文献情報
文献番号
201333001A
報告書区分
総括
研究課題名
職域における慢性ウイルス性肝炎患者の実態調査とそれに基づく望ましい配慮の在り方に関する研究
課題番号
H23-実用化-肺炎-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 哲(東海大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 堀江 正知(産業医科大学 産業生態科学研究所)
- 和田 耕治(独立行政法人国立国際医療研究センター国際医療協力局)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(肝炎関係研究分野)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
22,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、これまで職域における慢性ウイルス性肝炎(以下肝炎)患者に対する望ましい配慮の在り方を提言する事を目的として、厚生労働省からの肝炎対策の通達の認知度、労働者のプライバシーに配慮した肝炎ウイルス検査実施状況、働きながら治療を受けられる体制の有無、労働者の病状に配慮した適正配置の有無について実態調査を実施してきた。平成25年度は、職域における慢性ウイルス性肝炎(以下肝炎)患者に対する望ましい配慮の在り方について提言する事を目的として検討を行った。
研究方法
平成25年度、研究代表者の渡辺は、働きながら治療を受けられる体制作りを中心に検討を行った。平成25年から「肝炎患者の就労に関する総合支援モデル事業」が開始されている。これまでの研究班の成果をモデル事業に反映して頂くため、モデル事業に参加している肝疾患相談センターとの間で連絡会を開催し、相談員が就労支援を実施する上での課題について討議を行った。全国の肝疾患相談センター70施設を対象として、肝炎患者の就労に関する相談の実態について調査した。さらに、全国の産業保健推進センター・産業保健推進連絡事務所42施設を対象として、事業者からの肝炎患者の就労に関する相談の実態、今後の肝疾患相談センターとの連携の可能性について調査を行った。研究分担者堀江は、産業医がウイルス性肝炎に罹患した労働者の就業上の配慮を行う際に参考となるよう、これまでの就業上の配慮に関する文献調査、事例調査、産業医に対する意見調査の結果をデータベースとして構築した。また、配慮の有無と労働者の長期予後との関係について観察するため、慢性肝疾患の労働者へ行う就労配慮に関する事例登録システムを開発した。研究分担者和田は、平成23年度と平成24年度に行った調査をもとに、わが国におけるウイルス性肝炎検査を推進する際に考慮すべきことを明らかにした。
結果と考察
これまでの調査結果では、肝炎患者労働者を対象とした調査で、3割は治療期間中に特に配慮を受けていなかったと答えていた。事業者に対する調査では61.5%で特別な配慮を要することはなかったと答えている。肝炎患者労働者が治療と就労を両立するために就業上の配慮を相談する先として、産業医が最も適切と言える。産業医がウイルス性肝炎に罹患した労働者の就業上の配慮を行う際に役立てるよう、これまでの就業上の配慮に関する文献調査、事例調査、産業医に対する意見調査の結果をデータベースとして構築し公開した。
全国の肝疾患相談センターを対象とした調査では、60施設(回収率86%)から返答を得た。半数の施設で就労について相談があり、相談内容としては、「仕事内容による他人への感染の心配」、「治療時間の確保」に関するものが多かった。少ないものの勤務先の担当者に直接連絡をとった事例もあった。自治体や産業保健推進センターと連携している施設は少なく、今後の課題と考えられる。相談員が就労相談を受ける際の課題として「法的な知識や人事労務に関する人材・知識不足」があり、就労相談に不慣れな相談員、肝疾患コーディネーターが、患者の就労状態を評価できるよう支援が望まれた。産業医が選任されていない事業所でも肝炎患者労働者が就業上の配慮が受け易いよう「肝疾患における就労支援のための連絡ノート」を作成した。事業所外の相談先である肝疾患相談センターにおける相談員が就労支援のために患者労働者の就労状態を評価できる「肝疾患相談支援センターにおける就労相談支援ツール」も作成した。
職場での肝炎ウイルス検査の導入にあたっては、一定のコストが発生し、法定の検査項目でないため、事業者の理解を得るにはまだ課題が残されている。また、肝炎ウイルス感染者の不安、肝炎ウイルス感染者への偏見が存在することから、検査を導入するにあたっては、個人情報管理の徹底や適切な知識の普及が望まれる。
全国の肝疾患相談センターを対象とした調査では、60施設(回収率86%)から返答を得た。半数の施設で就労について相談があり、相談内容としては、「仕事内容による他人への感染の心配」、「治療時間の確保」に関するものが多かった。少ないものの勤務先の担当者に直接連絡をとった事例もあった。自治体や産業保健推進センターと連携している施設は少なく、今後の課題と考えられる。相談員が就労相談を受ける際の課題として「法的な知識や人事労務に関する人材・知識不足」があり、就労相談に不慣れな相談員、肝疾患コーディネーターが、患者の就労状態を評価できるよう支援が望まれた。産業医が選任されていない事業所でも肝炎患者労働者が就業上の配慮が受け易いよう「肝疾患における就労支援のための連絡ノート」を作成した。事業所外の相談先である肝疾患相談センターにおける相談員が就労支援のために患者労働者の就労状態を評価できる「肝疾患相談支援センターにおける就労相談支援ツール」も作成した。
職場での肝炎ウイルス検査の導入にあたっては、一定のコストが発生し、法定の検査項目でないため、事業者の理解を得るにはまだ課題が残されている。また、肝炎ウイルス感染者の不安、肝炎ウイルス感染者への偏見が存在することから、検査を導入するにあたっては、個人情報管理の徹底や適切な知識の普及が望まれる。
結論
産業医が選任されている事業所では、産業医が肝炎患者労働者からの相談窓口となるのが良く、具体的な就業上の配慮の内容については、これまで収集した事例データベースが参考になる。また、産業医が選任されていない事業所の場合、肝炎患者労働者が主体となって事業者に就業上の配慮を求めて行く場合でも、肝疾患における就労支援のための連絡ノートを利用することで、かかりつけ医、専門医から就労に関する意見、助言が求め易くなることが期待される。肝疾患相談センターの相談員、肝疾患コーディネーターが肝炎患者労働者の就労状況を評価し易くするために就労相談支援ツールを開発した。今後、早い段階で治療に繋げるためには就労支援だけでなく、職場での肝炎に関する知識の普及や、肝炎ウイルス検査の導入が必要である。そのために、地域・職域の関連機関の連携が重要と言える。
公開日・更新日
公開日
2017-01-20
更新日
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