必要があると考える。
また、肝発癌リスク評価などの予後予測について評価を行うために、長期的なフォローが必要である。
公開日・更新日
公開日
2017-01-20
更新日
-