治験活性化に資するGCPの運用等に関する研究

文献情報

文献番号
201328052A
報告書区分
総括
研究課題名
治験活性化に資するGCPの運用等に関する研究
課題番号
H25-医薬-指定-007
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 裕司(浜松医科大学 医学部臨床薬理学)
研究分担者(所属機関)
  • 楠岡 英雄((独)国立病院機構 大阪医療センター)
  • 花岡 英紀(千葉大学医学部附属病院 臨床試験部)
  • 熊谷 雄治(北里大学医学部附属病院 臨床研究センター)
  • 大澤 智子((独)医薬品医療機器総合機構 信頼性保証部)
  • 大津  敦((独)国立がん研究センター東病院 早期・探索臨床研究センター)
  • 小池 竜司(東京医科歯科大学医学部附属病院 臨床試験管理センター)
  • 今村 知世(慶應義塾大学医学部)
  • 笠井 宏委(京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター開発企画部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、医師主導治験等が我が国で定着する対策を提案するとともに、医師が実施した臨床試験データを企業が引き継ぎ治験データとして有効に活用する等、産官学の連携により革新的医薬品創出を促す臨床試験・治験実施体制を提言する。また、海外の規制当局との連携等により国際的な整合性を図りながら、被験者の安全性やデータの信頼性を確保し効率的な治験実施体制を整備するため、現状の問題点を抽出し、その解決策を提案する。
研究方法
 平成25年度は3年間の研究期間の初年度研究として以下の項目について調査研究を実施した。
(1) グローバルな視点に立った臨床試験・治験の人材育成に関する研究
・医学系、薬学系、看護系、臨床検査系大学での臨床試験に関する教育の実態に関するアンケート調査
・臨床研究主任研究者に求められる要件について
(2) ICH-GCP水準を担保する臨床試験体制整備と規制対応
・AROの実態と運用に関する研究
・治験の安全性情報の伝達・共有に関する研究
・医師主導治験の資金調達と利益相反に関する研究
・海外規制当局との連携について
・臨床試験参加者の意識調査
(3) 効率的な医師主導治験等の実施の検討
・医師主導治験等の効率化に関する研究
・電磁的記録の効率的利用に関する課題
・共同IRB等利用の実態調査
 以上の調査結果等をもとに、課題を整理し、必要な対策を提案する
結果と考察
 (1) グローバルな視点に立った臨床試験・治験の人材育成に関する研究では、「臨床試験・治験に関する教育の実態調査票」を作成し、臨床試験に関わる人材を養成する医療系大学に、同一内容のアンケート調査を実施した。今後、回答を集計して、その成果をWeb上に公表し、臨床試験・治験に関する教育の基礎資料とする。また、国立大学附属病院臨床研究推進会議内で抽出された臨床研究主任研究者に求められる要件は、人材養成の到達目標となるものであり、他の厚生労働省研究班とも連携し、この項目に基づきテキストやe-learningのコンテンツの構成を目指す。
(2) ICH-GCP水準を担保する臨床試験体制整備と規制対応に関しては、AROの充実や研究資金確保、そして適正なCOI管理が欠かせない。新しい医療の創出には産学連携が必須であることを十分踏まえた上でより透明化を図るとともに、マスコミなどへの理解を十分求めていく。資金調達に関しては、公的研究費の確保に加え、企業資金による医師主導治験の実施や産学ゲノムコンソージアムでの民間資金流入など新たな試みが開始されている。前者では資金およびCOIの透明性を最大限確保し、臨床試験の独立性を十分確保して実施することが求められる。後者では公的資金と民間資金の切り分けと透明性確保、企業間の利益の調整が必要となる。国立がん研究センターEPOCの産学連携のゲノムコンソーシアムは、今後わが国でのアカデミアにおける医薬品開発研究のモデルとなるものであり、治験コストの効率化と治験活性化、新薬開発促進など多くのメリットがある。
ICH-GCP水準を担保する規制対応に関しては、概念は共通認識されているはずのICH-GCPの解釈の詳細や実際の運用、治験実施過程で残される文書等に国際間で相違点がしばしば認められ、これらは文化的背景等にも起因するものと考えられる。治験実施環境の相互理解をより深めていくことが重要と考えられる。
(3) 効率的な医師主導治験等の実施については、電磁的記録の利用や共同IRBに関して調査を実施した。治験関連文書の電子化については、治験依頼者により対応が異なる点を指摘する施設が多く、医療機関側の電子化促進の妨げになっていることが明らかとなった。医療機関側からの要望として、実際に電子化に取り組んだ施設の事例や標準業務手順書のモデルを公開してほしいとの意見が多くみられた。
共同IRB等利用の実態調査では、共同IRBの利用により満足が得られている施設などの成功事例の情報共有が重要と考えられる。また、IRB実施施設を検索できるサイトの設置といった環境整備も必要と考えられた。
結論
 日本は世界の中でも新薬を創出できる数少ない国の一つである。今後もこの状況を維持し、さらに発展させ、日本で生み出された新薬が世界の人々の健康福祉に貢献する環境を実現するためには、人材育成や国際競争力のある研究開発環境の整備が必須となる。AROの機能を強化し、アカデミアシーズから医師主導治験を通じて革新的医薬品をつぎつぎと創出し、医師主導治験が医療イノベーションの牽引力となるような役割が期待される。さらに最新かつ質の高い医療を患者に提供する体制を確保し、国際競争力を持つ医薬品産業を我が国に保持していくためには、介入を伴う全ての臨床試験はICH-GCP水準で実施しうるような教育体制および運営体制の整備が求められる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-06-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201328052Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,684,496円
人件費・謝金 245,008円
旅費 939,120円
その他 1,102,270円
間接経費 0円
合計 4,970,894円

備考

備考
平成25年12月6日に開催した平成25年度厚生労働科学研究費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業)における第3回厚生労働省班会議のため、旅費を支払いましたが、分担研究者の手続きの誤りにより重複して支出されていた為、旅費重複等による修正をし、その結果直接研究費の残額が発生しました。

公開日・更新日

公開日
2015-06-25
更新日
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