細胞・組織加工製品の開発環境整備に向けたレギュラトリーサイエンス研究

文献情報

文献番号
201328037A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞・組織加工製品の開発環境整備に向けたレギュラトリーサイエンス研究
課題番号
H24-医薬-指定-027
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 陽治(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部)
研究分担者(所属機関)
  • 堤 秀樹(公益財団法人実験動物中央研究所 試験事業部)
  • 澤田 留美(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部 )
  • 鈴木 孝昌(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部 )
  • 安田 智(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
33,950,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,新たなガイドライン作成に資する細胞・組織加工製品,特に幹細胞加工製品の品質・安全性評価法の開発を行うことを目的とする.
研究方法
①汎用性・定量性のある幹細胞加工製品の造腫瘍性試験法の開発を目指した実験研究,②培養工程での遺伝子発現の動態解析に基づく品質・安全性評価指標の開発に関する研究,③製造工程における遺伝子安定性評価法の開発に関する研究,④幹細胞(未分化細胞)における分化プロペンシティの評価系の開発に関する研究を実施した.
結果と考察
①我々は,マトリゲルにHeLa細胞を懸濁してNOGマウスに投与することにより,従来の国際ガイドラインにある方法より約5,000倍高感度で腫瘍細胞を検出できることを既に示している.NOGヘアレスマウス(NOG-hr)はNOGマウスと比較し,目視・触診による腫瘍形成の検出が容易であり,造腫瘍性試験の効率化が期待される.しかし,その免疫学的な背景がオリジナルのNOGマウスと同等かは不明確であったため,HeLa細胞のTPD50を指標にして異種細胞の生着能を,ヒト臍帯血由来造血幹細胞移植後の経時的FACS解析データを指標にして血球細胞の分化動態を求め,その差異をNOGマウスと比較した.NOG-hrマウスの異種細胞TPD50はHeLa細胞単独移植,あるいはマトリゲルとの混合移植の何れにおいてもNOGマウスよりも高値を示し,異種細胞生着能が僅かながら低いことが判明した.また,ヒト造血幹細胞移入後のヒト細胞(CD45陽性細胞)の出現率はいずれのポイントにおいてもNOG-hrマウスの方が低かった.しかし,各細胞分画には両者間に大きな差異はなかった.これらのことはNOG-hrマウスの免疫不全能はNOGマウスと量的な差はあるものの,質的な差はないことを示している.②我々はこれまでに,幹細胞の安全性を評価するための遺伝子レベルにおけるマーカーの検索を行い,Cyclin D2の強制発現によってhMSCの増殖が亢進されることを見出した.遺伝子発現の網羅的解析から,Cyclin D2の強制発現によってhMSCの「細胞増殖」や「細胞周期」に関わる機能が有意に亢進されることがわかった.また,hMSCにおいてgenome integrityを脅かす可能性があるLINE-1sと,その抑制因子と報告されているA3Bとの関係について,A3B遺伝子型とLINE-1sの発現量の解析を行った.A3B mRNA発現量とLINE-1s mRNAの発現量には相関関係は見られなかった.しかし,LINE-1s mRNAのORF2領域の配列を解析したところ,A3Bを発現するIns/InsとIns/Delでは同程度の変異が見られたが,Del/Delではほとんど変異が見られなかった.したがって,Del/Delでは遺伝子配列が保存された転移可能なLINE-1sが多く残存している可能性が示唆された.③我々は,主に細胞の遺伝的安定性の評価という観点から,次世代型シークエンサーの活用に関して検討を行ってきた.ホールゲノムシークエンシングに関しては,バンク化されるマスター細胞の品質保証としての利用が考えられているが,そのデータの信頼性評価と解析が課題となっている.我々は,既に遺伝子増幅や染色体のリアレンジメントが起きていることが確認されている細胞をモデルとして用いて,次世代シークエンサーを用いたホールゲノム解析を進めた.シークエンス解析法としての有用性とともに,コピー数変化の検出法としても有用であることを示すとともに,今回は遺伝子レベルでの欠失および増幅の検出に関する知見を得た.一方で,LC-MS/MSを用いたプロテオミクスデータの可視化により各種細胞より得られるタンパク発現プロファイルに関する質的および量的情報をリファレンスデータとして提供するためのツールとしてProteomeMapというソフトウエアを開発した.④ヒトiPS細胞10株から胚葉体を形成させ,三胚葉系細胞のマーカー遺伝子を定量し,主成分分析を行うことにより,各々の細胞株の内胚葉,中胚葉および外胚葉系細胞への分化プロペンシティを数値化した.さらに未分化状態でのヒトiPS細胞株の網羅的なトランスクリプトーム解析を行い,発現量と分化プロペンシティとの相関のあるmRNAとmiRNAの同定を試みた.今回の結果は,未分化状態のヒトiPS細胞株における内胚葉,中胚葉および外胚葉系細胞への分化プロペンシティ予測マーカーの同定に繋がるものと期待される.
結論
これらの成果を更に展開することにより細胞・組織加工製品の有効性・安全性に関する品質評価に必要な指標・評価法が示され,迅速で適切な製品開発・審査および再生医療の実用化推進に貢献できると考えられる.

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201328037Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
33,950,000円
(2)補助金確定額
33,950,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 18,782,441円
人件費・謝金 5,725,431円
旅費 3,576,698円
その他 5,875,951円
間接経費 0円
合計 33,960,521円

備考

備考
自己資金(8,621円)および預金利息(1,900円)により,10,521円だけ支出が多い.

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-