ヒトiPS分化細胞を利用した医薬品のヒト特異的有害反応評価系の開発・標準化

文献情報

文献番号
201328040A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトiPS分化細胞を利用した医薬品のヒト特異的有害反応評価系の開発・標準化
課題番号
H24-医薬-指定-030
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
関野 祐子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験センター・薬理部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 薫(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験センター・薬理部)
  • 諫田 泰成(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験センター・薬理部)
  • 石田 誠一(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験センター・薬理部)
  • 吉田 善紀(京都大学 iPS細胞研究所 )
  • 山下 潤(京都大学 iPS細胞研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
80,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒト人工多能性幹(iPS)細胞から誘導された分化細胞を新薬開発の非臨床試験段階で用いることには、動物実験の種差の問題を克服する、医薬品の有害反応から患者を守る、医薬品候補化合物のヒット確率を高める、などの様々な成果が期待されている。本研究では、ヒトiPS細胞由来心筋細胞、神経細胞、肝臓細胞を用いて、医薬品のヒト特異的な有害反応を検出する安全性薬理実験系を構築し、より予測性の高い安全性薬理試験法を提案することを目的としている。再現性の良い、簡便な実験プロトコルを開発・標準化して施設内・施設間バリデーションを行い、試験法の公定化を目指す。特に、平成25年度は、現在入手可能な各種分化細胞について、前年度に決定した評価指標を解析するための薬理実験を行い、同一ロットで同一手法による実験データの比較を行い、分化細胞の機能評価を行った。
研究方法
評価法は、下記の分担研究者が開発する。
・ヒトiPS 細胞由来神経細胞等の薬理学的プロファイルに関する研究(佐藤薫)
・ヒトiPS細胞由来の心筋細胞の品質評価に関する研究(諫田泰成)
・ヒト幹細胞由来肝実質細胞の有害反応評価試験への適応基準作成研究(石田誠一)
さらに、下記の分担研究者が評価系に利用可能な心筋細胞を作製する。
・種々のヒトiPS細胞から誘導された心筋の遺伝子プロファイル研究(吉田善紀)
・ヒトiPS細胞からの評価法用死人細胞の開発研究(山下潤)
 市販されている分化細胞(神経細胞、心筋細胞、肝臓細胞)をもちいて、同一手法による実験データの再現性を確認する。また製品のバッチ間比較を行った。また、大学の研究室などで作成された細胞や違う細胞を同一手法で評価して、細胞毎の特性の違いを検証する。これらの実験より、実験プロトコルの標準化作業をすすめる。
結果と考察
心筋細胞:心筋細胞を90%以上の純度にして多点電極上で高密度培養する実験プロトコルを使って、3施設でIKr阻害薬(E-4031)の薬理効果を比較した。同一ロットで、培養日数、細胞培養の密度をそろえることでデータの再現性が高くなり、多施設間のデータがそろうことが明らかになった。基本の心拍数などは分化誘導後の日数が浅いと不安定である傾向があった。培養密度はイオンチャネルの発現密度に影響をあたえた。純化した心筋細胞を多点電極上に30000/2ulという密度でまくと実験者間のデータのばらつきが少なくなった。分担研究者が作成した心筋細胞も、多点電極上で高密度培養する実験方法を適用し、同様の薬理実験ができることを確認した。
神経細胞:細胞内カルシウムイメージング法を使って、薬理実験プロトコルを整備した。入手可能な分化神経細胞のATP、グルタミン酸、GABAに対する細胞内カルシウム濃度変化を培養日数を追って調べたところ、異なるiPS細胞株から作成された神経幹塊からは、違う応答パターンが得られた。また市販のものも調べたが、同一ロット番号でも各チューブで異なる場合もあった。
肝臓細胞については、昨年は活性が認められないものが多かったが、今年は非常に高いCYP3A4活性が認められる製品が登場した。活性並びに遺伝子発現の双方において、リファンピシンによるCYP3A4誘導が認められる分化細胞が登場した。
結論
同一箇所で製造された同一ロットの分化細胞を用いれば、実験データの再現性が高いことが分かった。しかし、同一分化手法を用いても、もととなるiPS細胞株の違いで、分化細胞のフェノタイプは大きく異なる可能性が、神経幹塊から神経細胞を分化した研究から、示唆された。また、肝臓の酵素活性が認められうようになったという事実から、分化誘導法の開発が進んでいることが窺われる。
 レギュラトリーの側面からみると、平成25年7月に米国でICH E14の廃止とICHS7Bの改訂が提案されたことが本研究に大きな拍車をかけた。S7B改訂の科学的根拠を提出するためComprehensive in vitro Proarrythmia Assay (CiPA)という日米欧規制機関による国際研究チームが結成された。CiPA活動の5つのワーキングチームのうちCardiomyocitesワーキングチームは国際的共同バリデーション研究の開始を提案した。そこで、安全性薬理試験ガイドラインで利用出来るヒトiPS細胞由来分化心筋細胞を日本から提案することが喫緊の課題となった。
 平成25年度夏から急激に激化した、試験法の国際開発競争に対応し、日本の技術のグルーバル化と日本の分化細胞を海外に展開するため研究体制を強化する必要がある

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201328040Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
80,000,000円
(2)補助金確定額
80,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 28,324,958円
人件費・謝金 9,102,404円
旅費 3,560,109円
その他 39,014,534円
間接経費 0円
合計 80,002,005円

備考

備考
預金利息分2,005円

公開日・更新日

公開日
2015-06-30
更新日
-