ヒト型抗CD4抗体の癌免疫細胞療法への適応を目指した前臨床開発研究

文献情報

文献番号
201332022A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト型抗CD4抗体の癌免疫細胞療法への適応を目指した前臨床開発研究
課題番号
H25-実用化(がん)-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
松島 綱治(東京大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 上羽 悟史(東京大学大学院医学系研究科)
  • 中面 哲也(国立がん研究センター)
  • 佐藤 暁洋(国立がん研究センター)
  • 渡邊 協孝(国立がん研究センター)
  • 塚崎 邦弘(国立がん研究センター)
  • 北野 滋久(国立がん研究センター)
  • 竹田 和由(順天堂大学医学部)
  • 伊藤 哲(IDACセラノスティクス株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(がん関係研究分野)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
100,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新規ヒト型化抗CD4抗体は、同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)への適応のみならず種々の癌治療・免疫細胞療法との併用が期待される。本研究ではGMP基準抗体の生産とそれを使用したGLP基準での安全性・毒性試験の実施計画立案と実施、固形癌患者における抗体単独投与による医師主導第1相臨床治験プロトコール作成および様々な癌治療への応用可能性を検証するための前臨床研究を主な目的とする。
研究方法
抗CD4抗体単独による抗腫瘍作用:C57BL/6マウスにメラノーマ細胞株B16F10または肺がん細胞株Lewis Lung Carcinoma(LLC)、BALB/cマウスに大腸がん細胞株Colon16を腹側に皮下(s.c.)移植し固形腫瘍を作製した。腫瘍移植前2日目(day-2)、移植後3日目(day3)、5日目(day5)、9日目(day9)、あるいは12日目(day12)に抗CD4抗体(GK1.5, 200ug)を腹腔内(i.p.)投与して、2~3日おきに腫瘍径を測定した。腫瘍体積、生存率を指標として抗CD4抗体の抗腫瘍効果を評価した。
抗CD4抗体と抗PD-1(CD279)抗体との併用-スケジュールおよび投与回数の最適化:C57BL/6マウスにメラノーマ細胞株B16F10を腹側に皮下(s.c.)移植し固形腫瘍を作製した。腫瘍移植後5日目(day5)単回、あるいは、day5およびday9の2回、抗CD4抗体(200ug)を腹腔内(i.p.)投与して、2~3日おきに腫瘍径を測定した。抗PD-1抗体(200ug)はday4から5日間連続(1クール)、あるいは、day4から5日間かつday14から5日間の合計10日間(2クール)、あるいは、day4, day8, day14, day18の合計4日間(2クール)、i.p.投与した。
結果と考察
1)ヒト型化抗CD4抗体のGMP基準生産とGLP基準での安全性・毒性試験立案・実施が最も重要な課題である。Cobra Biologics Ltd(株)(英国)にGMP基準生産の発注、抗体産生の最適化と生産を開始した。平成26年度中にGMP生産を完了させるとともに、GLP基準での安全性・毒性試験を開始する予定である。また、PMDAと平成25年12月26日に薬事事前相談を受け、今後対面助言にてGMP基準生産ならびにGLP基準での安全性・毒性試験に関する助言を受ける予定である。2)CD4(+)Treg, Myeloid Suppressor Cells, Plasmacytoid Dendritic Cellsなどの免疫抑制性細胞の抗CD4抗体による除去による免疫抑制解除、それによる抗体単独の抗癌作用ならびに様々な抗癌剤治療、免疫細胞・抗体治療との併用を検討している。平成25年度には既に3つのマウス実験腫瘍(B16メラノーマ株、Colon26大腸がん株、LLC肺癌株) 移植後にCD4陽性細胞欠失抗体の単独、複数回投与にて強力な抗癌作用を見いだし、また、近年注目されているImmune Checkpoint抗体のうち抗PD-1抗体と顕著な相乗効果があることを発見した。細胞・分子機序の解析として抗CD4抗体投与群では、全身性にCD4+ T細胞ならびに形質細胞様樹状細胞数が減少する一方、CD44hiエフェクター型CD8+ T細胞数が増加した。更に、3LL担癌モデルにおける腫瘍部位では抗CD4抗体投与によりTnfa, IfngならびにIFN-γ誘導性遺伝子であるCxcl10,またIFN-γによる抗腫瘍作用に重要な役割を果たすことが報告されている細胞周期制御分子PmlおよびTrp53などの発現亢進を認めた。これらの結果から、抗CD4抗体は腫瘍特異的CD8+ T細胞の反応を増強することで腫瘍細胞の細胞周期を抑制し、腫瘍増殖を抑制する可能性が示唆された。
結論
委託先として選定した英国のCobra Biologics社にてGMP製造に向けて必要な種々作業が順調に進行している。本抗体のADCC活性の安定的評価法を確立した。PMDAと平成25年12月26日に事前相談を実施し、今後対面助言を得る予定である。マウス皮下腫瘍モデルにおいて、抗CD4抗体単回投与、複数回投与、投与時期について検討し、至適時期があることが判明した。現在、世界的に注目されているImmuno-checkpoint阻害抗体との併用についても検討した結果、Colon26については抗PD1抗体と抗CD4抗体併用において劇的な相乗効果が観察された。今後の臨床開発プロトコールに反映させる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201332022Z