製薬企業の薬事コンプライアンスに関する研究-情報提供活動を中心に

文献情報

文献番号
201328062A
報告書区分
総括
研究課題名
製薬企業の薬事コンプライアンスに関する研究-情報提供活動を中心に
課題番号
H25-医薬-一般-017
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
白神 誠(日本大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 理恵(日本大学薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新薬を開発した企業は、製品情報概要をはじめ様々なプロモーション用の資材を作成し、製品説明会の開催やMRによる説明を通して、医療現場への浸透を図る。その際、当然、各製品の特徴が強調され、裏付けとなる臨床試験等の試験成績が示される。データに基づくプロモーションは非常に説得力が高いが、一方で、医療現場の医師や薬剤師にはその真偽を確認する余裕がない。また、これらの医師や薬剤師は、新薬がPMDAの審査を経て承認されたことを知っており、これらのデータもPMDAの評価を受けたものと受け取りがちである。したがって、もしデータは事実でもそれに基づく説明が正確さを欠くとしたら、医療現場の医師や薬剤師は誤った認識を持ち、ひいては患者に不利益を生じさせる恐れもある。我々は、平成23,24年度に厚生労働科学研究費補助金により実施した「製薬企業におけるコンプライアンス体制の実態把握と実行上の問題抽出に関する研究」の一環として、製薬企業から提供される製品情報概要の記載内容とPMDAから公表されている審査報告書に示されている評価結果とを比較した。その結果、新有効成分含有医薬品66成分中10成分で、PMDAの評価結果とは異なる記載が行われていることを明らかにした。以上の研究結果を踏まえれば、今後、製薬企業によるプロモーションの実態をさらに詳細に調査し、必要があれば、各方面に警告する必要がある。そこで本研究では、調査範囲を拡大し、製薬企業による情報提供活動の適正化を図ることを目的とする。
研究方法
①製品情報概要など、製薬企業が医療現場に提供するプロモーション資材を医療現場の協力を得て入手し、その中の記載のうち医療現場の判断に重要な影響を与えると思われる事項の記載内容を、PMDAのホームページから入手した審査報告書の評価結果と比較する。
②プロモーション資材における記載内容に疑問が生じたものにつき、当該企業に文書により見解を求める。
③当方の疑問および当該企業からの回答をPMDAに示し、PMDAとしての判断を求める。
④研究対象としては、製品情報概要、MRが医療現場に配布する資材とする。また、対象の医薬品は、平成23年以降発売された新医薬品とする。
⑤厚生労働省担当課、PMDA、業界代表者に参加を求めた会議を開催し、自主ルールのあり方、チェックシステムのあり方について検討する。
⑥論文発表、学会発表等を通じて、医療現場に実態を紹介し、注意喚起する。

①から④については、材料入手→評価を2年間にわたり順次行い、それらの成果を踏まえ2年目には、⑤および⑥を実施する。
結果と考察
平成23年1月から平成24年12月までに承認された新医薬品81成分について、製品情報概要を入手し、順次、その内容とPMDAによる審査報告書の内容とを比較している。現在までのところ、問題な記載のあるものが、35製品89項目見出されており、精査をしたうえで、当該企業の見解を求めることにしている。
また、平成23-24年度の厚生労働科学研究費補助金により実施した「製薬企業におけるコンプライアンス体制の実態把握と実行上の問題抽出に関する研究」の一環として実施した先行研究について成果をまとめ、下記の論文を学会誌に公表した。

小室雅人、折井啓一郎、小野寺祐加、白神誠:製薬企業の作成するプロモーション資材における問題点.医薬品情報学.2013 15(3) 111-117
結論
研究実施中に、ノバルティス・ファーマによる降圧剤ディオバンに関する情報提供問題、あるいは、武田薬品工業による降圧剤ブロプレスに係るCASE-J問題が社会問題化した。いずれにおいても医療現場に誤った印象を与えるために、製薬企業が臨床試験成績を会社に都合のよいように加工して情報提供を行ったのではないかとの疑念がもたれている。まさに先行する研究および本研究において問題として指摘してきたことが表面化したものである。本研究の成果も踏まえ、どのようにすればこのような状況を改善できるのかを提案していきたい。

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-05-12
更新日
-

収支報告書

文献番号
201328062Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,000,000円
(2)補助金確定額
922,067円
差引額 [(1)-(2)]
1,077,933円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 708,397円
人件費・謝金 111,370円
旅費 57,300円
その他 45,000円
間接経費 0円
合計 922,067円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
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