薬害に関する資料等の調査・管理・活用等に関する研究

文献情報

文献番号
201328048A
報告書区分
総括
研究課題名
薬害に関する資料等の調査・管理・活用等に関する研究
課題番号
H25-医薬-指定-003
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
金 慶南(キム ギョンナム)(法政大学 大原社会問題研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品等による薬害事件は、その発生から年月が経過するにつれて、被害者やその家族の高齢化等により薬害に関する貴重な資料等が、適切な管理・保管がなされないままに散逸が進み、失われていってしまう可能性が非常に高くなっている。そのため、被害者個人や団体が所有している資料等の状況・状態について速やかに調査を行い、資料等を統一的・体系的に分類・整理・保管するための手法を検討・実践することが必要である。それにより資料等の亡失を防ぎ、今後、薬害に関する啓発や教育、研究等への効果的な利用とともに、被害者等対策への検討材料として活用することができるようにすることによって、国民の医薬品等の安全対策への認識の向上、薬害の再発防止に寄与することを目的とする。当研究は、2年の研究計画で、まず、1年目は、薬害被害とそれに対する支援運動がさまざまな場所で起こる過程で蓄積された資料の現状を把握することを目指した。2年目は、現場の記録を体系的に分類・整理・管理する方法の構築を目的としている。
研究方法
 研究方法は、記録管理学的な観点からアプローチする。記録というものは、文書・視聴覚などの作成・活用・破棄あるいは保存というライフサイクルがある。すなわち、それぞれの個人・団体は、目的を達成するため、起案、議論、決定・決済過程を行う。そのとき、作られた文書・視聴覚資料は、プロジェクト終了後永久保存あるいは破棄されるサイクルを持っている。 記録管理学的な観点から見ると、歴史的に価値がある記録、証拠となる記録、行政的に必要な記録は、永久保存が必要と思われる。このように、歴史的・証拠的・行政的価値のある記録を永久保存するため、目録記述・評価・選別作業が必要となる。調査方法としては、活動の流れに沿ったインタービュー調査、現場調査を行って、記録学観点から分析した。現場調査では、記録管理概要、レイアウト図、保存量計測、形態別調査、デジタル化有無、機密記録の管理状況などを調査し、保存状態に対する全体像を把握した。
結果と考察
今年度は、薬害被害者9団体(薬害肝炎・スモン・サリドマイド・陣痛促進剤・HIVなど)を事例に、記録管理状況について調査を行った。調査結果、作業人員・資金・保存書架など資料整理体制が整って目録化・電子化まで進んでいる団体もあるが、放置状態にある団体もあるためギャップが大きい。特に、調査団体の資料は、個人情報など秘密管理を要する資料が多いため、記録を管理する際には、極めて注意が必要だと思う。調査の際には、まずインタービューから開始し、運動発生の経緯にしたがってどのような資料が蓄積されてきたかについてインタビューフォーマットに沿って綿密な聞取りを行ったのち、保存されている資料を拝見した。その結果、資料種別や資料量、資料保存・整理状況の全体的・体系的な把握しながら、それぞれの団体が抱える課題を明らかにした。さらに、紙資料の保存や目録フォーマットを使用した整理方法などを、団体ごとに提案した。調査・聞取りに協力して頂く過程で、資料所蔵者の保存・整理に対する意識が変わっていくケースも見受けられた。
結論
要するに、現在、運動している団体の資料も、記録管理に対する専門的知識不在、人件費、スペ―ス問題などがあって、体系的な資料保存は難しい状態である。活動が終わった団体は言うまでもないだろう。薬害に関する啓発や教育、研究等への効果的な利用のため、また貴重な資料の永久的保存のためには、現用記録をきちんと分類・管理しなければならない。薬害を受けた人は、命をかけて記録している。本研究チームと九つの薬害団体は、資料等を統一的・体系的に分類・整理・保管するための手法を検討・実践している。これにより、資料等の亡失を防ぎ、重要な記録を啓蒙・教育素材として使うことができると思う。今後の課題は、資料管理手引き、フォーマットにしたがって、各団体が資料整理を行うことである。それに際して、各団体に資料整理人員・保存容器などの確保が必要である。また、薬害関連機関の保有記録、閲覧対応についても、過去の事例、海外事例から考察する必要があると思う。かつ、薬被連参加団体全体で足並みをそろえた体系的な整理が必要であると思う。

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201328048Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,782,299円
人件費・謝金 1,652,949円
旅費 374,072円
その他 40,900円
間接経費 1,150,000円
合計 5,000,220円

備考

備考
補助金受入れ口座で預金利息が発生し、それを当該研究事業に充当したため

公開日・更新日

公開日
2014-07-01
更新日
-