癌特異的アポトーシスを誘導する革新的分子標的薬による難治性皮膚癌に対する治療薬の医師主導臨床治験による実用化開発

文献情報

文献番号
201332020A
報告書区分
総括
研究課題名
癌特異的アポトーシスを誘導する革新的分子標的薬による難治性皮膚癌に対する治療薬の医師主導臨床治験による実用化開発
課題番号
H24-実用化(がん)-一般-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
片山 一朗(国立大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山崎 直也(国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍学)
  • 種村 篤(国立大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 金田安史(国立大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 齋藤 充弘(大阪大学医学部附属病院 未来医療開発部)
  • 李 千萬(大阪大学医学部附属病院 未来医療開発部)
  • 梅垣 昌士(国立大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 横関 博雄(東京医科歯科大学 医歯学研究科)
  • 佐藤 貴浩(防衛医科大学校 皮膚科学)
  • 柴垣 直孝(山梨大学 医学工学総合研究部)
  • 河上 裕(慶應義塾大学・医学部先端医科学研究所細胞情報研究部門)
  • 坂口 志文(国立大阪大学 免疫学)
  • 島田 眞路(山梨大学医学部附属病院 皮膚科学)
  • 佐野 栄紀(高知大学 医学部)
  • 山本 俊幸(福島県立医科大学 医学部)
  • 清原 祥夫(静岡県立静岡がんセンター 皮膚科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(がん関係研究分野)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
128,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大阪大学医学部附属病院は、革新的癌治療薬(HVJ-E)で悪性黒色腫を対象とする臨床研究を実施、計6症例に関して安全性、有効性を示唆するデータを取り纏め、平成25年度に総括報告書作成を完了した。そこで、薬事申請を目指す医師主導治験を実施し、革新的分子標的薬の国内優先の開発を成功させる事を目的に研究開発を行った。
研究方法
1)PMDA事前相談、対面助言、治験届(H24-25年度):治験計画、非臨床試験、製造に関する対面助言で治験実施計画書を最終化(H24年度)、H25年度に治験届作成完了
2)実施計画書のIRBでの承認取得(H24-25年度):PMDAの対面助言の見解を反映した書類をIRBに申請、承認取得(H25年度)
3)医師主導臨床治験の実施(H25-26年度):進行性悪性黒色腫を対象にした治験をH26年度までに開始
4)薬効・薬理試験の実施(血管肉腫など他の皮膚癌全体への適応拡大、H25-26年度):血管肉腫への適応拡大に必要な薬効確認試験(一般試験:H24年度~H25年度)、用法用量設定試験(信頼性基準適合試験:H25年度~H26年度)を実施
5)後期臨床治験のためのGLP安全性試験の実施(H24-26年度):薬事上の申請に必要な安全性試験実施
結果と考察
1)医師主導治験治験計画書、治験薬概要書を作成し、平成25年度までに計3回のPMDA対面助言を実施、治験届けまでに必要な課題、実施項目の抽出を完了し、指摘された内容に従ってGLP、GMPレベルの追加試験を実施、追加データを取得した。この追加試験結果を反映した治験計画書、治験薬概要書、同意書、同意説明文書を最終化、IRBに提出した。実施計画書の作成過程で、皮膚癌の抗腫瘍評価のガイドライン提言に繋がる新規評価法を策定、医師主導治験で検討を実施、策定した評価法の妥当性を検証する予定。
2)医師主導治験開始に必要な施設内倫理委員会(IRB)での承認取得と、治験届の提出を進めた。平成25年度は、大阪大学医学部附属病院のIRBで承認取得、他施設でも承認取得手続きを進めている。また、治験届に必要な書類作成についても完了、PMDAから指摘を受けた追加試験データ取得の完了次第、治験届を提出できる状況まで開発を進めた。
3)医師主導治験の実施体制を強化するため、H25年度に治験施設1箇所を新たに組み込み、計3施設(大阪大学医学部附属病院、国立がん研究センター、静岡県立静岡がんセンター)で治験を実施する体制を構築し、計画通りH26年度に治験を実施する。また、治験薬GMP製造体制についても構築を完了、平成25年度から治験薬GMP体制下での被験物質製造を開始した
4)血管肉腫等への適応拡大のための薬効・薬理試験として、癌細胞特異的細胞死、抗腫瘍免疫活性化のメカニズム解析を行い、IL-18の発現亢進にHVJ-Eが関与している事と、TLR-4アゴニストであるMPLとの相乗効果を明らかにした。
5)血管肉腫への薬効データ取得のため、BALB/cマウス皮膚に血管肉腫細胞株(ISOS-1)を移植するモデル系を確立、HVJ-EとIL-2遺伝子の投与で腫瘍増大の有意な抑制、腫瘍部位への免疫細胞浸潤(NK細胞、CD8陽性T細胞)、所属リンパ節での制御性T細胞減少、myeloid-derived suppressor cell(MDSC)の低下、CD8陽性T細胞からのIFN-γ産生増強などを明らかにした。また、分子標的医薬であるスニチニブ(チロシンキナーゼ阻害剤)との併用により、腫瘍消失率を指標とする薬効増強が認められた。これらの結果から、HVJ-Eの投与は血管肉腫の治療に有用であると示唆された。
6)薬事上の承認申請に向け、H24年度に提携した石原産業株式会社と治験薬GMP製造体制の確立を推進、初期治験の実施に必要な治験薬GMP体制の確立を完了し、実際に被験物質の治験薬GMP製造を開始した。また、後期治験と承認後の製造に必要な医薬品GMPレベルのプラント整備を開始し、主要設備の仕様策定を進めた。更に、今後実施する医師主導治験結果の評価を条件として、上市後のグローバル販売に必要な製薬企業との提携交渉を進めている状況である。
結論
1) 臨床研究の6症例の結果(安全性、有効性)を取り纏め、総括報告書作成を完了
2) 治験実施計画書、治験薬概要書を最終化、PMDA対面助言で治験届に必要な追加試験項目を確定、追加試験データの取得もほぼ完了
3) IRB申請実施、大阪大学医学部附属病院で承認取得、治験届の書類作成を完了
4) 治験実施体制、治験薬GMP製造体制確立、医薬品製造企業との提携に成功、製薬企業との提携交渉も進捗、承認取得に向けた開発体制の確立を計画通り進めた。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201332020Z