文献情報
文献番号
201330012A
報告書区分
総括
研究課題名
地域保健対策におけるソーシャルキャピタルの活用のあり方に関する研究
課題番号
H25-健危-一般-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
藤内 修二(大分県中部保健所 )
研究分担者(所属機関)
- 笹井 康典(大阪府枚方保健所)
- 櫃本 真聿(愛媛大学医学部附属病院総合診療サポートセンター)
- 福島 富士子(国立保健医療科学院)
- 尾島 俊之(浜松医科大学健康社会医学講座)
- 田中 久子(女子栄養大学公衆栄養学)
- 村嶋 幸代(大分県立看護科学大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
住民組織活動を通したソーシャルキャピタル(以下,SC)の醸成・活用における課題を明らかにし,その効果的な育成・支援・協働に向けての「手引き」を作成するとともに,その実践ができる地域保健人材の育成プログラムを開発する。
研究方法
1)全国市区町村を対象に,住民組織との協働状況についてのメール調査を実施した。
・主要な住民組織の会員数,会員の年齢構成,会員数の増減,活動の内容,活動の評価
・各分野における住民組織との協働の有無,学校や職域における地域活動との協働状況
・住民組織との協働プロセスをエンパワメントの視点で評価する設問
・住民組織活動が,地域のSC醸成につながっているか
・健康増進計画等の保健福祉計画への関与
・市民活動支援担当部署の有無と担当部署との連携状況
・住民組織活動の育成・支援・協働担当職員の研修機会の有無,指針等の有無
・住民組織の育成・支援・協働における保健所の支援
2)先進事例に対して訪問調査を行い,エンパワメントの視点で協働プロセスを分析した。
3)既存の住民組織の育成・支援・協働にかかる指針や手引き等の分析を行った。
・主要な住民組織の会員数,会員の年齢構成,会員数の増減,活動の内容,活動の評価
・各分野における住民組織との協働の有無,学校や職域における地域活動との協働状況
・住民組織との協働プロセスをエンパワメントの視点で評価する設問
・住民組織活動が,地域のSC醸成につながっているか
・健康増進計画等の保健福祉計画への関与
・市民活動支援担当部署の有無と担当部署との連携状況
・住民組織活動の育成・支援・協働担当職員の研修機会の有無,指針等の有無
・住民組織の育成・支援・協働における保健所の支援
2)先進事例に対して訪問調査を行い,エンパワメントの視点で協働プロセスを分析した。
3)既存の住民組織の育成・支援・協働にかかる指針や手引き等の分析を行った。
結果と考察
1)932市区町村から有効回答を得た(回収率53.5%)。
2)南アルプス市,見附市,岡山市,玖珠町等,12市町村への訪問調査を行った。
3)15県から提供を受けた住民組織の育成・支援・協働にかかる指針等の分析を行った。
先進事例の分析から,住民組織活動を通じたSCの醸成・活用には,市内全域に存在し,行政から「地域の情報」と「活動の場」を提供され,住民からは「信用」を付与された住民組織を活動の基盤(プラットフォーム)として展開することが有効と考えられた。
こうした活動の基盤となりうる健康づくり推進員等を有する自治体は58.0%,食生活改善推進員等は87.3%,愛育班等は9.8%,母子保健推進員等は29.4%で,いずれも都道府県によって設置率や活動内容,その評価に大きな差異を認めた。
住民組織と協働している平均分野数は,都道府県により1.7分野から6.6分野まで4倍の格差を認め,協働分野が多い自治体ほど,住民組織活動が地域住民の絆を深めていた。
ほとんどの組織で,活動を通して地域住民の絆が深まっていると回答した自治体は15.8%で,半分以上の組織が該当すると回答したのは13.5%であった。「ほとんど」と「半分以上」を合わせた自治体の割合の都道府県別の集計では,最低0%から,最高62.5%まで幅広く分布していた。
住民組織との協働プロセスでは,地域の健康課題の共有,活動目的等の共有,活動のやりがいと成果のアピール,保健福祉計画の推進への関与,住民組織間の連携,健康づくり推進協議会等が機能していることが,SCの醸成に重要であった。
こうした住民組織との協働プロセスに,有意な影響を及ぼしていた行政の協働体制として,自治体の保健事業におけるSCの位置づけ,住民組織への地域の健康課題についての情報提供(特に,住民の生活実態とその課題),庁内他部署との協議機会,住民組織への財政的な支援,住民組織の育成・支援・協働に関する研修機会や指針等の有無が挙げられ,県型保健所の支援が,協働体制の構築に寄与していた。
住民組織の支援・協働に関する研修機会がある自治体は25.6%で,住民組織の育成・支援に関する指針等がある自治体はわずか6.9%であった。
分野を問わず,総合的な視点で住民活動を支援する部署(市民活動支援課,まちづくり推進課等)が設置されているのは,44.6%で,人口規模が大きな自治体ほど,設置率が高く,人口10万以上では8割の自治体で設置されていた。保健担当部署がこうした部署と「常時,密に連携している」自治体は2.1%と少なく,「必要に応じて連絡している」自治体が70.7%であった。この連携状況は人口規模によらず低調であった。
これらの結果には都道府県によって大きな差を認めたことから,県毎の「ベンチマークシート」を作成し,各都道府県の住民組織との協働状況の「見える化」を試みた。
2)南アルプス市,見附市,岡山市,玖珠町等,12市町村への訪問調査を行った。
3)15県から提供を受けた住民組織の育成・支援・協働にかかる指針等の分析を行った。
先進事例の分析から,住民組織活動を通じたSCの醸成・活用には,市内全域に存在し,行政から「地域の情報」と「活動の場」を提供され,住民からは「信用」を付与された住民組織を活動の基盤(プラットフォーム)として展開することが有効と考えられた。
こうした活動の基盤となりうる健康づくり推進員等を有する自治体は58.0%,食生活改善推進員等は87.3%,愛育班等は9.8%,母子保健推進員等は29.4%で,いずれも都道府県によって設置率や活動内容,その評価に大きな差異を認めた。
住民組織と協働している平均分野数は,都道府県により1.7分野から6.6分野まで4倍の格差を認め,協働分野が多い自治体ほど,住民組織活動が地域住民の絆を深めていた。
ほとんどの組織で,活動を通して地域住民の絆が深まっていると回答した自治体は15.8%で,半分以上の組織が該当すると回答したのは13.5%であった。「ほとんど」と「半分以上」を合わせた自治体の割合の都道府県別の集計では,最低0%から,最高62.5%まで幅広く分布していた。
住民組織との協働プロセスでは,地域の健康課題の共有,活動目的等の共有,活動のやりがいと成果のアピール,保健福祉計画の推進への関与,住民組織間の連携,健康づくり推進協議会等が機能していることが,SCの醸成に重要であった。
こうした住民組織との協働プロセスに,有意な影響を及ぼしていた行政の協働体制として,自治体の保健事業におけるSCの位置づけ,住民組織への地域の健康課題についての情報提供(特に,住民の生活実態とその課題),庁内他部署との協議機会,住民組織への財政的な支援,住民組織の育成・支援・協働に関する研修機会や指針等の有無が挙げられ,県型保健所の支援が,協働体制の構築に寄与していた。
住民組織の支援・協働に関する研修機会がある自治体は25.6%で,住民組織の育成・支援に関する指針等がある自治体はわずか6.9%であった。
分野を問わず,総合的な視点で住民活動を支援する部署(市民活動支援課,まちづくり推進課等)が設置されているのは,44.6%で,人口規模が大きな自治体ほど,設置率が高く,人口10万以上では8割の自治体で設置されていた。保健担当部署がこうした部署と「常時,密に連携している」自治体は2.1%と少なく,「必要に応じて連絡している」自治体が70.7%であった。この連携状況は人口規模によらず低調であった。
これらの結果には都道府県によって大きな差を認めたことから,県毎の「ベンチマークシート」を作成し,各都道府県の住民組織との協働状況の「見える化」を試みた。
結論
先進事例への訪問調査から,優れた住民組織活動は,「他者への信頼」,地域における住民間の「ネットワーク」,「互酬性の規範」を形成し,ソーシャルキャピタルの醸成につながっていると考えられた。
全国市区町村調査から,エンパワメントの視点で住民組織と協働している自治体ほど,ソーシャルキャピタルの醸成・活用につながっていると考えられたが,協働のプロセス,協働体制,県型保健所の支援には大きな地域格差を認めた。
こうした地域格差を是正し,全体の底上げを図るために,社会環境の変化を踏まえた,住民組織の育成・支援・協働にかかる指針や手引きの作成とその手引きを活用した研修プログラムの開発が急務と考えられた。
全国市区町村調査から,エンパワメントの視点で住民組織と協働している自治体ほど,ソーシャルキャピタルの醸成・活用につながっていると考えられたが,協働のプロセス,協働体制,県型保健所の支援には大きな地域格差を認めた。
こうした地域格差を是正し,全体の底上げを図るために,社会環境の変化を踏まえた,住民組織の育成・支援・協働にかかる指針や手引きの作成とその手引きを活用した研修プログラムの開発が急務と考えられた。
公開日・更新日
公開日
2018-06-05
更新日
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