がん幹細胞を標的とした化学療法及び放射線療法のPARG阻害剤による効果増強法の実用化研究

文献情報

文献番号
201332004A
報告書区分
総括
研究課題名
がん幹細胞を標的とした化学療法及び放射線療法のPARG阻害剤による効果増強法の実用化研究
課題番号
H23-実用化(がん)-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
益谷 美都子(独立行政法人国立がん研究センター 研究所 ゲノム安定性研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 小泉 史明(独立行政法人国立がん研究センター 研究所 遺伝医学研究分野)
  • 井上 謙吾(公益財団法人静岡県産業振興財団ファルマバレーセンター)
  • 大川原 正(熊本保健科学大学)
  • 松野 研司(岡山大学院医歯薬学総合研究科)
  • 永松 朝文(熊本保健科学大学 保健科学部)
  • 津下 英明(京都産業大学 総合生命科学部)
  • 石川 吉伸(静岡県立大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(がん関係研究分野)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
40,734,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
PARG機能阻害は化学及び放射線療法の増感標的として有用であることが示唆されつつある。本研究では化学療法及び放射線療法の増感剤としてポリ(ADP-リボース)分解酵素である(PARG)阻害剤の実用化に向けて臨床開発化合物の開発と薬力学的マーカー、効果予測(薬効)マーカーを検討し、臨床試験で有効性を検証するための基盤とする。昨年度までに有効なPARG阻害剤の開発のため、cell-free assay系、cell-based assay系、QSAR解析など分子設計の手法を確立し、異なるケモタイプのPARG阻害を示すリード化合物を得た。
研究方法
今年度、物性の改善と活性の増強を指標に構造最適化を進めるためにリード化合物の誘導体の合成展開を進めた。Cell-baseでのPAR集積と細胞増殖抑制活性が高い化合物へ絞り込むため、分子設計の手法を用いて得られた化合物についてcell-free assayによるPARG阻害活性の評価を行った。さらにPARの蓄積を指標にするcell-based assayで化合物を評価し、化合物の作用機序を検討した。良好なPARG阻害活性を示す化合物についてヒトがん細胞株を用いたマウス移植腫瘍モデルでの薬効試験を行った。開発候補化合物との共結晶の構造情報を取得する準備も進めた。また、PARG阻害剤の標的解析を行い、薬力学的マーカー、効果予測(薬効)マーカーについて引き続き検討を進めた。同時に網羅的探索系によりPARG機能阻害と合成致死性を示す遺伝子の検索を行い、得られた標的遺伝子について機構解析を行った。
結果と考察
本研究では、リード化合物からの構造至適化を進め、細胞レベルで有効なPARG阻害剤を見出した。これらの化合物の作用機序はin vivoの PAR集積、細胞増殖阻害、apoptosis誘導などの薬理学的作用であることを示した。さらに移植腫瘍モデルで抗腫瘍効果を確認した。抗腫瘍薬剤としてのPARG阻害剤のスクリーニングに本研究で実施した化合物スクリーニング法が有用であることが実証された。また分子設計を用いた手法の活用によりこれまでよりも効率的なPARG阻害剤のスクリーニングが実施できることが実証された。今後、同スクリーニング法を用いて、より良好な候補化合物を選定し、臨床的意義の高い効果予測(薬効)マーカーの検討を進める。
結論
本研究では、高活性でdrug-likeと考えられ、良好な薬効プロファイルを示す低分子PARG阻害剤を見出した。今後更に物性の改善を進め、臨床応用可能なマーカーの同定と検証を進める。有望な化合物について非臨床試験を行い、臨床開発化合物を決定し、有効ながん種の特定と特定がん種に対するPhase IまたはPhase 0試験を計画する。

公開日・更新日

公開日
2016-07-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201332004B
報告書区分
総合
研究課題名
がん幹細胞を標的とした化学療法及び放射線療法のPARG阻害剤による効果増強法の実用化研究
課題番号
H23-実用化(がん)-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
益谷 美都子(独立行政法人国立がん研究センター 研究所 ゲノム安定性研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 小泉 史明(国立がん研究センター 研究所 遺伝医学研究分野)
  • 井上 謙吾(公益財団法人静岡県産業振興財団ファルマバレーセンター)
  • 大川原 正(熊本保健科学大学 保健科学部)
  • 松野 研司(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 小郷 尚久(静岡県環境衛生科学研究所)
  • 永松 朝文(熊本保健科学大学 保健科学部(平成25年度より)、岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 津下 英明(京都産業大学 総合生命科学部)
  • 長田 智治(三菱化学メディエンス株式会社)
  • 石川 吉伸(静岡県立大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(がん関係研究分野)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
DNA修復応答経路を標的とした治療法の開発が、がん幹細胞をより選択的に阻害する可能性が考えられる。DNA 修復応答に関わるポリ(ADP-リボース)の主な分解酵素ポリ(ADP-リボース)グリコヒドロラーゼ(PARG) は抗がん剤標的候補として国外で注目されつつあるが、臨床応用に有効な阻害剤は開発されていない。また、PARG 阻害剤は抗がん剤としての創薬開発は本邦では皆無であり、化学療法及び放射線療法の増感剤としての実用化の研究開発の必要性が高い。そこで本研究では、PARG阻害剤の化学療法及び放射線療法の増感剤としての実用化に向けた研究開発を行い、薬力学的マーカー、効果予測(薬効)マーカーを平行して開発することを目的とする。
研究方法
本研究ではPARG阻害剤の開発のためにcell-free assay系、cell-based assay系を検討し、約1万化合物のHTS、およびヒット化合物の周辺誘導体(フォーカスドライブラリー)のスクリーニングから、PARG阻害活性、PAR集積作用、細胞増殖抑制作用をもつ多数の化合物を選択した。さらに、QSAR解析など分子設計の手法を駆使した構造の最適化と誘導体合成を通じて作製した化合物を評価し、物性の改善と活性の増強を指標に構造最適化をすすめた。さらにPARの蓄積を指標にするcell-based assayで化合物を評価し、化合物の作用機序を検討した。良好なPARG阻害活性を示す化合物についてヒトがん細胞株を用いたマウス移植腫瘍モデルでの薬効試験を行った。開発候補化合物との共結晶の構造情報を取得する準備も進めた。また、PARG阻害剤の標的解析を行い、薬力学的マーカー、効果予測(薬効)マーカーについて検討を進めた。網羅的探索系によりPARG機能阻害と合成致死性を示す遺伝子の検索についても研究を進め、得られた標的遺伝子について機構解析を行った。
結果と考察
本研究では、有効なPARG阻害剤の開発のため、cell-free assay系、cell-based assay系、QSAR解析など分子設計の手法を確立した。これらの手法を用いてPARG阻害剤として、リード化合物を複数見いだした。構造至適化を進め、細胞レベルで有効なPARG阻害剤を見出した。これらの化合物の作用機序はin vivoの PAR集積、細胞増殖阻害、apoptosis誘導などの薬理学的作用であることを示した。さらに移植腫瘍モデルで抗腫瘍効果を確認した。抗腫瘍薬剤としてのPARG阻害剤のスクリーニングに、本研究で実施した化合物スクリーニング法は有用であることが実証された。また分子設計を用いた手法の活用によりこれまでよりも効率的なPARG阻害剤のスクリーニングが実施できることが実証された。今後、より良好な候補化合物を選定する。網羅的手法により得られた効果予測マーカー標的遺伝子候補にはがんで機能欠失が認められるものがあり、さらに臨床的意義を検討し、PARG阻害剤が有効ながん種の特定を検討する。
結論
本研究では、高活性でdrug-likeと考えられ、良好な薬効プロファイルを示す低分子PARG阻害剤を見出した。今後更に物性の改善を進め、臨床応用可能なマーカーの同定と検証の研究を進める。有望な化合物について非臨床試験を行い、総合的な観点から、臨床開発候補化合物への絞込みとバックアップ化合物取得へと研究を進め、有効ながん種の特定と特定がん種に対するPhase IまたはPhase 0試験を計画する。

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201332004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
がん幹細胞を標的とするがん治療に有効なPARG阻害剤の開発のため、cell-free assay系、cell-based assay系、QSAR解析など分子設計の手法を確立し、PARG阻害を示す3つのケモタイプのリード化合物を見いだした。さらに構造最適化を進め、明らかなアポトーシス誘導能を有し、ヒトがん細胞株を用いた移植腫瘍モデルでの薬効を示す候補化合物が得られた。また、PARG阻害剤の効果予測(薬効)マーカーの検索を進め、複数の候補遺伝子を見いだした。
臨床的観点からの成果
臨床的観点からは具体的な成果の段階には至っていないが、今後、PARG阻害剤の物性の改善に向けて構造最適化を進め、総合的に臨床開発候補化合物を絞り込み、PARG阻害剤の効果予測(薬効)マーカーの絞り込みを行うことで、PARG阻害薬の特定がん種に対するPhase I試験またはPhase 0試験の実施を計画できると考えられる。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
本研究において新規バイオマーカーと疾患モデルの開発と臨床試験の合理化の例を示すことは、抗がん剤開発過程の効率化の可能性を内外に示すこととなると考えられる。
その他のインパクト
PARGの阻害は、抗がん剤の新規標的と考えられ、その標的の新規性、既存の抗がん剤との併用等、難治性固形がんの有用な治療法として新しいがん患者層の発掘とその有効な治療法となる可能性を持つ。 

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
ポリフェノール化合物
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2013-24067
発明者名: 益谷 美都子、小泉 史明、小寺 康夫、大川原 正、ラフィクル・イスラム、 井上 謙吾
権利者名: 熊本保健科学大学、ファルマバレープロジェクト支援機構
出願年月日: 20130212
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shirai H, Poetsch AR, Gunji A, et al.
PARG dysfunction enhances DNA double strand break formation in S-phase after alkylation DNA damage and augments different cell death pathways.
Cell Death Dis , 4 , e656-  (2013)
10.1038/cddis.2013.133.
原著論文2
Nakadate, Y., Kodera, Y., Kitamura Y et al.
Silencing of poly(ADP-ribose) glycohydrolase sensitizes lung cancer cells to radiation through the abrogation of DNA damage checkpoint.
Biochem Biophys Res Commun , 441 (4) , 793-798  (2013)
10.1016/j.bbrc.2013.10.134.
原著論文3
Okajima Y, Yoshida T, Fujimori H et al.
Rapid degradation of poly(ADP-ribose) after injection into the mouse bloodstream.
Biol Pharm Bull , 36 (3) , 462-466  (2013)
原著論文4
Shirai H, Fujimori H, Gunji A et al.
Parg deficiency confers radio-sensitization through enhanced cell death in mouse ES cells exposed to various forms of ionizing radiation.
Biochem Biophys Res Commun , 435 (1) , 100-106  (2013)
10.1016/j.bbrc.2013.04.048.

公開日・更新日

公開日
2016-06-06
更新日
-

収支報告書

文献番号
201332004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
44,400,000円
(2)補助金確定額
44,115,116円
差引額 [(1)-(2)]
284,884円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 22,598,989円
人件費・謝金 13,613,556円
旅費 1,184,050円
その他 3,052,521円
間接経費 3,666,000円
合計 44,115,116円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-09-10
更新日
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