化学物質のヒト健康リスク評価における(定量的)構造活性相関およびカテゴリーアプローチの実用化に関する研究

文献情報

文献番号
201329022A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質のヒト健康リスク評価における(定量的)構造活性相関およびカテゴリーアプローチの実用化に関する研究
課題番号
H24-化学-指定-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
  • 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室)
  • 小野 敦(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室)
  • 山田 雅巳(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
  • 吉田 緑(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 森田 健(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
  • 西村 哲治(帝京平成大学 薬学部)
  • 長谷川 隆一(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
24,040,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、化学物質のヒト健康リスク評価の効率化や動物愛護の観点から(定量的)構造活性相関((Q)SAR)手法やカテゴリーアプローチの化学物質評価における実用化を目的として、それぞれについて規制へ適用可能な手法を構築および改良を行うとともに、最終的に得られた成果をもとにした評価ストラテジーの提案を行うことを目的としている。本年度は特に、得られたシステムのリスク評価への実用化に向けて、予測精度の向上を目指す。
研究方法
主として文献情報を入手し、データベースの整備、QSARモデルの検証を行った。また、ブルガス大学、ラーサ研究所、富士通との委託研究、協力研究によりQSARモデルの開発を行った。
結果と考察
A) 遺伝毒性の予測に関する研究
 エームス試験に関しては、予測精度の向上を目指し、世界最大規模のエームス試験データベースの再構築を行っている。今年度は安衛法エームス試験データ約2万物質を入手し、データベース化に着手した。約1万4千の入力可能物質のうち、約7千化合物をデータ入力した。ブルガス大学との共同研究により変異原性カテゴリー予測のためのメカニズムベースのサマリーワークフローを導入した。Mode of Action(MoA)に基づくワークフローは、in vivo試験での知識と統合することにより現実の結果を反映する手法となった。MoAパスウェイは、統合的な試験戦略として実用的な価値をもち、未試験の化学物質の遺伝毒性結果を予測する際の不確実性を減らすことができる。ラーサ社との共同研究により、知識ベースのin vivo 遺伝毒性の予測モデル(DEREK)の開発を行った。これまで、既存のin vitroアラートの拡張により17、新規のin vivoアラートとして4個のin vivo染色体異常のアラートを開発した。新たなアラートの開発によって、当初わずか4%の感度が、今年度のプロジェクト終了時には32%までの著しい改善が認められた。
B) 反復投与毒性を指標にした構造活性相関モデルに関する研究:
 肝毒性については、新規アラートの適用、修正等を行った。これにより、トレーニングセット化合物群に対する肝毒性の予測精度は、感度が45.4%、特異性が75.4%となり、昨年に比べて予測精度の向上が認められた。統計的モデリング・ソフトウェアSarahを用いた肝毒性予測モデルの構築を試みた。Sarahで構築したモデルはDerek NEXUSとほぼ類似した予測精度を示したが、不一致である割合が37%と比較的高かった。このことは、これらのシステムを併合することによって感度の向上が得られることを示唆している。
C)  構造活性相関モデル構築手法の比較と利用に関する研究
 化審法既存点検により反復投与毒性試験実施済みの化合物について昨年度実施した構造プロファイリング結果より毒性の強さとの関連が示された特徴部分構造を選択して決定木型の毒性強度評価モデルを構築するとともに外部データセットの判定を行うことにより、構築したモデルの評価を行った。同モデルを用いて外部データセットとしてMunroらによるCramer rulesの検証に用いられた化学物質データセットを用いて外部検証を行った結果、最大で72.5%の一致率を得た。構築したモデルでの判定結果についてCramer rulesによる判定結果と比較した結果、構築したモデルでは疑陽性率が高いものの毒性物質の抽出における有用性が示唆された。
D) 類似化合物のカテゴリー化による毒性評価に関する研究
 化学構造から神経毒性が懸念されるカーバメイト系、有機リン系、16員環マクロライド系、ピレスロイド系、ネオニコチノイド系の5系統について、各系で共通する毒性プロファイル、想定されるmode of action、種差、神経毒性発現用量と許容1日摂取量(ADI)設定根拠無毒性量等、多角的な比較を行った。有機リン系・カーバメイト系、16員環マクロライド系については構造による神経毒性が予測できる可能性が考えられた。それ以外は種差が大きく、構造による神経毒性に関する共通項目は見出すことは困難であった
結論
本研究により化学物質の毒性を従来の動物試験によらずに把握できる有力な手法であるカテゴリーアプローチや(Q)SARの実用化に向けた研究により、化学物質のヒト健康リスク評価の効率化や、動物愛護に貢献できる。本研究成果をもとにOECDや諸外国との情報交換を行い、最終的に実際の評価過程で、カテゴリーアプローチやQSARを使うための評価ストラテジーを提案することで国際貢献に寄与する。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201329022Z