成人T細胞白血病の治癒を目指した病因ウイルス特異抗原を標的とする新規複合的ワクチン療法:抗CCR4抗体を併用した樹状細胞療法 第Ⅰ/Ⅱ相試験

文献情報

文献番号
201332023A
報告書区分
総括
研究課題名
成人T細胞白血病の治癒を目指した病因ウイルス特異抗原を標的とする新規複合的ワクチン療法:抗CCR4抗体を併用した樹状細胞療法 第Ⅰ/Ⅱ相試験
課題番号
H25-実用化(がん)-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
末廣 陽子(九州がんセンター 血液内科)
研究分担者(所属機関)
  • 神奈木真理(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 赤司 浩一(九州大学 大学院医学研究院)
  • 石田 高司(名古屋市立大学 大学院医学研究科 )
  • 松岡 雅雄(京都大学 ウイルス制御研究領域)
  • 福田 哲也(東京医科歯科大学 血液内科)
  • 下川 元継(九州がんセンター 臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(がん関係研究分野)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
100,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではATLの新規治療法開発を目的に既治療ATL患者を対象としてウイルス特異抗原であるTaxを標的とした樹状細胞(DC)ワクチン療法の安全性、忍容性の検証を行う。本臨床試験では、制御性免疫の抑制、残存病変の縮小効果による効率的な抗腫瘍免疫の誘導を目的として、抗CCR4抗体を併用する複合的免疫療法の第Ia/Ib相治験を計画している。本年度は、DCワクチンの実用化を目指し、PMDA薬事戦略相談を実施するとともに、既に臨床研究として樹状細胞ワクチン療法を実施した3症例の追跡調査を行った。
研究方法
1.ATLに対するTax特異的樹状細胞ワクチン療法の第I相臨床研究追跡調査
平成24年度に実施したTax特異的DCワクチン療法の第I相臨床研究では、既治療のATL患者を対象にDCワクチン単独投与を実施し安全性の評価を行った。平成25年度は、臨床研究完遂例の追跡調査として臨床経過観察、腫瘍マーカー (sIL-2R)、HTLV-1プロウイルス量、Taxテトラマー解析によるCTL検出、制御性T細胞の解析を実施した。
2.抗CCR4抗体を併用した複合的免疫療法第Ia/Ib相医師主導治験
平成25年度後期にコアメンバーによるワ-キンググループで実施計画書、治験薬概要書を作成、治験薬製造における品質・安全性のPMDA薬事戦略相談対面助言を実施した。また治験調製事務局を九州がんセンターに設置し組織整備を開始した。
3.HTLV-1プロウイルス解析
Taxを標的としたDCワクチン適応症例におけるfeasibilityを検討するとともにATL患者検体におけるTax発現能を解析した(tax遺伝子変異、5’側LTR欠損, 5’側LTRメチル化)。
4.抗CCR4抗体による免疫賦活作用の解析
ATL患者で抗CCR4抗体(モガムリズマブ)治療による制御性T細胞およびTax特異的T細胞の動態を解析した。
結果と考察
1.ATLに対するTax特異的樹状細胞ワクチン療法の第I相臨床研究追跡調査
樹状細胞ワクチンを単独投与した3症例の被験者においてgrade3以上の非血液学的毒性を認めず、接種開始後13-18ヶ月の経過で安全性は確認された。3症例中2症例で部分寛解が得られ、1例は不変(SD)であった。全例でPSの改善を認め一年以上無治療で外来経過観察が可能であった。部分寛解が得られた2症例中1例は6ヶ月後の評価で完全寛解の評価が得られ、現在も寛解維持ができている。SDの1例は、6ヶ月後に進行(PD)と判定されたが、病勢進行が緩徐であった。TaxテトラマーによるCTL解析では、3症例ともDC接種開始から16-20週目の末梢血検体で、培養中にTax特異的CTLの増殖が観察された。少数例ではあるが、抗腫瘍効果、Tax特異的CTLの活性も確認されたことから、今後、移植非適応のATL患者に対して有望な治療法として期待できる可能性がある。
2.抗CCR4抗体を併用した複合的免疫療法第Ia/Ib相医師主導治験
本研究では、プロトタイプである臨床研究の成果を元に次世代のワクチン療法として抗CCR4抗体を併用した複合的ワクチン療法の実現化を目指している。基礎解析の結果より抗CCR4抗体による機能的制御性T細胞の排除が認められ、DCワクチンの抗腫瘍免疫を効率よく誘導できることが期待された。平成25年度はプロトコール部門、治験薬製造部門、GCP部門の各ワーキンググループを設置し、治験支援業者(CRO)との連携により治験実施計画書、治験薬概要書(案)の作成とPMDA薬事戦略相談を実施した。3回のPMDA事前面談(品質相談、非臨床試験相談)を経て平成26年2月に製剤安全性に係わる対面助言、3月に製剤品質に係わる対面助言を実施した。また2月にはプロトコール骨子に関する事前面談を実施した。一方治験開始に向けての規制当局対応において、培地の生物由来原料基準、最終製品規格及び製剤出荷試験に関して、本研究における細胞加工製剤特有の問題点が抽出され、製剤調製法の見直しと品質検証試験での対応策を迫られている。細胞・組織加工製品における治験は、国内でも例が少なく、本治験が軌道に乗れば、今後細胞加工製品の開発において、実用化研究から製品化までのプロセスのプラットフォームになる可能性がある。
結論
ATLに対する第I相臨床研究においてHTLV-Ⅰ Tax特異的DCワクチン療法の安全性が確認された。本研究課題ではTax特異的DCワクチン療法の安全性、有効性を検証し治療の普遍化を目的として新規の医師主導臨床治験「抗CCR4抗体を併用した複合的ワクチン療法」を計画した。PMDA薬事戦略相談を実施し、本治験製剤開発の克服すべき問題点に関して検討し治験申請準備を推進した。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201332023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
120,000,000円
(2)補助金確定額
120,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 48,095,798円
人件費・謝金 2,919,182円
旅費 2,766,264円
その他 46,218,756円
間接経費 20,000,000円
合計 120,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-09-10
更新日
-