文献情報
文献番号
201329020A
報告書区分
総括
研究課題名
新規の安全性評価試験法を国際的なガイドラインにするための手法に関する研究
課題番号
H24-化学-指定-008
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 小島 肇(国立医薬品食品衛生研究所・安全性生物試験研究センター 薬理部 新規試験法評価室)
- 小野 敦(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 総合評価研究室)
- 本間正充(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 変異遺伝部)
- 森田 健(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部 第四室)
- 山影康次(一般財団法人 食品薬品安全センター 秦野研究所 代替法試験部)
- 林 真(公益財団法人 食品農医薬品安全性評価センター)
- 一鬼 勉(一般社団法人 日本化学工業協会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
19,652,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、我が国で開発された安全性試験法の内、行政試験法として見込みのある方法について、欧米の研究機関と協力し、試験法の開発、検証および第三者評価を経て、国際的に受け入れられる試験法ガイドライン(TG)案をOECDに提出することを目指している。その過程において、検証が終了し、その結果を科学的に評価する第三者評価方法について、国際的に認められる方法を確立することに主眼をおいている。
研究方法
① 日本で開発あるいは検証が終了した試験法の内、遺伝毒性試験in vivoコメットアッセイ、形質転換試験Bhas42アッセイ(Bhas法)、皮膚感作性試験 (h-CLAT)および眼刺激性試験 短時間曝露法(STE法)について、国際機関の協力を得て、第三者評価を実施した。
② 内分泌かく乱化学物質に関するER-STTAアンタゴニストTG化に向けた今後の対応について協議した。AR EcoScreen法については、国内3施設、海外(韓国)1施設の参加による検証を実施した。
③ in vitroコメットアッセイの試験法開発について、2013年11月にオタワで開催された遺伝毒性OECD TGの第三者評価に関する専門家会合に参画し、OECD遺伝毒性TGの改訂に関する調査・研究を行った。
④ 肝臓および胃腸管を用いる反復投与小核試験の実施は、日本環境変異原学会に委託した。両試験ともに、追加物質、固定細胞の保存期間および陰性対照の小核出現頻度を検討し、病理組織学的検査を実施した。
⑤ Bhas42アッセイのハイスループット化を確立するため、発がん物質8物質、非発がん物質4物質を選択し、96ウェル法により培養終了後、過酸化水素処理し、マイクロプレートリーダーで生細胞率を求めた。また、メタノール固定・ギムザ染色し、肉眼観察による形質転換巣の有無を判定した。
⑥ 国際状況の調査として、OECD化学品合同会合(2014年2月)の資料に記載されている試験法開発状況を調査し、ヒト健康にかかわる部分を抜粋した。
② 内分泌かく乱化学物質に関するER-STTAアンタゴニストTG化に向けた今後の対応について協議した。AR EcoScreen法については、国内3施設、海外(韓国)1施設の参加による検証を実施した。
③ in vitroコメットアッセイの試験法開発について、2013年11月にオタワで開催された遺伝毒性OECD TGの第三者評価に関する専門家会合に参画し、OECD遺伝毒性TGの改訂に関する調査・研究を行った。
④ 肝臓および胃腸管を用いる反復投与小核試験の実施は、日本環境変異原学会に委託した。両試験ともに、追加物質、固定細胞の保存期間および陰性対照の小核出現頻度を検討し、病理組織学的検査を実施した。
⑤ Bhas42アッセイのハイスループット化を確立するため、発がん物質8物質、非発がん物質4物質を選択し、96ウェル法により培養終了後、過酸化水素処理し、マイクロプレートリーダーで生細胞率を求めた。また、メタノール固定・ギムザ染色し、肉眼観察による形質転換巣の有無を判定した。
⑥ 国際状況の調査として、OECD化学品合同会合(2014年2月)の資料に記載されている試験法開発状況を調査し、ヒト健康にかかわる部分を抜粋した。
結果と考察
① in vivoコメットアッセイ、Bhas42アッセイ、h-CLATおよびSTE法の4試験法は、いずれもOECD、EURL ECVAM、ICCVAMなどの国際機関により第三者評価が実施され、h-CLATを除く試験法の評価を終了した。
② ER-STTAアンタゴニスト試験法の検証は全て終了し、コード化化学物質の定性的評価については施設間再現性が示された。AR EcoScreen法については、国内外4施設で検証した結果、フェーズ1ではクライテリアを満たすデータの取得に成功し、フェーズ2においても被験物質の判定結果はほぼ完全に一致したものの、アンタゴニストアッセイ1物質については陽性反応が検出されない施設があった。
③ in vitroコメットアッセイの試験法開発に関するOECDの会議では、統計値と生物学的重要性の両方に基づくデータの解釈、陰性の背景データの充実、計測細胞数の変更を中心に協議され、ガイドラインが改訂された。
④ DEHPおよびcarbendazimは肝臓で、NMUT、MNU、PhIPは胃あるいは結腸で小核誘発性を示した。ホルマリン固定細胞懸濁液の保存期間の検討では、1年間室温保存あるいは約3年間冷蔵保存による影響は認められなかった。陰性対照の小核出現頻度は、肝臓で0.05~0.06%、腺胃で0.07~0.09%、結腸で0.08~0.17%であった。
⑤ Bhas42アッセイのハイスループット化では、吸光度分布に基づきカットオフ値を定めた。12物質について比較した結果、カットオフ値法のイニシエーション試験の結果はエームス試験の結果と完全に一致、イニシエーション試験とプロモーション試験を合わせた結果は発がん性試験の結果と完全に一致し、従来の観察法および平均値法よりも良好な結果が得られた。
⑥ 現在活発に開発されているのは、生きた動物を使用しないin vitro試験法である。国連の国際化学物質管理会議において、内分泌かく乱物質やナノマテリアルなどが新規政策課題として取り上げられている。
② ER-STTAアンタゴニスト試験法の検証は全て終了し、コード化化学物質の定性的評価については施設間再現性が示された。AR EcoScreen法については、国内外4施設で検証した結果、フェーズ1ではクライテリアを満たすデータの取得に成功し、フェーズ2においても被験物質の判定結果はほぼ完全に一致したものの、アンタゴニストアッセイ1物質については陽性反応が検出されない施設があった。
③ in vitroコメットアッセイの試験法開発に関するOECDの会議では、統計値と生物学的重要性の両方に基づくデータの解釈、陰性の背景データの充実、計測細胞数の変更を中心に協議され、ガイドラインが改訂された。
④ DEHPおよびcarbendazimは肝臓で、NMUT、MNU、PhIPは胃あるいは結腸で小核誘発性を示した。ホルマリン固定細胞懸濁液の保存期間の検討では、1年間室温保存あるいは約3年間冷蔵保存による影響は認められなかった。陰性対照の小核出現頻度は、肝臓で0.05~0.06%、腺胃で0.07~0.09%、結腸で0.08~0.17%であった。
⑤ Bhas42アッセイのハイスループット化では、吸光度分布に基づきカットオフ値を定めた。12物質について比較した結果、カットオフ値法のイニシエーション試験の結果はエームス試験の結果と完全に一致、イニシエーション試験とプロモーション試験を合わせた結果は発がん性試験の結果と完全に一致し、従来の観察法および平均値法よりも良好な結果が得られた。
⑥ 現在活発に開発されているのは、生きた動物を使用しないin vitro試験法である。国連の国際化学物質管理会議において、内分泌かく乱物質やナノマテリアルなどが新規政策課題として取り上げられている。
結論
日本で開発あるいは検証が終了した4試験法について、国際的第三者評価を実施し、TG案をOECDに提出した。その中で、in vivoコメットアッセイのTG成立の目途がたった。ER-STTA法、AR EcoScreen法ともに、検証の結果、内分泌かく乱性検出法としての有用性が示された。OECDの遺伝毒性TGの改訂を行った。肝臓および胃腸管を用いる多臓器小核試験の有用性を示す知見が得られた。過酸化水素処理によるBhas42アッセイは、形質転換巣を形態学的に判別する従来法の欠点を解決できると考えられた。開発中の試験法が世界的に現在どの位置にあるか認識することが重要である。
公開日・更新日
公開日
2015-05-20
更新日
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