文献情報
文献番号
201332003A
報告書区分
総括
研究課題名
固形がん幹細胞を標的とした革新的治療法の開発に関する研究
課題番号
H23-実用化(がん)-一般-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
森 正樹(大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 片岡一則(東京大学 大学院工学系研究科)
- 西山伸宏(東京工業大学 資源化学研究所)
- 中内啓光(東京大学医科学研究所)
- 佐谷秀行(慶應義塾大学医学部 先端医科学研究所)
- 落谷孝広(国立がん研究センター研究所)
- 山田泰広(京都大学 iPS細胞研究所)
- 石井秀始(大阪大学 大学院医学系研究科 消化器癌先進化学療法開発学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康長寿社会実現のためのライフ・イノベーションプロジェクト 難病・がん等の疾患分野の医療の実用化研究(がん関係研究分野)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
115,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
癌は我が国の死亡原因の第1位である。消化器癌はその大半を占め、その根治は国民的喫緊の課題である。癌医療改善の加速施策に資するために、固形癌幹細胞を標的とする革新的な治療技術の研究開発を提案する。固形癌幹細胞は周囲の微小環境(ニッチ)中に半休眠状態で生存し、そこから大量の娘癌細胞が発生する。現行の治療法では娘癌細胞のみを殺して副作用が増強し、残存する微量癌幹細胞から再発・転移が発生する点が問題である。近年、新しいリプログラミング化技術の開発により、細胞の性質を根本から大きく変換させることが実現可能となってきた。このリプログラム化技術を用いてアプローチする。
研究方法
直接『固形癌幹細胞』に対して、新技術を応用し治療感受性を格段に増感させ細胞死を誘導する。癌幹細胞をより高精度に標的化するために表面抗原分子や代謝特性の解析を進める。また『宿主細胞』に新技術で操作を加えて、癌幹細胞に対して間接攻撃する方法を開発し悪性細胞を根源する。この宿主細胞の操作に際しては二次的癌化の回避等を配慮した新しい技術の開発が望まれる。具体的なツールとしてマイクロRNAおよびナノ分子の基盤整備を進め、新鮮臨床材料を用いた研究を開始し、全体計画の完成時期に於ける前臨床研究から臨床応用への橋渡しのための基盤を構築する。特に平成25年度は癌代謝として重要な細胞表面マーカーを標的とした創薬及び育薬を展開した。
結果と考察
第3次対がん総合戦略研究事業で培った様々な実績を生かし、また東日本を含むオールジャパン体制でわが国の叡智を集結し、難病やがん等の疾病の原因究明や診断法・治療法・予防法の開発、再生医療技術の臨床実用化のための研究等を推進した。サイズの異なるミセルのがん組織浸透性を評価し、ミセルの粒径が重要であることが示された。ヒト抗原特異的T細胞クローンをリプログラミングに成功した。癌幹細胞マーカーの細胞内ドメインと相互作用するタンパク質を同定した。癌幹細胞を抑制する効果の有るmicroRNAを同定した。大腸腫瘍由来が寄与していることを明らかにした。網羅的遺伝子発現・マイクロRNA発現解析のデータに基づき、細胞周期静止期癌幹細胞を安全・効果的に標的化し撲滅するための基盤を構築した。以上の各新技術を活用することにより難治度の高い消化器癌の癌細胞に対して、癌幹細胞側及び宿主細胞側の双方を標的とした革新的技術の基盤を構築し、迅速な臨床応用に向けて創薬基盤を具体化させた。癌代謝の分子標的としてヒアルロン酸などを作用点とする創薬及び育薬を展開し革新的な医療の進捗を得た。
結論
難治性消化器癌の克服のために、癌幹細胞と呼ばれる治療抵抗性細胞の生物学的弱点を先端的基礎研究によって明らかにし、それらの所見を強力な共同研究体制によって融合、増幅することによりトランスレーショナル研究を推進し、最終的には革新的治療法の開発とその実施を達成することに向けて革新的な医療技術の基盤を構築した。3年間の事業の最終年度として応用展開を図るとともに、次年度以降も臨床応用に向けた更なる展開の基盤を構築できた。
公開日・更新日
公開日
2016-07-14
更新日
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