腹腔内転移癌を対象としたHB-EGFを分子標的とするがん治療薬BK-UMの第2相試験

文献情報

文献番号
201332025A
報告書区分
総括
研究課題名
腹腔内転移癌を対象としたHB-EGFを分子標的とするがん治療薬BK-UMの第2相試験
課題番号
H25-実用化(がん)-一般-005
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
岩本 亮(大阪大学 微生物病研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 宮本 新吾(福岡大学)
  • 篠崎 大(東京大学 医科学研究所)
  • 安井 寛(東京大学 医科学研究所)
  • 沖 英次(九州大学)
  • 澤 芳樹(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 富山 憲幸(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 長村 文孝(東京大学 医科学研究所)
  • 目加田 英輔(大阪大学 微生物病研究所)
  • 前原 喜彦(九州大学)
  • 山下 裕一(福岡大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(がん関係研究分野)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
93,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究課題の目的は、有効な治療法がない腹腔内転移を来した進行癌を対象に、開発中の分子標的薬BK-UMの第2相臨床試験を医師主導治験として実施し、その有効性を確認すると同時に、日本発の癌治療薬としてBK-UMの実用化を推進することである。
研究方法
第2相試験実施に向けて、以下の事項を実施した。
1. 非臨床試験を実施した。
2. 臨床研究の実施
1) プロトコル検討のために必要な情報として、単施設における77例の切除不能胃癌の症例と予後調査を行った。
2) 胃癌腹腔内転移症例におけるHB-EGF発現を解析するために、HB-EGFの発現レベルをRT-PCRで測定した。
3. プロトコルの検討・推進会議
1) 治験担当予定医師らによる推進会議を実施し、治験実施に必要な非臨床試験、プロトコルの概要、対象症例数の検討を行った。
2) 参加施設の治験実施体制、規制当局との薬事戦略相談の内容、今後必要な資金、等についての検討を行った。
4. PMDA 薬事戦略相談の実施
 対面助言を実施し、1)非臨床試験の充足性、および2)臨床試験計画について、PMDAの意見を確認した。
結果と考察
結果
1. 非臨床試験
1) 毒性試験:ハムスター雄での単回腹腔内投与毒性試験を実施した。その結果、性差による毒性に大きな違いがないことが示唆された。
2) 生殖発生毒性試験:ハムスターで実施するための投与経路検討試験を実施し、静脈内投与が実施可能であると判断した。
3) 薬理薬効試験:BK-UMとS-1併用投与の有効性試験、BK-UMとシスプラチン併用投与の有効性試験を実施し、併用による相乗効果が認められた。
2. 臨床研究
1) 切除不能胃癌の症例と予後調査を実施し、所定の成果を得た(詳細は研究報告書本文に記載)。
2) 胃癌腹腔内転移症例におけるHB-EGF発現解析を実施し、多くの症例で、比較として用いた卵巣癌症例よりも高いHB-EGFの発現が認められた。
3. プロトコルの検討・推進会議
1) 既存の報告されている文献、あるいは学会及び研究会に参加あるいは発表し、プロトコルの内容について情報を収集した。
2) 治験担当医師らによる推進会議を計5回実施し、必要な事項について検討すると同時に、各参加機関の役割・業務分担を決定した。
3) 治験実施計画書概要案を作成した。
4) 治験薬概要書の改訂を行った。
5) コンパニオン診断薬の開発を行うための準備を開始した。
4. PMDA 薬事戦略相談
1) 対面助言のための事前面談を2013/10/11に実施した。
2)対面助言実施し、非臨床試験の充足性、および臨床試験計画について、PMDAの意見を確認した。
5. 各施設の治験実施に必要な体制の整備状況を調査した。
考察
1. 腹膜播種を持つ症例の予後は不良であったが、化学療法後の胃切除術は、比較的安全に施行できると考えられた。
2. BK-UMとCisplatinとの併用治療に、有意な抗腫瘍効果が期待される。播種性の胃癌モデルについても著明な抗腫瘍効果が期待できる。
3. BK-UMの腹腔内単回投与における毒性に雌雄差がなかったことから、卵巣癌で実施した第1相試験における推奨投与量で本試験も実施できる可能性が高まった。
4. 26年度からの治験実施が十分可能であると判断された。


結論
胃癌の腹腔内転移症例を対象にしたBK-UMの第2相試験の平成26年度開始に向けて、実施に必要な準備を順調に進めることができた。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201332025Z