ヘモビジランス(血液安全監視)体制のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201328046A
報告書区分
総括
研究課題名
ヘモビジランス(血液安全監視)体制のあり方に関する研究
課題番号
H25-医薬-指定-001
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤栄史(愛知医科大学 輸血部)
  • 田中朝志(東京医科大学八王子医療センター)
  • 米村雄士(熊本大学附属病院 輸血・細胞治療部)
  • 藤井康彦(山口大学医学部附属病院)
  • 紀野修一(旭川医科大学)
  • 大坂顯通(順天堂大学医学部)
  • 岡崎仁(東京大学医学部附属病院 輸血部)
  • 日野学(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 五十嵐滋(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 百瀬俊也(日本赤十字社 関東甲信越ブロックセンター)
  • 石井博之(一般社団法人日本血液製剤機構)
  • 北澤淳一(福島医科大学)
  • 奥山美樹(東京都立駒込病院)
  • 大隈和(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
輸血の安全性を高いレベルに引き上げるために、国際社会における輸血に伴う副作用のヘモビジランス(サーベイランス)システムの必要性がヨーロッパにおいて認識され構築されてきた。日本においては、医療機関から日本赤十字社への自主的報告を中心として行われており、安定した成果を上げてきた。一方、医療施設が中心となって実施しているヘモビジランス活動では統一した判断基準を設定し、施設格差のない信頼性のある輸血副作用の全数管理システムを整備し、医療機関からの定期的な情報を収集するオンラインシステムを構築してきた。新たな安全技術導入やリスクに迅速かつ柔軟に対応するため、多様な観点から評価を行い現システムの充実を図る必要がある。本研究課題において、輸血副作用報告システムを強化することにより、ヘモビジランスから得られる情報について、多様な観点から評価を行い、新たな安全技術導入やリスクに迅速かつ柔軟に対応する。
研究方法
現行のヘモビジランスにおいて改善すべき課題について検討を行う。また、血液製剤を製造から臨床使用にいたるすべての過程でチェックできる体制(トレーサビリティ)の構築を新たに進め、すべての安全性に関する情報の一元管理が可能となるシステムの構築を行うとともに、安全監視体制の一層の充実を図る。平成25年度は、トレーサビリティシステムのフレームワークを構築するとともに、日本赤十字社と医療機関のトレーサビリティが機能的につながることを確認できるようなパイロット・スタディの課題を検討する。
結果と考察
現在実施されているヘモビジランス活動において、改善すべき課題を明確にして、その対策への取り組みを開始した。
1)海外における輸血監視システムの評価と日本の位置づけ
海外において既に構築されている輸血副作用監視システム(ヘモビジランス)の現況や成績及びこれからの課題を抽出し、既存システムへの対応を検討した。
2)既存オンライン報告システムの拡充
副作用の報告体制が整備されている施設において、データの信用性を高めるため、副作用の輸血関連性、重症度などを精査する方策を検討した。また、全国19大学病院の過去4年間のデータをもとに、診療科別の発生状況の解析を進め論文としてまとめる準備を行っている。さらには教育用資材作成や輸血関連性・重症度の基準作成、インシデントの捕捉に必要な情報収集およびアンケート調査を開始した。
3)学会および日本赤十字社との協力体制の強化
日本赤十字社との協力体制構築の一環として、毎年開催されている日本赤十字社ヘモビジランス会議に外部委員として研究班員が参画し、日赤のヘモビジランス情報の透明化を図るとともに、専門的な立場から貴重なアドバイスを行うなど情報交換等のさらなる協力支援体制を確立した。
この他に、病院規模に適した副作用報告体制の構築、現在の症状項目および診断項目表の修正と輸血関連性・重症度の基準作成、ヘモビジランス普及の啓発活動、医師・看護師・検査技師の教育プログラム作成、インシデントの捕捉、病院機能評価や輸血管理料への項目追加について検討した。いずれの課題も、輸血医療全体を巻きこんで対処すべき重要な課題である。
また、トレーサビリティの確立については、トレーサビリティのフレームワークの設定とトレーサビリティが確保された場合のアウトカムについて検討し、以下の結果を得た。
1)血液製剤のトレーサビリティには、遡及による後方視的監視とtransfusion chainに沿った前方視的監視が必要である。
2)血液製剤のトレーサビリティには、血液製剤の時間軸と受血者の時間軸が存在し、2つの軸は輸血を受血者に接続するところで結びつけるのが適当である。
3)トレーサビリティの確立により、安全な輸血医療を進展させうる成果が期待できる。
今後、トレーサビリティに必要なチェックポイント毎に収集すべき情報項目を策定する予定である。また、最終年度に行われるパイロット・スタディの課題を選定し、データ収集の方法やパイロット・スタディ参加施設の選定を進めていく。
結論
既存のヘモビジランスシステムの改良・改善を図っていくことにより、輸血副作用対策において迅速かつ正確な状況判断ができるシステムの構築につながりつつある.こうした取り組みは、日本の輸血医療の安全性向上に寄与する。また、トレーサビリティを確保するためには血液製剤の時間軸と受血者の時間軸の2つの時間軸を繋ぐ必要があることがわかった。本研究で取り組む血液製剤のトレーサビリティの確立は、安全な輸血医療の進展に寄与する。

公開日・更新日

公開日
2016-07-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-07-17
更新日
-

収支報告書

文献番号
201328046Z