文献情報
文献番号
201333002A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性ウイルス性肝疾患患者の情報収集の在り方等に関する研究
課題番号
H23-実用化-肺炎-一般-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
相崎 英樹(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
- 正木 尚彦(独立行政法人国立国際医療研究センター・肝臓病学)
- 菊池 嘉(国立国際医療研究センター・エイズ治療・研究開発センター・感染症学)
- 工藤正俊(近畿大学医学部消化器内科・消化器内科学)
- 吉岡健太郎(藤田保健衛生大学肝胆膵内科・肝臓病学)
- 米田政志(愛知医科大学医学部内科学講座・消化器内科学)
- 島上哲朗(金沢大学附属病院消化器内科・消化器内科学)
- 坂本 穣(山梨大学 医学部附属病院 消化器内科・消化器内科学 )
- 渡邊 綱正(公立大学法人名古屋市立大学大学院医学研究科・肝臓病学)
- 飯島尋子(兵庫医科大学医学部超音波センター・内科肝胆膵科・消化器内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(肝炎関係研究分野)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
35,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
「肝炎ウイルス検査促進」により見出された肝炎ウイルス検査陽性者を専門医療機関に勧奨する必要があることは明らかだが、自治体が保有する肝炎ウイルス検診陽性者リストは「個人情報」であるため、医療機関側からのアクセスは困難となっている。そこで、肝炎ウイルス検診陽性者フォローアップシステムの構築は陽性者の予後のため重要と考えられる。本研究では、肝炎検診陽性者を医療機関で補足および追跡が可能なシステムを構築することにより、肝炎キャリアの予後向上に資することを目指す。
また、治療著効例や自然治癒例でも肝炎ウイルス残存やウイルス血症の再燃に関する議論があり、「潜在的肝炎ウイルス感染」という新しい概念が提唱された。この概念はキャリアの予後を考える上でも重要である。肝炎ウイルス検査陽性者の追跡調査において見出された「潜在的肝炎ウイルス感染」の病態を解明し、適切なフォローアップの方法を決定したい。
また、治療著効例や自然治癒例でも肝炎ウイルス残存やウイルス血症の再燃に関する議論があり、「潜在的肝炎ウイルス感染」という新しい概念が提唱された。この概念はキャリアの予後を考える上でも重要である。肝炎ウイルス検査陽性者の追跡調査において見出された「潜在的肝炎ウイルス感染」の病態を解明し、適切なフォローアップの方法を決定したい。
研究方法
1. 情報収集の仕方の検討
既に構築されている肝疾患に対するIFN治療効果判定報告書の情報収集システム、肝がん患者登録システム、HIV感染者管理システムを参考に、キャリアの情報収集の内容、匿名化等について検討を行う。
2. 肝炎ウイルス検査陽性者の追跡調査システム構築
人口や医療環境が異なる石川県、山梨県、愛知県での肝炎ウイルス検診陽性症例情報収集の取り組みについて、その過程で明らかになった問題点等を解析した。
3. 潜在的肝炎ウイルス感染の解析
本研究で行われる検査陽性者の追跡において見出されたHCV自然治癒例、IFN著効例、occult HBV肝炎患者等についてウイルス学的に解析し、適切な追跡方法を決定したい。
既に構築されている肝疾患に対するIFN治療効果判定報告書の情報収集システム、肝がん患者登録システム、HIV感染者管理システムを参考に、キャリアの情報収集の内容、匿名化等について検討を行う。
2. 肝炎ウイルス検査陽性者の追跡調査システム構築
人口や医療環境が異なる石川県、山梨県、愛知県での肝炎ウイルス検診陽性症例情報収集の取り組みについて、その過程で明らかになった問題点等を解析した。
3. 潜在的肝炎ウイルス感染の解析
本研究で行われる検査陽性者の追跡において見出されたHCV自然治癒例、IFN著効例、occult HBV肝炎患者等についてウイルス学的に解析し、適切な追跡方法を決定したい。
結果と考察
HIV患者、肝癌患者、IFN治療者の情報について個人情報の管理法について調べ、肝炎ウイルス検査陽性者に応用可能な方法を見出した。肝炎ウイルス感染の情報は非常に高度な個人情報である一方、検診で陽性と判明した場合にその症例が疾患の重要性を知らないまま医療機関受診していない、あるいは定期受診から脱落してしまうのを検診主体である行政が放置しておくことにも大きな問題がある。石川県では検診開始当初より医療側と行政側の協力体制ができており、行政側も疾患の特徴、重要性に理解があった。このため患者より再同意を得る手順を踏むことで個人情報を含めた情報の移管に協力が得られ、石川県肝炎診療連携がスタートしており、そこで見出され問題点は、本研究班での追跡システムに大変参考になるものと考えられた。また、山梨県では今後実用化されるDAA(Direct acting antiviral)に対する薬剤耐性変異も測定可能とし、広く診療に役立てるような仕組みを構築し個別化医療への道を開いた。「個別化医療」の方針は、肝炎陽性者の個別の現状を把握できるモデルシステムでは有効であるものと考えられた。愛知県では肝炎ウイルス検査陽性者の追跡を管理する行政体制は各自治体(市レベル)に一任されており、検査陽性者の医療導入は満足いくものではない。今後、肝炎ウイルス検査陽性者の医療導入を目指すためには、①肝臓専門機関への紹介②肝臓専門医の介入③未受診者の拾い上げ、が急務であるといえる。さらに、調査では調査票に通し番号を振り、O市保健所では個人識別ができるようにした。この方法により保健所ではアンケート調査の結果によって、直接個人に受診勧奨を行うことが可能になった。個人情報および通し番号と個人の連結表はO市保健所が管理し、当研究班の班員は、個人情報をみることはできないように工夫した。職域検診と住民検診の比較から、会社組織という特異的な集団であったために定年退職等で既に会社に在籍しておらず、アンケート調査を行うことができなかった肝炎ウイルス陽性者もいたことは注目すべき事実であると考えられた。
血清ウイルス遺伝子陰性者でも肝機能異常が見られる症例では肝組織にウイルスが残存している症例が見出された。
血清ウイルス遺伝子陰性者でも肝機能異常が見られる症例では肝組織にウイルスが残存している症例が見出された。
結論
慢性ウイルス性肝疾患患者の情報収集における問題点を解決するためには、さまざまな視点からの一層の取り組みが必要であり、医療関係者のみならず行政担当者の積極的な関与が望まれる。石川県、山梨県はこの分野で先駆的な試みを行っているが、他の地域でも導入するにはその地域の現状に合わせた方法が必要と考えられた。愛知県O市での2回目のアンケート調査の結果からは、アンケート調査自体が、受診勧奨の役目を果たすことが示された。今後、肝炎ウイルス検査陽性者の医療導入を目指すためには、①肝臓専門機関への紹介②肝臓専門医の介入③未受診者の拾い上げ、が急務であるといえた。
自然治癒例やIFN著効例で、血中HCV遺伝子が陰性の症例でも、肝組織内にウイルスが潜在し、ウイルス特有のオルガネラ変化を来している可能性が示された。
自然治癒例やIFN著効例で、血中HCV遺伝子が陰性の症例でも、肝組織内にウイルスが潜在し、ウイルス特有のオルガネラ変化を来している可能性が示された。
公開日・更新日
公開日
2017-01-20
更新日
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