難治癌を標的治療できる完全オリジナルのウイルス遺伝子医薬の実用化のための前臨床研究

文献情報

文献番号
201332015A
報告書区分
総括
研究課題名
難治癌を標的治療できる完全オリジナルのウイルス遺伝子医薬の実用化のための前臨床研究
課題番号
H24-実用化(がん)-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小戝 健一郎(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科遺伝子治療・再生医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 三井 薫(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科遺伝子治療・再生医学分野 )
  • 小宮 節郎(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科整形外科学分野 )
  • 夏越 祥次(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科消化器・乳腺甲状腺外科学分野)
  • 永野 聡(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科整形外科学分野 )
  • 入江 理恵(前薗 理恵)(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科遺伝子治療・再生医学分野 )
  • 伊地知 暢広(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科遺伝子治療・再生医学分野 )
  • 王 宇清(鹿児島大学 産学官連携推進センター)
  • 福崎 好一郎(株式会社 新日本科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(がん関係研究分野)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
91,273,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
この研究にいたる背景として、研究代表者は、まず遺伝子治療研究の黎明期(90年代初頭)に米国専門施設でアデノウイルスベクターによる癌遺伝子治療法の開発に世界に先駆け成功し、米国共同研究者が臨床試験にも成功した。帰国後に本邦の自身の研究室で、完全オリジナルの「多因子で同時に精密に癌特異標的治療できる増殖制御型アデノウイルス」(m-CRA)の作製技術の開発に成功し、Survivin依存性m-CRA (Surv.m-CRA)(第一弾のm-CRA医薬)を開発した。さらに癌特異性(安全性)と治療効果を向上した新型Surv.m-CRAの開発を行った。さらに、Surv.m-CRAは既存の治療法が効果を示さない、癌幹細胞を効果的に治療できることを実証した。
 本研究は、Surv.m-CRA の臨床用のGMP製造、GLP基準での非臨床試験のデータ取得等を3年間で行い、平成27年度よりこの分野で本邦初の医師主導治験を開始することを目的とする。
研究方法
1.医師主導治験に使用する本ウイルスの治験薬の製造と品質・安定性試験
1)Master Viral bank (MVB)の構築 2)MVBの品質テスト 3)治験薬(「低」・「中」用量)のGMP原薬の製造 4)GMP原薬(「低」・「中」用量)の品質試験: i)安全性試験 ii) 製造品の確認試験 iii)純度試験 iv)強度試験 v)活性/能力試験 vi)その他(外観、pH) 5)GLP毒性試験用の原薬製造 6)本ウイルスの腫瘍細胞特異性に関する検討
2.前臨床(非臨床)試験
1)POC (Proof of Concept / Efficacy)試験 i)in vitro試験
2)安全性試験 i)毒性試験 ii)薬物動態試験
結果と考察
1.医師主導治験に使用する本ウイルスの治験薬の製造と品質・安定性試験など 1)Master Viral bank (MVB)の構築本ウイルスのGMPグレードのMaster viral bank (MVB)を樹立した。 2)MVBの品質テスト:ウイルス力価、無菌性及びウイルス安全性試験などICH(日米欧医薬品規制調和会議)等のガイドラインで規定された試験を実施し、GMPグレードの治験薬製造に使用可能な品質であることを確認した。 3)治験薬(「低」・「中」用量)のGMP原薬の製造:医師主導治験に使用することを目的として、本ウイルスのGMP原薬の製造を確保した。 4)GMP原薬(「低」・「中」用量)の品質試験:GMP原薬の力価、品質試験を実施し、治験に使用する上で必要な品質が確保されていることを確認した。 5)GLP毒性試験用の原薬製造: GMP原薬と同一の製造法で製造し、その品質に問題のないことを確認した。 6)本ウイルスの腫瘍細胞特異性に関する検討:本ウイルスがSurvivinの発現レベルに依存して細胞傷害性を発揮することを確認した。
2.前臨床(非臨床)試験 1)POC (Proof of Concept / Efficacy)試験 i)in vitro試験 ・定量RT-PCRによる内因性survivinの癌特異的な発現を実証 ・Surv.m-CRA のin vitroでの癌特異的な殺傷効果を実証 2)安全性試験 i)毒性試験 ・ハムスター単回投与予備毒性試験(非GLP): 本ウイルスをハムスターに筋肉内投与し、想定された肝傷害が高用量群でのみ検出されたが、中用量・低用量群で毒性兆候は認められず、治験における最大投与量まで安全に投与できることが示唆された。 ・ハムスター単回投与毒性試験(GLP): GLP試験として、本ウイルスをハムスターに筋肉内及び皮下投与し、臨床病理学的、病理解剖学的、及び病理組織学的検査を実施した。 ii)薬物動態試験  ・本ウイルスをハムスターに単回皮下投与し、定量PCRにてウイルスの生体内分布と経日的変化を検討した結果、雌雄生殖器系を含め安全性面で問題となる分布・残留は観察されなかった。
結論
 独自開発のm-CRA(多因子で癌特異化する増殖制御型アデノウイルスベクター)作製技術を基盤に開発した、Surv.m-CRAの医師主導治験開始に向けGMP製造、非臨床試験、ならびに当局対応を計画通り行った。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201332015Z