がんワクチン等の品質及び有効性評価手法の検討に関するレギュラトリーサイエンス研究

文献情報

文献番号
201328051A
報告書区分
総括
研究課題名
がんワクチン等の品質及び有効性評価手法の検討に関するレギュラトリーサイエンス研究
課題番号
H25-医薬-指定-006
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
山口 照英(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究分担者(所属機関)
  • 川崎 ナナ(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腫瘍免疫を活性化することによるがんの新たな治療法(がんワクチン)が開発されようとしているが、臨床試験にはペプチドから細胞製品、さらには組換えウイルスなど非常に多様な製品が用いられている。がんワクチンによって引き起こされる免疫反応は細胞性免疫が主として機能すると考えられており、薬力学的マーカー(PD)としてがん抗原特異的細胞障害性T細胞やヘルパーT細胞の測定などいくつかの評価指標が提案され、かつ臨床試験でこれらのPDマーカーの消長が測定されている。その一方で、がんによる免疫抑制反応が腫瘍免疫を抑制することにより必ずしもこれらのPDマーカーが有効な指標とはならないとの報告もされており、PDマーカーと長期延命効果等の臨床的効果に明確な相関性が見出せていないのも事実である。抑制性T細胞(Treg細胞)や他のがん特有の免疫抑制が作用することにより、がんワクチンの有効性を減弱させているのであれば、免疫抑制の解除をどのように評価するかが今後の課題となる。
本研究では、当該ワクチンのがん免疫治療における品質、非臨床試験、臨床試験において考慮すべき事項について解析し、安全性や有効性の評価指標を明らかにすることを目指す。さらに得られた成果を基に、がん免疫治療薬のガイドライン作成に寄与することを目的とする。
研究方法
がんワクチンの臨床開発を目指して実施されているNIH Clinical Trialプロトコールを対象として、免疫応答性について臨床試験で明らかにしようとしているかを調査した。ペプチド/タンパク質を用いた開発のみならず、糖脂質を用いた開発、さらには細胞治療、遺伝子治療として分類される臨床開発が行われている。また併用薬としてもアジュバント、核酸医薬、低分子化学医薬品など様々な取り組みが行われている。このような併用薬を含めた治療レジメンとその免疫応答性の評価の関係についても調査した。
さらに治療レジメンに関しても多岐にわたっている。このような現在実施されている臨床プロトコールの解析を行うと共に、FDAのがんワクチンガイドラインや公表文献等も含め調査の対象とした。
各種ガイドライン及び文献情報等を参考にバイオ医薬品の規格及び試験方法についてまとめた。これをもとにがんワクチンの有効成分として用いられる組換えタンパク質およびペプチドの品質管理手法について考察した。
結果と考察
2013年時点で、がんワクチンの臨床開発を目指してNIH Clinical Trialのウエブページに約1300の臨床プロトコールが掲載されている。これらのプロトコールの調査では、パピローマウイルスやがん患者の感染症防御のためのワクチンに関する研究もあり、それらを除いた上で、どのような免疫応答性について臨床試験で明らかにしようとしているかを調査し、ガイドラインに記載すべき課題が明確になってきた。特に、次のような項目について解析することが重要であると考えらえられた。
すなわち、がんワクチンの臨床試験ガイダンスとして記載すべき内容として、製品群の多様性を十分考慮し、併用薬との関係や臨床開発初期での安全性確保のためにどのような点に注するべきかを記載すること。
また、がんワクチンの免疫応答性評価として、(1) クラスIあるいはクラスIIのMHCポリマーを用いた抗原特異的細胞傷害性T細胞(CTL)あるいは抗原特異的CD4+細胞の定量、(2) MHC-class2/がん特異的ペプチド複合体の4量体を用いたヘルパーT細胞(CD4陽性)の検出、(3) 特異的抗原刺激によって活性化されたCD4+またはCD8+T細胞数のELISPOTによる計測、あるいは細胞内サイトカイン染色による解析、(4) がん抗原の特異性が不明な場合にどのような代替指標が想定されるか、(5) 制御性T細胞の測定の課題、(6)抗原提示細胞によるがん抗原のクロスプレゼンテーションなどについて言及する必要があることが分かった。
これらの成果に基づいてがんワクチンガイドライン案を提案した。
また、ペプチド・タンパク質性のがんワクチンの規格としては、(1)構造式、 (2)分子式と分子量、(3)性状、(4)確認試験、(5)示性値、(6)純度および不純物試験、(7)定量法、(8)力価、(9)標準物質/標準品を設定すべきとした。
結論
がんワクチンの臨床試験ガイダンスに記載すべき内容を精査し、がんワクチンガイダンス案を作成した。特にがんワクチンの免疫評価法に関して2つの案を提示し、26年度にいずれの案が最も適しているかを明確にし、厚生労働省に提案する予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2015-05-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
201328051Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,000,000円
(2)補助金確定額
3,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,092,892円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 907,387円
間接経費 0円
合計 3,000,279円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
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