アカントアメーバ角膜炎制御にむけたコンタクトレンズケアの実態調査

文献情報

文献番号
201328055A
報告書区分
総括
研究課題名
アカントアメーバ角膜炎制御にむけたコンタクトレンズケアの実態調査
課題番号
H25-医薬-指定-010
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
大橋 裕一(愛媛大学 医学系研究科 視機能外科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 江口 洋(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部眼科学分野)
  • 白石 敦(愛媛大学 医学系研究科 視機能外科学分野 )
  • 井上 智之(愛媛大学 医学系研究科 視機能外科学分野 )
  • 鈴木 崇(愛媛大学 医学系研究科 視機能外科学分野 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
コンタクトレンズ(CL)は高度医療機器であり、使用方法を誤ると合併症を引き起こし、眼部に障害を与える可能性がある。我々はアカントアメーバにかかわるレンズケアの重要性について検討した中において、レンズケア用品の製品の抗アメーバ効力の低下に加えて、コンタクトレンズのケアが不十分なことが発症に寄与していることを示した。その調査の中で、視力矯正目的でなく、美容目的でカラーCL装用者が存在することが明らかになった。
 カラーCL装用者は若年者を中心に増加傾向にあるといわれているが、その実態については装用者人口、ケア状態などほとんどが不明な状態である。カラーCL装用によるアカントアメーバ角膜炎を含む眼障害を制御するためには、確実な情報収集が不可欠となる。本研究では、アカントアメーバ角膜炎の発症とカラーCL眼障害に焦点を絞り、解決策、対応策を検討することとした。
研究方法
1.アカントアメーバ角膜炎の定点調査
全国の医療機関から人口、地域性など考慮して、アカントアメーバ角膜炎患者が紹介されることの多い基幹病院を調査定点として選択し、アカントアメーバ角膜炎の発生状況、臨床所見、レンズの種類やケア状況に関する調査を行う。調査結果よりアカントアメーバ角膜炎発症の危険因子を検討する
2. カラーCLの基礎学的検討
医療機関で販売している視力矯正目的のカラーCLにくわえて、インターネットや量販店で販売されている海外製のカラーCLに対して、走査型電子顕微鏡で表面構造を観察し、レンズの眼瞼側と角膜側のオリエンテーションを明確にしたうえで、印刷顔料の局在を特定する。
 印刷顔料を特定したのち、X線分散型成分分析機器を用いて、印刷顔料の元素分析を実施する。同時に、マッピング解析を実施し、各元素の分布を把握する。
3. カラーCL障害の定点調査
松山市内の眼科診療所を調査定点とし、一定期間(2か月)に診療したカラーCL装用に伴う眼障害について、その臨床所見、発症背景、カラーCL購入先、ケア状況、治療への反応性について解析し、その発症数、発症状況を確認する。
4.カラーCL疫学調査
愛媛県内の高校、大学、購入者背景、カラーCLの購入先、装用状況、ケア状況について、愛媛県の高校、大学、専門学校の協力の元、若年者を対象に、アンケート調査を行う。調査内容としては、カラーCLの購入方法、カラーCLに対するケア状況、カラーCL装用に至る経緯、カラーCLに関する情報入手方法、カラーCL装用に伴う眼部自覚症状、カラーCL装用による美容的効果について調査をし、カラーCLの現状を確認する。
結果と考察
(結果)
1.アカントアメーバ角膜炎の定点調査
H25年度は医療機関の選定のみで実行できず、H26年度に調査を行う予定である。
2.カラーCLの基礎学的検討
入手した5種類のカラーCLのうち、印刷顔料がレンズ内に存在していたのは2種であった。そのうち1種は、眼瞼側から約20μmの位置に顔料が存在した。他の1種は、角膜側から1μm以内の部位に存在し、あたかも薄い被膜状のレンズ素材で覆われた構造であった。残り3種のうち2種はレンズの角膜側に、残り1種は眼瞼側に印刷顔料が沈着して、生体と顔料が直接接触する状況であった。
 顔料の主成分は、酸素・塩素・鉄・チタンであり、部分的に複数の顔料が重ねて印刷されているものがあった。不均一な印刷状況のレンズも存在した。
3. カラーCL障害の定点調査
松山市18医療機関の協力のもと、H25年7月1日~31日の1か月間で参加医療機関を受診したカラーCL眼障害を調査したところ、44症例のカラーCL眼障害が集積され、結膜充血、角膜上皮障害、角膜浸潤が多いことが明らかになった。
4.カラーCL疫学調査
松山市内の高校、専門学校における疫学調査を実施した結果、女子高校生18.2%、専門学校生(女子)39.5%でカラーCLの装用歴があり、インターネットでカラーCLを購入していることがもっとも多かった。
(考察)カラーCLの中に生体と顔料が直接接触するものもあり、眼障害の原因となりうる可能性も示唆された。また、カラーCLの実態調査では若年女性の間において、カラーCLの装用は広がっている一方、その入手経路がインターネットなどであり、指導が徹底されていない可能性も考えられる。また、カラーCL眼障害として結膜充血、角膜上皮障害、角膜浸潤が多いことが明らかになったが、これらの背景にレンズケアに対する教育が行き届いていないことも推測される。
結論
アカントアメーバ角膜炎の定点調査に多少の遅れがあったが、カラーCLの実態調査によって、カラーCLの装用率やカラーCL眼障害の実態が明らかになり、有益な成果が得られたものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201328055Z