去勢抵抗性前立腺がんに対する新規がんペプチドワクチン療法開発のための第I相・第II相(前半)臨床試験

文献情報

文献番号
201332012A
報告書区分
総括
研究課題名
去勢抵抗性前立腺がんに対する新規がんペプチドワクチン療法開発のための第I相・第II相(前半)臨床試験
課題番号
H23-実用化(がん)-一般-012
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
野口 正典 (久留米大学 付置研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 末金 茂高(久留米大学医学部泌尿器科)
  • 守屋 普久子(久留米大学医学部泌尿器科)
  • 伊東 恭悟(久留米大学医学部免疫・免疫治療学)
  • 山田 亮(久留米大学 付置研究所)
  • 笹田 哲朗(久留米大学医学部免疫・免疫治療学)
  • 松枝 智子(久留米大学医学部免疫・免疫治療学)
  • 内藤 誠二(九州大学大学院医学研究院泌尿器科学分野)
  • 大山 力(弘前大学大学院医学研究科泌尿器科学講座)
  • 新井 学(獨協医科大学越谷病院)
  • 松本 和将(北里大学医学部泌尿器科)
  • 植村 天受(近畿大学医学部泌尿器科)
  • 那須 保友(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科泌尿器病態学)
  • 江藤 正俊(熊本大学大学院生命科学研究部泌尿器病態学分野)
  • 頴川 晋(東京慈恵会医科大学泌尿器科学)
  • 中川 昌之(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科泌尿器科学分野)
  • 角間 辰之(久留米大学 付置研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(がん関係研究分野)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
121,728,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、去勢抵抗性前立腺がん(以下、CRPCと記載)に対する新規ペプチドワクチンの開発および標準治療であるドセタキセルを用いた化学療法との併用療法の確立である。具体的には、医師主導によるCRPC患者を対象とした新規ペプチドワクチンの安全性および免疫学的最小免疫反応有効量を推定する第Ⅰ相臨床試験、ならびに推奨投与量のペプチドワクチンとドセタキセルを用いた化学療法との併用における有効性および安全性の探索的検討を行う早期第Ⅱ相臨床試験を実施し、早期のproof of concept(POC)を得た後に、製薬企業へ技術移転し、併用療法における新規ペプチドワクチンの実用化を目指す。
研究方法
CRPC患者15症例を対象として、HLA-A2、A24、A3スーパータイプ、A26拘束性の20種類のがんペプチドから構成される20種混合ペプチドワクチン(以下、KRM-20と記載)の投与量を3群設定し、無作為割付により各群(各用量5症例)に割り付け、KRM-20を割付用量に調製し、毎週1回、合計6回の皮下投与を行い、その安全性、特異的免疫能変化および血清PSA値の変化について探索的検討を行う第Ⅰ相臨床試験を実施する。本試験の主要評価項目は安全性(全有害事象)である。
次に、CRPC患者46症例を対象として、無作為に1:1の割合でKRM-20群またはプラセボ群に割り付け、第Ⅰ相臨床試験により決定された推奨投与量のKRM-20(被験薬)またはプラセボ製剤(対照薬)を10回投与、ならびに治験薬6回目投与日よりドセタキセルを併用し、併用療法におけるKRM-20の有効性および安全性の探索的検討を行う早期第Ⅱ相臨床試験を実施する。本試験の主要評価項目は血清PSA値の50%以上低下率である。
結果と考察
[結果]
1.早期第Ⅱ相臨床試験
1)PMDA薬事戦略相談対面助言、治験審査委員会、治験計画届出
平成25年4月3日にPMDA薬事戦略相談対面助言を実施し、 (1)試験デザイン、 (2)主要評価項目(血清PSA値の50%以上低下率)の設定、(3)当該試験の用量として第Ⅰ相臨床試験で求められた推奨投与量を用いることの妥当性 等についての相談を行い、PMDAより助言を受けた。
各治験実施医療機関において治験審査委員会(IRB)審査を受け、平成25年5月22日久留米大学医療センターのIRB承認を皮切りに、各治験実施医療機関においてそれぞれIRB承認を得た。IRB承認後、平成25年6月10日に久留米大学医療センターよりPMDAへ治験計画届出を行い、順次、各治験実施医療機関追加等の治験計画変更届出を行った。
2)試験概要および経過
平成25年7月よりCRPC患者46例を対象として、文書による同意を取得した被験者を無作為割付によりKRM-20群とプラセボ群(対照群)の2群に割り付け、治験薬(KRM-20:1mg/0.5mL又はプラセボ:0.5mL)を合計10回投与(1~6回目は毎週1回、7~10回目は3週に1回投与)、ならびに治験薬6回目投与日よりドセタキセル(70mg/m2)を3週間間隔で5コース投与し、その有効性と安全性の探索的検討を行うことを目的とした「KRM-20早期第Ⅱ相プラセボ対照二重盲検比較試験」を開始した。当該年度内に被験者38名より同意取得(うち4名は試験開始前中止)し、31名に治験薬の投与がなされた。試験開始後、被験者6名に「急性腎盂腎炎」、「糖尿病の悪化」、「発熱性好中球減少症および間質性肺炎」、「下痢および食欲不振」、「食欲不振」、「脳梗塞」の重篤な有害事象(以下、SAEと記載)が発現したが、いずれの事象も治験薬との因果関係は否定されており、安全性に問題は認められていない。また、有効性については現在試験継続中であり、当該年度内に評価に必要な全てのデータが得られていないため、今後、当該試験終了後に全データの集積および解析を行い、安全性とともに評価する予定である。
[考察]
治験開始までの準備に時間を要し、第Ⅰ相臨床試験の開始が平成24年6月下旬、試験終了が平成25年1月と遅延し、それに伴い早期第Ⅱ相臨床試験の開始も平成25年7月となった。そのため、当初の計画より全体的に遅れを生じてはいるものの、研究分担者ならびに治験実施医療機関等の協力の下、2つの医師主導治験を実施することができた。
結論
当該試験の進捗遅延はあるものの、当該研究計画に沿って概ね順調に経過していると評価しており、当該年度の中間・事後評価委員会においても本研究課題の継続について「可」との評価であった。今後は早期第Ⅱ相臨床試験の終了、ならびにその後の製薬企業への技術移転により併用療法における新規ペプチドワクチンの実用化に向け、より一層努力し取り組んでいく。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201332012Z