簡便に調製可能な分子標的気泡を用いた超音波分子イメージングの開発-臨床用超音波造影剤の適応拡大の可能性の検討

文献情報

文献番号
201328071A
報告書区分
総括
研究課題名
簡便に調製可能な分子標的気泡を用いた超音波分子イメージングの開発-臨床用超音波造影剤の適応拡大の可能性の検討
課題番号
H25-医薬-若手-023
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
大谷 健太郎(独立行政法人国立循環器病研究センター研究所 再生医療部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、超音波造影剤である微小気泡の表面に生体内抗原に特異的な抗体やペプチド、タンパクを結合させ、生体内の特定の部位に気泡を集積させることにより(分子標的気泡)、炎症性血管病変・新生血管・動脈硬化巣などを標的とした造影超音波法による分子イメージングの開発が試みられている。本研究の目的は、日常臨床で既に使用されている超音波造影剤Sonazoidから新生血管及び新鮮血栓に対する分子標的気泡が作製可能か否かについて、in vitro及びin vivo(担癌モデル・頸動脈血栓モデルマウス)の実験系を用いて評価することである。
研究方法
本年度はSonazoidと、アポトーシス細胞の貪食に関わる生体内タンパクであるLactadherinとの複合体(Sonazoid-Lactadherin複合体)が、新生血管及び新鮮血栓に対する分子標的気泡となり得るか否かを評価するための基礎検討として、担癌モデルマウス及び頸動脈血栓モデルマウスの作成と、その病態評価系の確立を目的に検討を行った。担癌モデルマウスについては、超音波分子イメージングを施行する至適時期を決定するため、腫瘍サイズ及び病理組織像の経時的観察を行った。4週齢の雌性ヌードマウスの右腹部皮下にヒト卵巣線種細胞(SK-OV-3)を5.0×10^6個移植し、担癌モデルを作製した。腫瘍体積の経時的な測定と、抗CD31抗体を用いた免疫染色による新生血管の組織学的検討を行った。頸動脈血栓モデルについては、in vitro実験で用いるヒト及びマウス血餅の作製条件について検討を行った。またin vivo実験としては、塩化鉄(III)塗布による頸動脈血栓モデルマウスを作製し、形成された血栓の組織学的評価を行った。
結果と考察
【担癌モデルマウスでの検討】実験に用いた全てのヌードマウスにおいて、腹部にSK-OV-3細胞由来の腫瘍の形成が確認できた。腫瘍体積は時間とともに縮小したが、SK-OV-3細胞移植7日後という早期の段階においても、Sonazoidを用いた造影超音波法により癌微小循環を非侵襲的に評価することが可能であった事から、実験モデルとして特に問題はないと考えられた。また、SK-OV-3細胞移植7日後において、Sonazoid-Lactadherin複合体の標的となる新生血管を腫瘍組織内に確認することができた。腫瘍組織に対する超音波装置の設定及び超音波造影剤の投与量については、本年度の基礎検討によりほぼ至適な条件を確定することができた。次年度以降、Sonazoid-Lactadherinの新生血管に対する分子標的性について検討を進めて行く予定である。
【ヒト・マウス血餅の作製】室温で2時間凝固させて作製した血餅は、凝固が不十分かつ脆弱なため、in vitro実験には不適であると考えられた。凝固反応を37℃で2時間に変更することにより、in vitro実験に耐え得る強度の血餅を作製することが可能であった。また、免疫染色により、Sonazoid-Lactadherinの標的分子であるGPIIb/IIIa(CD41)が血餅表面に発現していることを確認した。
【頸動脈血栓モデルでの検討】ラット及びマウス頸動脈において、塩化鉄(III)塗布による血栓モデルの作成が再現性良く施行可能なことを確認した。マウスにおいては、塩化鉄(III)との反応後15分の時点において、ほぼ血流を途絶するほどの大きな血栓が作製可能であった。また、作製された血栓においてGPIIb /IIIa(CD41)の発現を免疫染色により確認した。次年度以降、頸動脈血栓モデルマウスにおいても、担癌モデルマウスと同様に造影超音波法が施行できるか否かについての検証が必要である。マウス頸動脈は外径が1mm程度と細いため、高周波数の超音波での映像化が必須である。しかし、周波数が高くなると、気泡の共振周波数との乖離が大きくなるため、十分な造影効果が得られない可能性がある。他方、造影超音波法に有利な低周波数で画像化を行うと、十分な空間分解能を有する画像が得られないという懸念がある。この点について、早急に検討を行い、最適な超音波装置の条件を見極める必要がある。
結論
本年度の検討により、造影超音波法を用いた超音波分子イメージングの医学的有用性を検証するin vitro及びin vivoの実験系をほぼ確立することができた。今後、これらの実験系を用いてSonazoid-Lactadherin複合体の新生血管及び新鮮血栓に対する分子標的性について検討を進めて行く予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-03-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201328071Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,990,000円
(2)補助金確定額
2,990,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,294,286円
人件費・謝金 0円
旅費 235,340円
その他 770,700円
間接経費 690,000円
合計 2,990,326円

備考

備考
差額の326円については、自己資金により支払いを行った。

公開日・更新日

公開日
2014-05-28
更新日
-