文献情報
文献番号
201330003A
報告書区分
総括
研究課題名
貯水槽水道における水の滞留の長期化や不適切な管理による水質悪化とその対策に関する研究
課題番号
H23-健危-一般-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
早川 哲夫(麻布大学 生命・環境科学部)
研究分担者(所属機関)
- 古畑 勝則(麻布大学 生命・環境科学部)
- 奥村 明雄(一般社団法人 全国給水衛生検査協会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
貯水槽内の水が滞留する事例が増加している。これは、残留塩素減少の原因となり、貯水槽水中に存在する細菌や原虫などの増加を引き起こす。貯水槽管理については、半日分程度の滞留を前提にしていたため、これまで長期滞留に伴う細菌増殖が問題を引き起こすリスクについては考慮されてこなかった。本研究では、実プラントでの調査やモデル貯水槽を用いて、長期滞留に伴うリスクの実態とメカニズムを明らかにするとともに、貯水槽の設備、装置の改善による適切な管理システムの構築を研究し、行政としてどのように指導していくべきかの指針策定を行おうとするものである。
研究方法
研究は3人の研究者(研究代表者;早川哲夫 麻布大学 生命・環境科学部教授、研究分担者;古畑 勝則 麻布大学 生命・環境科学部教授、奥村明雄 一般社団法人全国給水衛生検査協会会長)の
もとに日本給水タンク工業会、全国給水衛生検査協会、東京都衛生局、東京都水道局からの専門家による委員会を設けて研究する。
もとに日本給水タンク工業会、全国給水衛生検査協会、東京都衛生局、東京都水道局からの専門家による委員会を設けて研究する。
結果と考察
平成23年度から25年度にわたる本研究では、まず実プラントでの調査及び実験プラントを用いて、貯水槽水道の長期滞留の実態を把握した。その結果長期滞留の実態が明らかになった。
ビル建設時における一人当たりの使用水量(平均値)は、設計の基礎としている便覧記載の使用量(60~100L /人・日)に近い値であったが、その後節水が進み現在の実態とは約20L /人・日の差があることが判明した。また、既存ビルにおいても平均使用水量(飲用+雑用)は約50L /人・日で、便覧と比較すると、使用水量が3割から5割少なくなっている。実状を踏まえ容量が過大とならないよう設計する必要があり、これまで施設整備の参考とされていた基準の改定が必要であることが明らかになった。
また、貯水槽水の長期滞留によって、残留塩素が減少すること、また塩素減少に伴って細菌が増殖すること、とりわけ塩素抵抗性の強い従属栄養細菌の増殖の実態が明らかになった。また従属栄養細菌のなかには、病人や高齢者などの易感染者に対してリスクを増大させる恐れがあるものがあることを示唆した。その中には大腸菌と比べて塩素抵抗性が500倍から1000倍に及ぶものがあり、これらの菌を不活化するために塩素量を増加させることは現実的ではないことが分かった。また同時にこれらの菌は残留塩素濃度が一定程度存在すれば菌の増殖が抑えられることも分かった。またこれらの菌は大腸菌と比べると増殖速度は遅いため、これらの菌を「完全に不活化しなくても、増殖を抑えた供給によってリスクを低減することができる」と考えた。
したがって、滞留時間の長期化を防ぎ適切にコントロールすることや残留塩素の減少への対策を講ずることが現実的な政策であるとの結論を得た。塩素コントロールに関しては特に小規模の施設では塩素の管理が問題となるが、もともと水中に含まれる塩素イオンを活用して消毒用の塩素を発生させる技術が開発されていることも分かった。このような現場での現実的な技術レベルの課題にも応えられるような設備の活用を図ることが望ましい。
ビル建設時における一人当たりの使用水量(平均値)は、設計の基礎としている便覧記載の使用量(60~100L /人・日)に近い値であったが、その後節水が進み現在の実態とは約20L /人・日の差があることが判明した。また、既存ビルにおいても平均使用水量(飲用+雑用)は約50L /人・日で、便覧と比較すると、使用水量が3割から5割少なくなっている。実状を踏まえ容量が過大とならないよう設計する必要があり、これまで施設整備の参考とされていた基準の改定が必要であることが明らかになった。
また、貯水槽水の長期滞留によって、残留塩素が減少すること、また塩素減少に伴って細菌が増殖すること、とりわけ塩素抵抗性の強い従属栄養細菌の増殖の実態が明らかになった。また従属栄養細菌のなかには、病人や高齢者などの易感染者に対してリスクを増大させる恐れがあるものがあることを示唆した。その中には大腸菌と比べて塩素抵抗性が500倍から1000倍に及ぶものがあり、これらの菌を不活化するために塩素量を増加させることは現実的ではないことが分かった。また同時にこれらの菌は残留塩素濃度が一定程度存在すれば菌の増殖が抑えられることも分かった。またこれらの菌は大腸菌と比べると増殖速度は遅いため、これらの菌を「完全に不活化しなくても、増殖を抑えた供給によってリスクを低減することができる」と考えた。
したがって、滞留時間の長期化を防ぎ適切にコントロールすることや残留塩素の減少への対策を講ずることが現実的な政策であるとの結論を得た。塩素コントロールに関しては特に小規模の施設では塩素の管理が問題となるが、もともと水中に含まれる塩素イオンを活用して消毒用の塩素を発生させる技術が開発されていることも分かった。このような現場での現実的な技術レベルの課題にも応えられるような設備の活用を図ることが望ましい。
結論
しかしながら現時点で100万基を超える貯水槽の設備、装置を改善することによって適切な管理システムを構築することは、相当額の費用が必要となる。新たな設備は特に易感染者のいる施設を対象に重点的に整備すべきである。
これらを踏まえ、現実的に対応が可能な方法を考え、行政としてどのように指導していくべきかの、考え方について取りまとめた。
これらを踏まえ、現実的に対応が可能な方法を考え、行政としてどのように指導していくべきかの、考え方について取りまとめた。
公開日・更新日
公開日
2017-06-23
更新日
-