疾患に応じた適正な医療のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
199800306A
報告書区分
総括
研究課題名
疾患に応じた適正な医療のあり方に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
大塚 俊男(国立精神・神経センター精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤弘人(国立医療・病院管理研究所)
  • 牛島定信(東京慈恵会医科大学)
  • 白倉克之(国立療養所九里浜病院)
  • 大川匡子(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 岸康宏(日本医科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
向精神薬が導入されて40年が経過した現在、精神医療のなかにも多様な治療システムを創出するに至っているが、それぞれのシステムがお互いの関連のなかで有効に機能しているのかという質を問う問題が生じているが,その質を測定する方法が確立されているわけではない。また、工業化、都市化、情報化がもたらす急速な社会変動は児童思春期の情緒的諸問題、成人の自殺問題、アルコールや睡眠障害に関する深刻な諸問題をきたしているが、わが国におけるそれらの実態、それらに対する対応のあり方となると今なお不明な点が多い。本研究では、これらに関する基礎資料を得ることが求められた。
研究方法
精神医療の質測定に関する研究では、31の精神科病院の退院患者と職員を対象に、国際的に標準化されている指標を用いた調査を行った。児童思春期問題に関する研究では、精神保健福祉センターを対象にした調査を実施すべく、研究協力者に同センターの関係者にも参加してもらう一方で、複数の関係者からの日常の活動報告をうけた。その上で全国的に調査を行なった。それらの結果を踏まえて次年度に行う本格的な調査のための用紙作成を行った。前後、6回に亙る研究会がもたれた。アルコール依存症に関する研究では、10の専門施設に入院した患者157名を対象に臨床特性、受けた治療法、外来治療等と3ヶ月の予後調査が中間的になされた。睡眠障害に関する研究では、住民台帳により無作為に抽出した日本国内に居住する満20歳以上の男性・女性4,000名を対象に、人口統計データ(社会的項目)と健康状態、健康指向、生活習慣、睡眠などの項目を含めた合計59項目からなる質問紙を用いて、調査員による個別面接を行った。有効回収数は3,030名、有効回収率75.8%であった。この調査は財団法人健康体力づくり事業財団により行われたものである。この中から睡眠障害および社会的要因、生活習慣、心理的要因を抽出し独自に分析を行った。自殺に関する研究では、1998年4月1日~同年12月31日まで日本医科大学付属病院高度救命救急センターに収容された自殺企図症例の検討を行った。このうち、精神科診断面接の行えた60症例について検討を行った。
結果と考察
医療の質測定研究では、退院患者の特性調査(回収率97%)では入院時と退院時では機能レベルの改善が有意にみられ、職員の満足度(回収率91%)では61%が継続して同じ部署に勤務し、仕事上でけがや身体的危害の恐れを感じたとしたものが81%出会った.欧米の同じ方向の結果で、この調査票はわが国においても使用可能であることが示唆された。児童思春期問題では、関係者からの事情聴取から児童思春期問題の対応ついては施設によってさまざまであること、換言すると、非常に積極的な施設とほとんど対応策をもっていない施設を両極にさまざまあることが明らかになった。例えば、思春期の定義そのものに大きな幅があるのである。それを踏まえて、次年度に計画される総合的な調査のための「調査用紙」を作成した。加えて、精神保健センターの現場の事情からみて調査の範囲にも限界があり、50施設のなかから10施設を選んで調査することとした。アルコール依存に関する研究では、3ヶ月予後の調査では入院・外来治療において予後と関連があるとされたのは抗酒剤の服用の有無だけであったが、中間報告であり、臨床特性等との相関を検討する機会がなかったので、目標の1年後予後調査に期待をつなぐことになった。睡眠障害に関する研究では、わが国の一般人口における睡眠障害の発
生率が欧米の先進国と同様に極めて高いことから、国家的取り組みの必要性を示唆し、こうした政策を立案するにあたり、メンタルヘルスの観点が不可欠であることが求められた。自殺に関する研究では、1998年4月1日~同年12月31日まで日本医科大学付属病院高度救命救急センターに収容された自殺企図症例の検討を行った。このうち、精神科診断面接の行えた60症例について検討を行った。いままでの報告同様にすべての自殺企図症例に対して精神科診断をつけることが可能であった。その内訳は、精神病性障害(精神分裂病など)が15症例、大うつ病が18症例、適応障害が25症例、その他2症例であった。適応障害の中には、閾値下うつ病(小うつ病)も含まれており(11症例が自殺企図を除いた症状においても小うつ病の診断基準を満たす)、うつ病性障害による自殺企図が最も多かった。うつ病は治療可能な疾患であるため、うつ病に対する啓蒙を行うことで自殺企図を防ぐことが可能である点があらためて示唆された。また、精神病性障害の症例においても、2症例は病的異常体験(幻聴や妄想)に左右されたわけではなく、うつの心性が自殺企図に強く関与していた。 
結論
精神医療の質測定研究では、欧米の先進国ですでに標準化している指標がわが国においても有用であるとの感触を得たことにより、病院側が簡便活継続的に自院の医療の質が測定できるように調査方法を改定して、利便性を高める方向が示された。児童思春期問題研究では、対応の仕方には施設によりまちまちであることが判明すると同時に、次年度の調査研究の準備が整った。アルコール依存研究では、アルコール依存症の治療で3ヶ月予後に関連あるとされたのは抗酒剤の服用の有無だけであった。睡眠障害研究では、わが国における睡眠障害が欧米の先進諸国並に高い水準にあることから、国家的取り組みの必要性が説かれるとともに、その際のメンタルヘルスの視点の重要性が力説された。自殺に関する研究では、第三次救命救急に搬送される患者のすべてに何らかの精神科診断面接が可能であり、その大半がうつ病性心性と密接に関連したものであったことが示唆され、それに基づく自殺予防策の策定の必要が説かれた。

公開日・更新日

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