社会保障制度の中における心身障害者扶養保険制度のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
199800299A
報告書区分
総括
研究課題名
社会保障制度の中における心身障害者扶養保険制度のあり方に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
府川 哲夫(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 戸田五七朗(株式会社第一勧銀情報システム)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、心身障害者扶養保険制度の財政に影響を及ぼす障害者死亡率や資産運用の動向について分析研究し、財政収支の分析をすすめ、財政を健全に維持するための具体的な方策を検討することを目的とする。
研究方法
(1)障害者死亡率については、制度発足後28年を経過し、かなりの統計データが集積されてきたので、制度の実績値を基礎として経験死亡率を算定することを試みた。
(2)適正保険料の水準を検討するため、生命保険アクチュアリーの協力を得て、保険料算出方法書を作成し、これに基づいて保険料計算システムを作成した。
(3)近年運用利回りが低下してきており、資産の効率運用について検討が必要と考えられるため、資産分析の専門家の協力を得て、年金ALMの手法によりアセッットミックスの分析を行った。
(4)財政収支を分析するため、将来予測システムの手法について検討を行った。システム設計及びプログラミングは厚生年金基金業務受託指定法人に開発を委託した。
結果と考察
(1)平成9年度までの3か年の実績から障害者死亡率を計算し、これを平成9年簡易生命表の男の死亡率を基準に倍率を掛けて補正した。実績値が得られない年齢層では仮定に基づいた数値になっており、今後その妥当性を検証する必要がある。前回の死亡率と比較して70歳以上で明らかな低下傾向が認められた。この年齢層の受給者数は現状では少ないが、長期的には財政に影響を及ぼすものとみられる。
(2)加入者死亡率、加入者脱退率についても平成9年度までの3か年の実績から計算した。加入者脱退率については、特例加入者とその他の者で脱退傾向に違いがみられたので、別々に設定した。
(3)保険料算出方法書の作成にあたっては、この制度が保護者を第1被保険者、障害者を第2被保険者とする連生保険であることを考慮し、基礎率の内容、及びそれに基づく適正保険料と適正保険金の算出方法、並びに責任準備金の算出方法などを明記した。
(4)保険料計算システムの作成にあたっては、障害者死亡率、加入者死亡率、予定利率等を入力変数として扱えるとともに、基数表を使用しないコンパクトな設計に留意した。このシステムの完成によって適正保険料や責任準備金を容易に計算することが可能となった。さらに開発中の将来予測システムに組み込んで債務額の将来予測も可能となった。
(5)平成10年9月末現在で信託契約で運用している時価残高に基づいて資産分析を行った。資産クラスごとのリターン、リスク等は厚生年金基金を対象に使用しているものを使用した。「5・3・3・2」規制はある場合とない場合の2通り検討した。資産分析の結果、現在のポートフォリオの期待収益率は3.80%であり、リスクを固定してアセットミックスを改善すると4.12%に増加することがわかった。しかし、アセットミックスの改善効果を期待しても4%を超える実質収益を期待するのは困難な運用環境にあり、現在の予定利率4.5%の見直しは避けられないものと考える。あわせて資産の効率運用について検討が必要と思われる。
(6)将来予測システムの設計にあたっては、加入者を特例加入者、制度改正前加入者、制度改正後加入者、新規加入者、既裁定受給者の5つのグループに分け、口数をベースに推計することとした。保険料の推計は、年齢別加入期間別の統計から加入時年齢を逆算する方法を採用した。推計期間は完全に成熟するまでの年数100年間とした。アプリケーションはMicrosoft.EXCELを使用し、計算作業を容易にするためマクロを活用し作業を自動化することとした。今年度は基本設計を終了したが、次年度においてシステムを完成させる予定である。
結論
(1)障害者死亡率についてはまだ検討の余地があるが、実績値から経験死亡率を算出した成果は大きいといえる。この死亡率を将来予測システムに投入してその妥当性を検証したい。
(2)保険料計算システムの完成により、適正保険料等を容易に計算することが可能となった。また、このシステムを将来予測システムに組み込み、債務額の将来予測に活用することとしたい。
(3)予定利率の見直しについて検討が必要と思われる。あわせて資産の効率運用について検討が必要と思われる。
(4)将来予測システムの手法については結論を得たので、次年度においては具体的なデータを入力してシステムの検証を行うとともに、財政収支の分析をすすめ、財政を健全に維持するための方策を検討したい。

公開日・更新日

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