文献情報
文献番号
201330006A
報告書区分
総括
研究課題名
シックハウス症候群の発生予防・症状軽減のための室内環境の実態調査と改善対策に関する研究
課題番号
H23-健危-一般-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
欅田 尚樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
- 内山 茂久(国立保健医療科学院 生活環境研究部 )
- 稲葉 洋平(国立保健医療科学院 生活環境研究部 )
- 大澤 元毅(国立保健医療科学院 統括研究官 )
- 緒方 裕光(国立保健医療科学 院 研究情報支援研究センター)
- 加藤 貴彦(熊本大学 医学部 公衆衛生学)
- 内山 巌雄((財)ルイ・パストゥール医学研究センター)
- 東 賢一(近畿大学 医学部 環境医学)
- 中込 秀樹(千葉大学 大学院工学研究科)
- 嵐谷 奎一(産業医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
15,414,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、3カ年での計画で、快適な住環境の供給・維持管理・改善対策を提言することを目的とし、1.室内空気質評価のための各種拡散サンプラーの開発とそれらを用いた全国実態調査、2.化学物質曝露実態からみたリスク評価、3.化学物質に高感受性を示す人の分布の経年変化の評価、4.化学物質に高感受性を示す集団の各種代謝酵素の遺伝子多型による宿主感受性要因の検討などを主とした検討を行った。
研究方法
1.オゾンおよびカルボニル類、酸性ガス、塩基性ガス測定用の3種の拡散サンプラーを開発し、さらに市販の揮発性有機化合物用を加えて4種類のサンプラーを用いた空気質のモニタリング調査を実施した。調査は3カ年にわたり、全国で618軒について、同一家屋において夏季と冬季、またそれぞれ室内・外各1カ所ずつ24時間の捕集を行い分析した。同時に室温変化をモニタリングした。
2.以上の結果をもとに健康リスク評価を行うために、上記全国調査で得られた室内濃度の統計値(中央値、95及び99パーセンタイル値、最大値)に対して、各物質の非発がんリスク評価値(RfC)または発がんのユニットリスク(UR)を用い、非発がん評価では曝露余裕度(MOE)、発がん評価ではがん過剰発生率を算出し検討した。
3.日本で化学物質に高感受性を示す人の比率を把握するために、Millerらが開発したQEESI調査票を用いWEB調査を実施し化学物質に高感受性を示す人の割合の経年変化を検討した。2012年1月に7,245名の参加によるインターネット調査の結果、Miller らの設定したカットオフ値を超過し化学物質に対して感受性が高いと考えられる人の割合は4.4%であった。これらを対象に詳細調査を行った。
4.個人の感受性要因を検討するために、北條らが提唱しているQEESIを用いた化学物質に高感受性の新たなカットオフ値を用い、コントロール群とケース 群に分け、GST M1 null、T1 null、P1 Ile105Val 、ALDH 2 (rs671)、CYP2E1 Rsa I、 NAT2 (Rapid, intermediate, slow)、SOD2 (rs4880)遺伝子多型を分析した。
2.以上の結果をもとに健康リスク評価を行うために、上記全国調査で得られた室内濃度の統計値(中央値、95及び99パーセンタイル値、最大値)に対して、各物質の非発がんリスク評価値(RfC)または発がんのユニットリスク(UR)を用い、非発がん評価では曝露余裕度(MOE)、発がん評価ではがん過剰発生率を算出し検討した。
3.日本で化学物質に高感受性を示す人の比率を把握するために、Millerらが開発したQEESI調査票を用いWEB調査を実施し化学物質に高感受性を示す人の割合の経年変化を検討した。2012年1月に7,245名の参加によるインターネット調査の結果、Miller らの設定したカットオフ値を超過し化学物質に対して感受性が高いと考えられる人の割合は4.4%であった。これらを対象に詳細調査を行った。
4.個人の感受性要因を検討するために、北條らが提唱しているQEESIを用いた化学物質に高感受性の新たなカットオフ値を用い、コントロール群とケース 群に分け、GST M1 null、T1 null、P1 Ile105Val 、ALDH 2 (rs671)、CYP2E1 Rsa I、 NAT2 (Rapid, intermediate, slow)、SOD2 (rs4880)遺伝子多型を分析した。
結果と考察
1.ホルムアルデヒド濃度は冬季には指針値を超過した家屋はなかったが夏季には1.2%で超過が認められ最大値220μg/m3を示した。アセトアルデヒド濃度は冬季に6.8%、夏季に5.4%の家屋で超過が観察され、一部は飲酒との関連が示唆された。トルエンに関しては、指針値260 μg/m3を超過したのは、夏季、冬季とも1軒のみ(0.17%)であった。パラジクロロベンゼンの室内濃度指針値は240 μg/m3であるが、未だ冬季は2.6%、夏季は6.4%の住宅で指針値を超えていた。オゾン濃度は冬季には圧倒的に屋内において屋外より低値を示した。
2.上記の結果に基づきリスク評価した結果、パラジクロロベンゼンは室内濃度指針値策定物質であるが、いまだにハイリスク傾向であった。さらに、ベンゼン、二酸化窒素、ギ酸、塩化水素、酢酸エチルなど、室内濃度指針値が策定されていないハイリスクと推定される物質を見いだした。特にベンゼン、二酸化窒素は冬季にリスクが高く、生活習慣や燃焼型暖房器具が関与している可能性が推定された。
3.QEESI調査結果の変化に関連するリスク要因と改善要因、心理面に関する影響について調査を行った。得られた回答を解析した結果、化学物質への感受性増悪は、臭いや刺激への曝露がリスク要因となっていること、心理面では、自己の感情の自覚や認知の困難さ、不安や否定的感情の増加が感受性の増悪でみられること、日常生活の出来事が感受性増悪に関わっていることが明らかとなった。また、対策として、心理面でのサポートも併せて検討することが重要であると考えられた。
4.SOD2遺伝子多型頻度に関し、北條らのカットオフ値3項目を超えたケース群においてAla allele 保有者の割合が有意に増加していた。個体の感受性要因の一つとして抗酸化酵素であるSuperoxide dismutase 2 (SOD2) の関与を示し、酸化ストレスが感受性要因の一つであることを初めて明らかにした。
2.上記の結果に基づきリスク評価した結果、パラジクロロベンゼンは室内濃度指針値策定物質であるが、いまだにハイリスク傾向であった。さらに、ベンゼン、二酸化窒素、ギ酸、塩化水素、酢酸エチルなど、室内濃度指針値が策定されていないハイリスクと推定される物質を見いだした。特にベンゼン、二酸化窒素は冬季にリスクが高く、生活習慣や燃焼型暖房器具が関与している可能性が推定された。
3.QEESI調査結果の変化に関連するリスク要因と改善要因、心理面に関する影響について調査を行った。得られた回答を解析した結果、化学物質への感受性増悪は、臭いや刺激への曝露がリスク要因となっていること、心理面では、自己の感情の自覚や認知の困難さ、不安や否定的感情の増加が感受性の増悪でみられること、日常生活の出来事が感受性増悪に関わっていることが明らかとなった。また、対策として、心理面でのサポートも併せて検討することが重要であると考えられた。
4.SOD2遺伝子多型頻度に関し、北條らのカットオフ値3項目を超えたケース群においてAla allele 保有者の割合が有意に増加していた。個体の感受性要因の一つとして抗酸化酵素であるSuperoxide dismutase 2 (SOD2) の関与を示し、酸化ストレスが感受性要因の一つであることを初めて明らかにした。
結論
室内空気質の全国調査結果からリスク評価を実施し室内濃度指針値が策定されていないハイリスクと推定される物質を見いだした。さらに個人の感受性要因の検討から抗酸化酵素であるSOD2と有意な関連性が認められた。
公開日・更新日
公開日
2017-06-23
更新日
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