文献情報
文献番号
201330008A
報告書区分
総括
研究課題名
地域保健活動の評価に関する研究
課題番号
H24-健危-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
緒方 裕光(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 奥村 貴史(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター)
- 藤井 仁(国立保健医療科学院 政策技術評価研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,320,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
地域保健活動を効果的に実施していくためには、効率化に向けた努力と評価による継続的な改善が欠かせない。また、このような平時からの効率的な活動の実現が、健康危機時における活動の効率化につながると考えられる。そのためには、各種情報の標準化と情報システムの活用を通じた効率化および評価指標の確立が不可欠である。
本研究では、効果的な地域保健活動を実施していくための情報基盤を構築するとともに、各地域における保健活動や住民の健康状況を科学的に比較可能とするための評価手法の検討、および保健活動の評価に関する既存の科学的情報に関する議論の整理を目的とする。
本研究では、効果的な地域保健活動を実施していくための情報基盤を構築するとともに、各地域における保健活動や住民の健康状況を科学的に比較可能とするための評価手法の検討、および保健活動の評価に関する既存の科学的情報に関する議論の整理を目的とする。
研究方法
1.基盤的な情報サービスを行政機関内に構築し、利用者から要望に基づいて継続的に改良を進めることで、様々な行政活動を効率化するための方法論を探索的に検討した。そのために、保健医療福祉行政用の実験的情報基盤である「科学院クラウド」の運用を継続するとともに、利用者からの要望に基づいて各種のサービスを改良した。
2.科学院クラウドのプロトタイプとして開発した「かんたんクラウド」について、過去にこのシステムが用いられた事例で、どの程度動作しない事例があったのかを確認し、このシステムが情報収集の基盤たりえるのかを検証した。
3.地域における保健活動の評価に関する既存の科学的情報について、「地域」、「保健活動」及び「評価」をキーワードとして医学中央雑誌データベースより最近5年間の原著論文を抽出し、評価対象の活動、評価方法の組み合わせに応じた評価指標の抽出を試みた。
2.科学院クラウドのプロトタイプとして開発した「かんたんクラウド」について、過去にこのシステムが用いられた事例で、どの程度動作しない事例があったのかを確認し、このシステムが情報収集の基盤たりえるのかを検証した。
3.地域における保健活動の評価に関する既存の科学的情報について、「地域」、「保健活動」及び「評価」をキーワードとして医学中央雑誌データベースより最近5年間の原著論文を抽出し、評価対象の活動、評価方法の組み合わせに応じた評価指標の抽出を試みた。
結果と考察
1.情報基盤の構築について
本研究で開発した科学院クラウドについては、かんたんファイル共有やかんたんスケジュール、かんたんクラウドなどのサービスは利用数の順調な増加が見られた。また、フィードバックに基づいて改良を重ねることで、使い勝手の継続的な向上を図ることが出来た。今回の探索的な検討を通じて、保健医療福祉行政に求められている基盤的な情報サービスが利用統計という単純な指標により明確となると共に、利用者からの要望とその反映を通じてそれぞれのサービスの望ましいあり方が明らかとなりつつある。また、行政が利便性の高い情報システムを構築する上で、従来の公共調達モデルとは異なって継続的な発展が可能な、情報システムの特性を踏まえた運用・改良モデルが確立しつつある。今後、広報を通じた利用者拡大を図ると共に継続的な改良を重ねることで、さらに行政の効率化に資する品質の高い基盤的情報サービスの実現が期待される。
2.情報基盤の活用について
「かんたんクラウド」を初めて調査に用いた場合、対象者の2割程度が操作に戸惑い、動作エラーが生じたと考えるか、従来のメールでの報告に切り替える傾向が確認できた。
しかし、東日本大震災における保健師活動報告に明らかなように、報告回数を重ねるにつれて操作に慣れ、上記のような傾向は激減することが明らかになった。2011年の地域・職域連携推進協議会の設置及び実施状況調査では、2県を除いたほとんどの都道府県で「かんたんクラウド」による報告がなされており、おおよそ日本国内のどの自治体でも本システムは動作するものと考えられる。よって、本システムは地域における情報収集の基盤たりえると考えられる。
3.評価指標の一般化について
科学的根拠という観点からいえば、何らかの保健活動を厳密に評価するためには、その活動を行った対象集団(介入群)と、行わなかった対象集団(コントロール群)を比較する必要がある。しかしながら、多くの保健活動は、研究としてではなく、実務として実施されているものであり、このような介入群と非介入群を設定することは現実的に困難である場合が多い。実務としても実施可能であり、かつ科学的にもある程度のエビデンスになりうる方法として、活動の前後で比較する方法が最も現実的であると考えられる。この際に用いる指標については、量的な指標を標準化することによって同様の活動を行っている他地域との比較も可能となってくると考えられる。評価指標の一般化の可能性は指標の定量性に依存しており、さらにこの定量性は保健活動の対象となる集団の大きさにも依存していると思われる。
本研究で開発した科学院クラウドについては、かんたんファイル共有やかんたんスケジュール、かんたんクラウドなどのサービスは利用数の順調な増加が見られた。また、フィードバックに基づいて改良を重ねることで、使い勝手の継続的な向上を図ることが出来た。今回の探索的な検討を通じて、保健医療福祉行政に求められている基盤的な情報サービスが利用統計という単純な指標により明確となると共に、利用者からの要望とその反映を通じてそれぞれのサービスの望ましいあり方が明らかとなりつつある。また、行政が利便性の高い情報システムを構築する上で、従来の公共調達モデルとは異なって継続的な発展が可能な、情報システムの特性を踏まえた運用・改良モデルが確立しつつある。今後、広報を通じた利用者拡大を図ると共に継続的な改良を重ねることで、さらに行政の効率化に資する品質の高い基盤的情報サービスの実現が期待される。
2.情報基盤の活用について
「かんたんクラウド」を初めて調査に用いた場合、対象者の2割程度が操作に戸惑い、動作エラーが生じたと考えるか、従来のメールでの報告に切り替える傾向が確認できた。
しかし、東日本大震災における保健師活動報告に明らかなように、報告回数を重ねるにつれて操作に慣れ、上記のような傾向は激減することが明らかになった。2011年の地域・職域連携推進協議会の設置及び実施状況調査では、2県を除いたほとんどの都道府県で「かんたんクラウド」による報告がなされており、おおよそ日本国内のどの自治体でも本システムは動作するものと考えられる。よって、本システムは地域における情報収集の基盤たりえると考えられる。
3.評価指標の一般化について
科学的根拠という観点からいえば、何らかの保健活動を厳密に評価するためには、その活動を行った対象集団(介入群)と、行わなかった対象集団(コントロール群)を比較する必要がある。しかしながら、多くの保健活動は、研究としてではなく、実務として実施されているものであり、このような介入群と非介入群を設定することは現実的に困難である場合が多い。実務としても実施可能であり、かつ科学的にもある程度のエビデンスになりうる方法として、活動の前後で比較する方法が最も現実的であると考えられる。この際に用いる指標については、量的な指標を標準化することによって同様の活動を行っている他地域との比較も可能となってくると考えられる。評価指標の一般化の可能性は指標の定量性に依存しており、さらにこの定量性は保健活動の対象となる集団の大きさにも依存していると思われる。
結論
地域における保健活動を合理的に評価するためには、適切な情報が必要であり、それらの情報を収集し活用するためには効率的な情報基盤が必要である。さらにこれらの情報を科学的に解釈するためには適切な指標が必要である。これらのプロセスは互いに独立ではなく、それぞれの要素が密接に関連し合っている。本研究では、情報基盤の確立と、実際の事例への応用、さらに、その評価を行うことにより、情報基盤の活用を通じた地域保健活動の評価とその改善について実践的なモデルを示すことができた。
公開日・更新日
公開日
2017-06-23
更新日
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