効果的な熱中症予防のための医学的情報等の収集・評価体制構築に関する研究

文献情報

文献番号
201330026A
報告書区分
総括
研究課題名
効果的な熱中症予防のための医学的情報等の収集・評価体制構築に関する研究
課題番号
H24-健危-指定-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
三宅 康史(昭和大学 医学部救急医学)
研究分担者(所属機関)
  • 横田 裕行(日本医科大学 大学院医学研究科 外科系救急医学分野)
  • 鶴田 良介(山口大学 大学院医学系研究科 救急・生体侵襲制御医学分野)
  • 北原 孝雄(北里大学 医学部救命救急医学)
  • 登内 道彦((財)気象業務支援センター振興部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2012年(平成24年度)から、厚労省の指定を受け本邦における熱中症の実態を明らかにするために、毎年夏の全国調査を可能とするシステムの構築、混乱している熱中症の診断基準、重症度分類の見直しと策定、その国際基準としての整合性の検討、臨床現場で役立つ熱中症の診断と診療に関するガイドラインの策定、診断や治療に寄与する分子マーカーを同定するための詳細な観察研究調査の実施、当日の熱中症患者の発生数と重症度を把握することで正確な熱中症注意報発令を可能とするための気象予報と連動した研究、これらの開発に向けての準備が2年目の目的となる。
研究方法
本邦における熱中症の実態を把握するために、2013年夏季に全国の救急医療機関に依頼して、熱中症症例の診察後に、A4版1枚のFAX用紙に年齢、性別、重症度、発生地域などをチェック方式で記入し、当日24時までにFAXし、結果を翌日午前までに集計、午後には厚生労働省の熱中症情報のHPに掲載できる手法を開発し、その有効性を検討した。
また2014年夏期3ヵ月間の第5回目の日本救急医学会熱中症に関する委員会が主導する全国的な熱中症症例の詳細な疫学調査を行うにあたり、webを用いた症例登録システムのプロトタイプを開発した。
熱中症の診断・重症度分類につながるスコア化について、HeatstrokeSTUDY2012の結果から、意識障害の程度、肝機能、腎機能、DIC基準を点数化し、点数により重症度を分類して、予後との相関を検討した。

結果と考察
2013年夏の厚生労働省熱中症の即時的患者発生状況については同省ホームページから得られる。
 また、2013年12月15日~2014年3月15日の3ヵ月間にわたって全国の救命救急センター、大学および市中病院救急科(ER)で収集された低体温症例(Hypothermia STUDY2014)のwebを用いたデータは現在最終的な集計が進行中である(なお2011年の低体温症の全国調査の最終報告は日本救急医学会熱中症に関する委員会のHPからPDFで無料ダウンロードが可能となっている)。
 重症度のスコア化と新たな診断基準、マウスを用いた熱中症モデルの作成と治療の違いによる病態の変化、診断と予後予測に効果的な分子マーカーの発見に関しては、各分担研究者による報告を参照いただきたい。
 FAXを用いて入院した熱中症患者(一定レベル以上の重症度を要すると考えられる)の情報を翌日午後には公表できるシステムは、医師診察後の情報であり、熱中症の確定診断とその重症度が正確である点で、総務省消防庁の集計する搬送表に基づく救急車搬送数とは異なる。一方で、全国すべての救急医療機関からの情報を網羅するものではない点で、限界もある。そのため2つの臨床研究データの近似した部分を模索し、共通性のある部分と欠点を補える部分を考慮した上で、即時性と正確性を兼ね備えた新しい熱中症患者発生情報の提供が最終的な目標となる。ここに気象専門家を分担研究者として加え、気象予報と組み合わせることで、地域別に翌日の熱中症警報の発令基準の策定を試みることが可能となる。
もう一つは、重症例のデータを集約することで、熱中症の診断基準、重症度分類、治療ガイドラインの策定に向けての診断根拠となる分子マーカー、重症度分類の鍵となるバイタルサインや採血結果などの病態も把握、治療ガイドラインの根拠となりうるエビデンスの構築を、分担研究者とともに検討していくこととなる。また、医療機関における研究の承認に関する諸問題、データ入力時の簡便性と安全性、収集されたデータの安全な管理など、今後さらに向上させていかねばならない部分も多々残っている。
結論
熱中症患者の発生を正確に把握し、短時間でその傾向を予測することで、熱中症の早期警戒警報を正しく発令できるシステム構築は重要であり、今後も検討を重ねていく必要がある。
また、低予算で安全・簡便な症例登録が可能になるような検討も必要である。
今後も継続的な症例登録の手法を確立することで、熱中症そのものの病態把握、診断能力の向上、予防・応急処置、治療などへの寄与が見込まれる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201330026Z