施設における援助のあり方に関する総合研究

文献情報

文献番号
199800300A
報告書区分
総括
研究課題名
施設における援助のあり方に関する総合研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
富澤 彰雄(国立秩父学園)
研究分担者(所属機関)
  • 三村誠(心身障害者福祉協会)
  • 小山聡子(日本女子大)
  • 西脇俊二(国立秩父学園)
  • 加藤正仁(うめだ・あけぼの学園)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
社会福祉制度の大きな変革期にあたり、知的障害児者福祉についても、
1992年AAMR(アメリカ精神遅滞者協会)による精神遅滞の定義改正にみられるよう
に、新しい理念のもとに、具体的な生活支援提供の観点から、従来の施設における援
助のあり方を、以下の5つの分担課題について現状分析を踏まえて、多角的に研究す
る。
研究方法
各分担研究班において、研究者・研究協力者による資料収集・分析なら
びに調査検討会を開催し検討を行う。また、各分担研究班において必要に応じ、現状
調査、アンケート調査等を行い現状を分析した。     
結果と考察
総括研究、各分担研究ごとに記述する。
1.総括研究「施設における援助のあり方に関する研究」(富澤 彰雄)
1) 知的障害福祉にとって、基本的には、入所型施設も1つの選択肢として、明確
な役割と機能を整備して存在していくことが望まれる。ノーマライゼーションの理念
のもと、「ふつうの暮らし」を提供する施設を志向する観点で、立地条件、適正規
模、生活機能について検討し、さらに施設機能面で「デイケア」と「ナイトケア」の
分離を検討した。 21世紀に向けた知的障害者福祉は、「バリアフリー」から「具体
的な地域参加権」の保障が志向されることが望まれる。
2) 障害者福祉の総合化の観点から、現在、生活施設化している「知的障害者更生
施設」について、身体障害者更生施設等と同様、3~5年の有期とし、機能を明確化
していくことが必要であろう。同時に、知的障害者療護施設(生活施設)の創設等が
必要となる。
3) 近い将来、措置制度から契約制度への移行が予定されており、適用法が行政法
から民法に移行することのから生ずる混乱が予想さる。契約当事者の意思能力に関す
る適格性、契約内容の検討が必要である。現在、標準契約書について検討している。
2.分担研究「高齢者処遇のあり方に関する研究」(三村  誠)
-知的障害者の介護特性のあり方と高齢者の要介護分類との関わり-
1) 現在、20施設入所中の高齢485人について介護保険の要介護認定基準を参考
とした「知的障害者の生活状況調査票」を作成し、要介護度の分類を行った。
調査対象は、年齢40歳~83歳、平均年齢61.9歳で、知能指数は、IQ50以上は47人
(8%)、知能指数の平均値はIQ28.7で調査対象の知的障害の程度は重いといえる。
2) 一般高齢者に適応される要介護度区分を準用した結果は、自立しており介護を
必要としないものは、18.6%であった。要支援状態33.4%、介護度-1 20.1%、介
護度-2  9.7%介護度-3 7.0%、介護度-4  5.5%、介護度-5  3.2%で
あった。
3) 知的障害者福祉法と介護保険法との関係は、必ずしも明確になっていない。将
来、知的障害者施設を介護保険法の適用施設としていく方向にあるのなら、要介護認
定基準を知的障害の特殊性を加味した基準に改めていく必要がある。
3.分担研究「施設における権利擁護のあり方に関する研究」(小山 聡子)
1) 制度的側面では、行政法上、知的障害者の行為能力に関して厳密な意思能力を
問うことなしに裁量がおこなわれ、例えば、年金などの申請においても、いわゆる保
護者を申立人とする代理を認めており、これが結果として家族による権利侵害をもた
らしている。
2) 施設内における権利侵害はいろいろな形で存在し、虐待はもとより、集団生活
のなかでの様々な制限と強制、サービスの提供者が個々人へのサービス内容を決める
仕組み等についての検討を行った。
北海道の知的障害者施設において、重大な権利侵害があり、緊急調査した。職員の
暴力で、前歯を3本破損させられた事例で、加害者の職員は不起訴で、復職するとい
う現実に、過疎地域における構造的問題がみられた。
3) 先駆的取組として、神奈川県知的障害者施設協会における施設ケアの向上を目
指した人権検討委員会の設置、権利宣言、倫理綱領行動計画およびオンブズマン制度
について検証を加えた。また、人権に関し、全国500施設についてアンケート調査を
実施した。
4) 知的障害者施設では、施設での生活が長期に及ぶ現状にあり、個々人の生活の
質を向上させる観点から、サービス提供の際の個々人の意思確認の方法について個別
援助計画およびケアマネージメントの導入も含めて検討する必要がある。サービスに
質の確保について、公的なガイドラインの設定と第三者機関或いは公的な査察制度が
必要である。
4.分担研究「施設における個別援助計画に関する基礎研究」(西脇 俊二)
1) 自閉性障害がある人々に、有効とされているTEACCHプログラムの評価方法とし
ての「サーモグラフによるストレス評価法」について、基礎的な研究を行った。
2) 健常者5人と精神分裂病患者14人について試行し、これと平行して、自閉症者
数名に、TECCHプログラムを応用した実践を行っており、その効果を検証していく。
3) 健常者について、鼻部皮膚温度は、初期安定期には34.02℃だったが、負荷後
には33.16℃となり、5分後の安静後の負荷には、33.34℃と変化している。初期安静
時と負荷後の鼻部皮膚温度の変化量が0.86℃とストレスによって変化するといわれて
いる0.3℃を上まわっており、負荷による有意な変化と考えられる。現在データの蓄
積中でありその解析後にこの測定法の妥当性が検討される。
5.分担研究「施設における地域支援のあり方に関する研究」(加藤 正仁)
1) 本年度は、現在ある知的障害関連施設を社会資源として捉え、一定エリア内に
おけるハード・ソフト両面における多様なサービスのあり方を東京地区において4種
別5施設(通勤寮2)の施設圏域を中心に実証的に検証した。 
2) 児童施設については、社会的には少子化の流れ、内部的には加齢化(滞留化)
を抱え困難な情況にある上、その歴史故の立ち遅れがみられ、新たな改革が困難であ
るが、その機能・圏域等に検討を加える必要がある。入所施設については、まだ不足
している現状であるが、従来の地域偏在を再考し、小規模、地域分散型への移行が望
まれる。通勤寮については地域密着型で機能しており、数的な拡大が望まれる。グ
ループホームの拡充等の展開も必要である。
3) 地域福祉の社会資源を量的に質的に増強し、何らかの対応を目指すのかは高度
に行政にかかわる問題であるが、新しい理念をもって踏み出す必要がある。
結論
新たな制度改革に向け、知的障害者福祉分野で、介護保険制度と同様
「地域社会」が支援することを軸とした理念構築が望まれる。従来、障害の種別・程
度別および集団的なサービス提供中心であったが、個々人に対するサービス提供のあ
り方とそのシステムの具体的構築が制度面・施設体系・人権擁護面等の多様な側面に
おいて必要である。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)