難治性神経芽腫に対するIL2、CSF併用ch14.18免疫療法の国内臨床開発

文献情報

文献番号
201332024A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性神経芽腫に対するIL2、CSF併用ch14.18免疫療法の国内臨床開発
課題番号
H25-実用化(がん)-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
原 純一(大阪市立総合医療センター 小児血液腫瘍科)
研究分担者(所属機関)
  • 河本 博(国立がん研究センター中央病院小児腫瘍科)
  • 平家 勇司(国立がん研究センター早期探索臨床研究センター)
  • 渡邊 協孝(国立がん研究センター東病院治験管理室)
  • 吉村 健一(神戸大学医学部附属病院臨床研究推進センター)
  • 木村 利美(東京女子医科大学病院薬剤部)
  • 田口 智章(九州大学医学研究院小児外科)
  • 笹原 洋二(東北大学病院 小児科)
  • 瀧本 哲也(国立成育医療研究センター臨床研究センター臨床研究推進室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(がん関係研究分野)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、高リスク神経芽腫に対して、米国標準である抗GD2抗体ch14.18を用いた免疫療法を国内に導入することである。非常に高い有効性が証明されたこの米国レジメンは中心薬剤ch14.18とIL2製剤、rGM-CSFの3剤併用療法である。3剤とも国内未承認で、米国レジメンの国内導入は不能に近い。治験薬提供者を確保できたch14.18を軸に、免疫増強としてIL2国内製剤、M-CSFもしくはrG-CSFを用いて、米国開発経緯を生かしながら、国内独自免疫療法を開発しながら国内導入する。
研究方法
米国エビデンスを利用しての国内免疫療法レジメンの開発を行うにあたり、米国レジメンで用いられたGM-CSFと同様のADCC活性増強効果の再現を目指し、本試験では国内で販売されているM-CSFとG-CSFを組み込んだレジメンで検証を行うこととした。臨床効果とADCC活性でどちらか優れたサイトカインを選択し、次期に予定されている第IIb相試験で検証する予定とした。
 本治験では、米国レジメン(全5コース)のGM-CSFをM-CSFまたはG-CSFに、rIL-2製剤であるaldesleukinを国内製剤であるteceleukinに置換したレジメンを用い、第I相でch14.18、teceleukin(rIL2製剤)、mirimostim(M-CSF製剤)、filgrastim(rG-CSF製剤)用量探索とレジメン実施可能性を検証し、第IIa相では治療実行可能性を検証することとした。ともに薬物動態試験および抗ch14.18抗体と本試験のPOCであるADCC活性の測定を含む。なお、予定された5コースを超えて7コースまでの継続を可とすることでコース数の増加も検討する
結果と考察
平成23年度にPMDAから薬事戦略相談対面助言を受け、平成24年度末に施設IRB承認および治験計画届けを提出済みであったため、9月の本研究採択決定を受け、損害賠償保険などの各種契約完了後の10月より治験治療実施施設である国立がん研究センター中央病院および大阪市立総合医療センターで症例登録を開始した。M-CSFレジメンより開始し、12月までに当初の3例の症例登録が行われ、1月30日にDLT判定委員会でDLT判定が行われた結果、M-CSF、ch14.18のDLTは発生せず、IL2ではDLT発現症例が1例であったため、それぞれの薬剤について試験開始用量でのさらなる3例の登録追加を決定した。それに基づき、2月までにさらに3例が登録された。観察されたDLTは低造血能の症例(登録時Grade3血小板減少)において発現したGrade4血小板減少であった(IL2特異的DLTに該当)。なお、これまでのところ、増悪イベントは観察されていない。
現在までのところ、順調に症例登録が行われ、考え得る限る限り最短の期間で第2コホートまでの登録が完了した。付随する薬物濃度、抗体濃度、ADCC活性の測定のための検体採取と測定施設への搬送も滞りなく実施されている。予想以上にDLT発現が少なくこのままいくと第2コホートでのDLT判定後に初期用量で推奨用量が決定される可能性が高い。その場合、第IIa相で予定しているM-CSFレジメン、G-CSFレジメンそれぞれ8例は第I相で同一用量が用いられた症例も算入されるため、第IIa相ではあらたにそれぞれ2例ずつの症例登録で試験が完了することになる。その場合、本来開発対象としている初回寛解例の組み入れが4例と少ない症例数に止まる可能性がある。これに対し、現在、第IIa相の予定症例数の拡大または第IIb相の早期開始を検討している。
結論
本試験はわが国の高リスク神経芽腫より20%以上の長期生存をもたらしている米国 標準レジメンの導入を目指しているが、ch14.18は平成26年度中に米国とEUで承認見込みであるため、真のドラッグラグとなってしまう。これまで小児がん領域で国内未承認薬の国内導入を目指している医師主導治験は本試験を含めて他に1剤が進行中あるのみで本研究は同領域においては先進的な試みといえる。本研究の早期の完了をはかり、一日も早い世界標準である治療法をわが国へ導入をすることがわれわれに課せられた使命であると同時に、これが契機となって医師主導治験が本領域において活発化することを期待している。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201332024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
62,000,000円
(2)補助金確定額
58,359,000円
差引額 [(1)-(2)]
3,641,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,388,692円
人件費・謝金 11,021,346円
旅費 754,410円
その他 25,195,094円
間接経費 12,000,000円
合計 58,359,542円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-09-10
更新日
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