採血基準の見直しに関する研究

文献情報

文献番号
201328044A
報告書区分
総括
研究課題名
採血基準の見直しに関する研究
課題番号
H24-医薬-指定-035
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
河原 和夫(東京医科歯科大学大学院 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 一格(東京都赤十字血液センター)
  • 松崎 浩史(東京都赤十字血液センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、献血者のうち肝機能の評価指標の1つであるALTの基準設定の合理性ならびに献血者の体重と健康指標との関連を検討したものである。この結果をもとに採血基準を科学的根拠に基づいて再設定するとともに献血者の健康を保護することを目的としている。
研究方法
平成22年1月1日から同年12月31日の期間に献血を行なった献血者を日本赤十字社の献血者データ統一システムのデータを用いた。また、経済計算では厚生労働省の賃金センサス(賃金構造基本統計調査)2012を用いた。なお、研究を始めるにあたっては、東京医科歯科大学医学部倫理審査委員会の審査を受け、平成25年12月10日に承認されている(受付番号:1676番)。
結果と考察
ALT値に影響を与える因子として肥満や飲酒が重要であることが示された。また、少なくともALT値がHBVとHCVのsurrogate marker(代用マーカー)として機能していないこと。ALTに頼らなくとも、HBVやHCVの免疫学的スクリーニング検査やNATで感染者を排除していること等、ALT検査を実施する意義はますます希薄になっていることが明らかとなった。経済分析では、ALT値60IU/L以上の献血者から採血した血液は製剤化できないとする現行基準下では、ALT高値献血者に要した日本赤十字社の費用は、2012年に生じた経済的不利益は、31億4,347万9,200円となった。ALT高値であった献血者の機会費用は、2億8,877万7,828円となった。併せて現行基準では、34億3,225万7,028円の経済的損失が生じていた。次に体重とHB等の健康指標との関連を分析した。男性の体重“45.0kg~49.9kg”と“50.0~54.9kg”の2群を比較すると、前者では約1割がHB13.0g/dL未満であるが、後者では5.6%がHB13.0g/dL未満であった。また、この2群でCHOL(Cholesterol;コレステロール)、HB(Hemoglobin;血色素量)、HT(Hematocrit)、MCV (Mean Corpuscular Volume;平均赤血球容積)、MCH(Mean Corpuscular Hemoglobin;平均赤血球血色素量)、MCHC(Mean Corpuscular Hemoglobin Concentration;平均赤血球ヘモグロビン濃度)値に有意差が見られた。これらは主として貧血の状況などの造血能等を見る指標であることから、体重が比較的軽い男性献血者に対する影響を考慮する必要があることがわかった。体重が増加するにつれて、HB値は上昇するので、どこで線引きするかを検討していかねばならない。女性では、体重“40.0kg~44.9kg”と“45.0kg~49.9kg”の2群については、HB(Hemoglobin;血色素量)の平均値に差はなかった。しかし、体重“45.0kg~49.9kg”と“50.0~54.9kg”の2群の女性献血者の血液生化学データを比較すると、HB(Hemoglobin;血色素量)の平均値に有意差が認められた。つまり、女性も男性と同様に体重が増加するとHB値も増加している。現在、女性では40.0kg以上か45.0kg以上であればいずれかの献血が可能である。しかし、HB値から考えると、体重“40.0kg~44.9kg”と“45.0kg~49.9kg”両群はHB値に差はないことから、女性の献血可能体重を50.0kg以上に改めることが、更なる安全性の確保につながるものと思われる。ただ、体重50.0kg以上の献血者がどれくらい確保できるか、そして女性献血者が何%減少するかを試算することが、今後の課題である。
結論
少子高齢化により輸血を必要とする者は増加するが、この需要に応えるべき献血者の減少が危惧されている。必要な献血量を確保するとともに同時に献血者の健康保護をなお一層図っていくことが血液事業には課せられている。

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201328044Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 135,727円
人件費・謝金 2,898,098円
旅費 362,090円
その他 1,604,085円
間接経費 0円
合計 5,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2014-05-28
更新日
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