生活衛生関係営業の振興による商店街の活性化とこれを通じた衛生水準の向上に関する研究

文献情報

文献番号
201330010A
報告書区分
総括
研究課題名
生活衛生関係営業の振興による商店街の活性化とこれを通じた衛生水準の向上に関する研究
課題番号
H24-健危-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
松本 邦愛(東邦大学 医学部 社会学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 友紀(東邦大学 医学部 社会学講座 )
  • 瀬戸 加奈子(渡辺 加奈子)(東邦大学 医学部 社会学講座 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,858,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生活衛生関係営業(以下 「生衛業」)は、多くが中小零細であり、経営基盤も脆弱なものであるが、衛生水準の向上と地域の振興の観点から商店街の中心的な役割を担う。本研究は、事例研究によって商店街活性化策の中で生活衛生関連営業がどのような役割を果たしているか明らかにするとともに、官庁統計を使用して生衛業の状況と貢献を定量的に把握し、効果的な生衛業の支援策について提言をまとめることを目的とする。
研究方法
研究は、文献レビュー、商店街の類型化と生衛業の概念整理、政府統計を用いた生衛業の実態把握、産業連関表を使った生衛業の波及効果の推計、国内の商店街活性化の事例研究、諸外国都市における聞き取り調査、官庁統計と地域活性化指標を用いた定量分析、都道府県生活衛生営業指導センターに対するヒアリング調査、の8つから構成される。
(倫理面への配慮) 本研究では、個人情報を直接取り扱うこと、または生衛業に直接介入する状況は想定されない。もし、そのような事態が生じた場合には、大学倫理委員会に研究 内容について諮り、個人情報保護法、各種研究に関わるガイドラインを厳守する。なお官庁統計の個票を使用する場合には、本研究の趣旨に合わせて公式の使用 申請を行い、個人を特定可能な情報を除いたデータを入手する。更に、入手されたデータはネットワークから独立したセキュリティの高いコンピューターで管理 し、規定に則って執行する。
結果と考察
政府統計を用いた生衛業の実態把握では、いくつかの都市を取り上げGIS(地理情報システム)での分析を行った。石巻市の2005年国勢調査と2010年国勢調査を用いた500メートル・メッシュでの分析では、若年の人口は蛇田地区を中心とした郊外で多く増えているのに対し、石巻駅周辺では減少している。さらに、事業所・企業統計から洗濯・理美容・浴場業の事業所データを観察すると、多くの事業者がまだ石巻駅周辺に残っており、人口変化について行っていないことが観察できた。
 国内商店街の事例調査では、超広域型・観光型商店街の例として、京都三条名店街商店街、向日市激辛商店街、佐世保市四ヶ町商店街、長浜市黒壁商店街、高松市丸亀町商店街、那覇国際通り商店街、等において、生衛業者にヒアリング調査を行った。また近隣型・地域型商店街として大田区梅屋敷商店街、江東区森下商店街、佐世保市トンネル横丁、石巻市ことぶき商店街、那覇栄町商店街においてヒアリングを行った。広域型商店街・超広域型商店街・観光型商店街においては、商店街の活性化が他地域からの集客に拠るため、商店街の活性化でむしろ生衛業は飲食業、一部美容業などの業種に限定されてしまい、他の業種は人通りの多い商店街から外れた地域への移転がみられることが明らかとなった。それに対して、近隣型商店街、地域型商店街での生衛業の役割は大きく、特に、震災で津波の大きな被害を受けた石巻市ことぶき商店街の現地調査では、観光客など外からの集客を目的とした活性化ではなく、そこに居住する住民の利便性を考えて生衛業を取り込んだコンパクト・シティ構想による復興計画が立てられていることが明らかになった。
諸外国都市における聞き取り調査では、特に日本と同様高齢化の進む台湾の状況が参考になった。台北市西湖商圏では、駅舎が2階建ての建物に入る伝統的な市場と一体化しており、市場の中には伝統的な食肉販売業、飲食、理美容、クリーニングなど多くの生衛業が立地している。階上には高齢者デイケア施設が入っており、高齢化を前提とした街づくりがみられた。
これらの結果を踏まえると、伝統的な衛生水準の向上だけでなく地域のつながり等の新しい衛生の向上のためにも、生衛業の横の関係や地域の面の関係が重要であることが示唆され、都道府県指導センターへのヒアリングからも、これらの連携をすでに試みているセンターがあることが明らかになった。
結論
現代的な意味で衛生水準を考える場合、今までの衛生問題に加えて、環境問題や精神衛生などの新しい問題も考えなければならない。新しい衛生問題は、個々の営業者への介入に加えて地域での取り組みも重要となるため、生衛業種を囲む環境である商店街の役割も重要なものになる。生衛業種は多様な業種から成り立つが、マーケティング理論の手法を使っての類型化が可能であり、また経済への影響度の分析から大きく飲食業とその他の生衛業に分けて考えることが有効である。行政の役割においては、経営面と衛生面とを別々に指導するのでは、衛生水準の確保のための経営の安定という本来の業務があまりうまく機能しない。生活衛生関係営業の振興は、個々の経営主への経営指導だけでは十分に図られるものではない。生衛業の横の関係や地域の面の関係を前提にしなければ、活性化を図ることは困難であるだろう。

公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
-

文献情報

文献番号
201330010B
報告書区分
総合
研究課題名
生活衛生関係営業の振興による商店街の活性化とこれを通じた衛生水準の向上に関する研究
課題番号
H24-健危-一般-004
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
松本 邦愛(東邦大学 医学部 社会学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川 友紀(東邦大学 医学部 社会医学講座 )
  • 瀬戸 加奈子(渡辺 加奈子)(東邦大学 医学部 社会医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生活衛生関係営業(以下 「生衛業」)は、多くが中小零細であり、経営基盤も脆弱なものであるが、衛生水準の向上と地域の振興の観点から商店街の中心的な役割を担う。本研究は、事例研究によって商店街活性化策の中で生活衛生関連営業がどのような役割を果たしているか明らかにするとともに、官庁統計を使用して生衛業の状況と貢献を定量的に把握し、効果的な生衛業の支援策について提言をまとめることを目的とする。
研究方法
研究は、文献レビュー、商店街の類型化と生衛業の概念整理、政府統計を用いた生衛業の実態把握、産業連関表を使った生衛業の波及効果の推計、国内の商店街活性化の事例研究、諸外国都市における聞き取り調査、官庁統計と地域活性化指標を用いた定量分析、都道府県生活衛生営業指導センターに対するヒアリング調査、の8つから構成される。
結果と考察
経営学の概念を用いて、生衛業18業種及び商店街の概念整理を行った。その上で、産業連関表を用いてそれぞれの業種がどれくらいの乗数効果があるのか計算を行い、経済効果の業種別の違いを明らかにした。その結果、飲食業の乗数は1.84と他の業種(宿泊業1.44、洗濯・理容・美容・浴場業1.46)など と比べて高く、業種間の差異が明らかとなった。また、生活衛生業の補助金等の根拠となる衛生水準の向上に関して、伝統的な衛生の問題に加えて、積極的健康、精神衛生、環境・ゴミ問題をも含んだ「新しい衛生概念」をまとめ、その視点から生活衛生業 の役割についてまとめなおした。政府統計を用いた生衛業の実態把握では、いくつかの都市を取り上げGIS(地理情報システム)での分析を行った。石巻市の2005年国勢調査と2010年国勢調査を用いた500メートル・メッシュでの分析では、若年の人口は蛇田地区を中心とした郊外で多く増えているのに対し、石巻駅周辺では減少している。さらに、事業所・企業統計から洗濯・理美容・浴場業の事業所データを観察すると、多くの事業者がまだ石巻駅周辺に残っており、人口変化について行っていないことが観察できた。これらデータから得られた知見を実証するため、主として近隣型・地域型商店街にてヒアリング調査を行った。ヒアリングを行ったのは、京都市三条名店、向日市激辛商店街、長浜市黒壁商店街、高松市丸亀町商店街、那覇国際通り商店街、大田区梅屋敷商店街、江東区森下商店街、佐世保市トンネル横丁、石巻市ことぶき商店街、那覇栄町商店街等である。
諸外国都市における聞き取り調査では、特に日本と同様高齢化の進むイタリア、台湾で調査を行った。イタリア・ボローニャでは、旧市街の再生計画に関して、台湾では、高齢化を前提とした街づくりに関して、それぞれ調査を行った。
これらの結果を踏まえると、伝統的な衛生水準の向上だけでなく地域のつながり等の新しい衛生の向上のためにも、生衛業の横の関係や地域の面の関係が重要であることが示唆され、都道府県指導センターへのヒアリングからも、これらの連携をすでに試みているセンターがあることが明らかになった。
結論
現代的な意味で衛生水準を考える場合、今までの衛生問題に加えて、環境問題や精神衛生などの新しい問題も考えなければならない。新しい衛生問題は、個々の営業者への介入に加えて地域での取り組みも重要となるため、生衛業種を囲む環境である商店街の役割も重要なものになる。生衛業種は多様な業種から成り立つが、マーケティング理論の手法を使っての類型化が可能であり、また経済への影響度の分析から大きく飲食業とその他の生衛業に分けて考えることが有効である。行政の役割においては、経営面と衛生面とを別々に指導するのでは、衛生水準の確保のための経営の安定という本来の業務があまりうまく機能しない。生活衛生関係営業の振興は、個々の経営主への経営指導だけでは十分に図られるものではない。生衛業の横の関係や地域の面の関係を前提にしなければ、活性化を図ることは困難であるだろう。

公開日・更新日

公開日
2016-08-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201330010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は、商店街や地域コミュニティの活性化における生衛業の役割について、実証研究によって明らかにしたもので、事例研究に加えて、官庁統計を用いて極力定量的に状況を把握することを試みた。同様の研究はこれまで見当たらない。生衛業に関する政策の根拠となっている衛生水準の向上に関して、本研究では「新しい衛生」(積極的な健康、精神衛生、環境・ゴミ問題)を研究の核に据えており、現代的な意味を持たせたものとして考えることができる。
臨床的観点からの成果
該当しない。
ガイドライン等の開発
なし。
その他行政的観点からの成果
現在、生衛業の振興のための補助金に関して適切な審査・評価を求める声が強くなっている。しかしこれまでは、生衛業の重要性は説明されても、その振興がどのように地域住民の生活に影響するか説明したものはほとんどなく、補助金もどれが必要な支出でどれが不必要な支出であるか判断することが困難であった。本研究の研究代表者は、補助金の審査評価会構成員を2015年度まで兼ねており、研究成果を補助金審査の基準として生かした。
その他のインパクト
なし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
芳賀康浩、瀬戸加奈子、北澤健文、吉見憲二、森雅文、松本邦愛:商店街の活性化における生衛業の役割と課題.青山経営論集、49(1)、2014.7
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
2018-06-25

収支報告書

文献番号
201330010Z