ウイルス検出を目的とした体外診断薬の再評価技術基盤に関する研究

文献情報

文献番号
201328061A
報告書区分
総括
研究課題名
ウイルス検出を目的とした体外診断薬の再評価技術基盤に関する研究
課題番号
H25-医薬-一般-015
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 多屋馨子(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 岡本貴世子(国立感染症研究所 ウイルス第三部)
  • 阿戸学(国立感染症研究所 免疫部)
  • 加藤孝宣(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 草川茂(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 百瀬暖佳(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
季節性、および新型インフルエンザウイルス、風疹ウイルス、肝炎ウイルス、エイズウイルスにおけるウイルス抗原、遺伝子、および抗ウイルス抗体に関し、ウイルス検出用の体外診断薬の検出感度・特異性等を再評価し、感度、特異性、有用性等、医療上の必要性も踏まえた再評価方法等の技術基盤の検討を行う。
研究方法
新型インフルエンザウイルス、風疹ウイルスおよびヒト免疫不全症ウイルスの抗原、抗体の検出に関しては、キットの性能を評価するための検体の整備や検出システムを構築するとともに、精度の高い特異抗体の作成を行う。季節性インフルエンザウイルス、C型肝炎ウイルスについては、測定に適した検体を整備した上で、市販の測定キットによる性能試験を行う。
結果と考察
1)迅速診断キットの検討
インフルエンザウイルス迅速診断キット10キットの検出感度について検討した。検出感度の差は、調べた5株では10~102であった。以前より見られたキット間における検出感度の差は小さく、また検出感度も向上していることから、臨床現場で多く用いられている迅速診断キットの信頼度は高くなっていると考えられた。
2)風疹ウイルス
風疹ウイルスWHO標準株13 genotypeを用い、TaqManリアルタイムPCRおよびReverse transcription-loop mediated isothermal amplification assay (RT-LAMP)法の感度の評価を行い、全てのgenotypeについてTaqMan法の感度が高いことを確認した。
3)インフルエンザウイルス(亜型等)
H7N9インフルエンザウイルスの診断系確立のために、モノクローナル抗体が必要となる。平成25年度は季節性H1/H3亜型と、H7亜型の鑑別を可能とする診断系の確立のため、モノクローナル抗体の作製を目指しハイブリドーマの作製に着手した。今後、得られたモノクローナル抗体を精製し、季節性H1/H3亜型ならびにH7亜型の鑑別を可能にする高感度ELISA系の構築を行う。
4)C型肝炎ウイルス
平成25年度は、HCV-RNA定量とHCVコア抗原定量のキットを用い国内献血検体由来のHCV検体パネル80検体の測定を行い、その相関と検出感度の違いについて評価した。HCV RNA定量法およびHCVコア抗原定量法の評価を行ったところ、得られた測定値は概ね良い相関が得られたが、いくつかのコア抗原定量法では乖離する例を認め、コア領域の変異がこの測定値の乖離に関係している事が明らかになった。今後、コア抗原定量法についてはこの変異の影響を受けないようなキットの開発が望まれる。
5)ヒト免疫不全症ウイルス
感染初期の抗原の検出能を定性的、定量的に試験できる系を検討するために、HIV-1 gag MA領域に、SYBR Green法で127bpを増幅するプライマーを設計した。これにより、7サブタイプ・4CRF・グループO各2株のゲノムを同等な効率で増幅し、プライマーの有効性が示せたとともに、すべてのサブタイプ・CRF・グループのHIV-1分離ウイルスの定量に有用である可能性が示された。
6)国際標準品の整備
体外診断薬の再評価には、臨床検体に加えて標準品の活用が非常に有用であることから、高品質の国際標準品整備の過程を把握し、その動向を捉えることは重要である。平成25年度は国際標準品の整備活動として、共同研究をメンバーとして実施した第2次A型肝炎ウイルスRNA-NAT国際標準品、第3次パルボウイルスB19 DNA-NAT国際標準品、第1次B型肝炎e抗原国際標準品、第1次B型肝炎e抗体国際標準品について、WHOのECBSに参加し国際標準品の承認作業を行った。
結論
平成25年度は当初の研究計画に従い、C型肝炎ウイルス(HCV)、HIV、インフルエンザ、風疹の検出キットの検出感度、特異性に関するそれぞれの課題を明確にするとともに評価、改善を行い、また順調に進捗している。いずれのウイルスも「感染症の予防及び感染症患者に対する医療に関する法律(感染症法)」に規定されており、医療上の必要性が高い。こうした病原体検出技術は、流行株の変化、病原体自身の変異に対応すべく、絶えず検出技術の改良が必要となっており、本研究の成果は現状に即した有効な体外診断薬の開発や評価に直結する。また、体外診断薬の国際標準品は、ウイルス検出を目的とした体外診断用医薬品の再評価には不可欠であり、継続して整備していく。

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
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収支報告書

文献番号
201328061Z