小児がんの臨床評価に関する研究

文献情報

文献番号
201328035A
報告書区分
総括
研究課題名
小児がんの臨床評価に関する研究
課題番号
H24-医薬-指定-025
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
小川 千登世(独立行政法人国立がん研究センター中央病院 小児腫瘍科)
研究分担者(所属機関)
  • 小川 淳(新潟県立がんセンター新潟病院 小児科)
  • 米田 光宏(大阪府立母子保健総合医療センター 小児外科)
  • 富澤 大輔(東京医科歯科大学医学部附属病院 小児科)
  • 吉村 健一(神戸大学医学部附属病院 臨床研究推進センター)
  • 手良向 聡(金沢大学附属病院 先端医療開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
1,650,000円
研究者交替、所属機関変更
研究代表者を以下のとおり交替した。 旧研究代表者 菊地陽(帝京大学医学部) 交替年月日 平成25年10月1日申請

研究報告書(概要版)

研究目的
小児がんは稀少疾患であるが、5~14歳の病死の原因の第一位であり、継続的な治療開発と新規薬剤の導入が必要かつ有効な疾患である。本研究は、小児がんに対する適切な抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法を記載したガイドラインを作成すること目的とし、作成することによって、小児がん用の医薬品の薬事承認への道筋を明らかにし、ガイドラインに沿った臨床試験の実施によって、小児がん分野で使用できる薬剤を増やし、小児がん患者の予後及び生活の質の改善に寄与すると考える。
研究方法
昨年度までの現状分析を基に行政側との意見交換も行いつつ、次の課題について1)「小児悪性腫瘍における抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン(仮称)」の対象範囲を定義づけ、2)背景に記載すべき情報を決定し、不足情報を追加収集、3)対象を造血器腫瘍、固形腫瘍、脳腫瘍に分類、各疾患群の疾患背景の違いによりの開発戦略、4)薬剤のエビデンスレベルに応じて必要とされる試験設定、5)稀少疾患である小児がんにおける薬剤開発における試験デザインについて検討をした。「小児悪性腫瘍における抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン(仮称)」の枠組みの検討、骨子・素案の作成にも着手している。
結果と考察
1)ガイドラインの対象となる疾患範囲の定義:対象疾患である「小児悪性腫瘍」には抗悪性腫瘍薬治療を必要とするすべての小児腫瘍を含めるものとし、小児悪性腫瘍を造血器腫瘍、小児固形腫瘍、脳腫瘍に分類する。小児固形腫瘍は脳腫瘍を除く悪性固形腫瘍とする。また、脳腫瘍には組織学的に良性あるいは低悪性度であっても摘出不能で抗悪性腫瘍薬治療の適応となる「難治」脳腫瘍を含むこととした。
2)背景に記載すべき情報:背景には、①小児悪性腫瘍の病態・薬剤開発に関連する特性、②小児悪性腫瘍における薬剤開発の必要性、特に小児の特性や小児がんの特性に合わせた必要性、③薬剤開発に関連する小児悪性腫瘍の疫学について記載することとした。
3)疾患群別開発戦略:造血器腫瘍は全体の種類は成人に比して少なく、大きく以下の3群にわけられる。①成人に発症ピークがあり、同じ薬剤で治療可能なAML、CML、Ph-ALL、一部のリンパ腫。②小児に発症ピークがあり、小児対象の開発とせざるを得ないALL。③稀少疾患(小児特有のもの)に分類し、開発を行う。固形腫瘍はほとんどが成人にはまれな腫瘍であり、かつ症例数も少ないことから、稀少疾患としての開発が必要であり、エビデンスレベルに応じた開発戦略とする。脳腫瘍は成人とは胎児性腫瘍や胚細胞腫瘍の比率が高く、成人に多い神経膠腫でも小児期発症のものは多くが脳幹部神経膠腫であり、成人とは異なる特徴を持つ。開発戦略の基本は固形腫瘍と同じとするが、薬剤の中枢神経移行の差異から臨床薬理評価には注意が必要である。
4)エビデンスレベルに応じた必要とされる試験設定の検討:薬剤としての国内の成人での承認状況、海外エビデンスの質と量、対象疾患、併用療法の有無、など、いろいろなパターンに対応できるようなカテゴリー分けが必要であり、カテゴリー分類後、カテゴリー別に試験設定を検討した。
5)稀少疾患である小児がんにおける薬剤開発における試験デザインの検討:我が国の小児悪性腫瘍患者の数は多くないため、我が国の薬事承認制度に即し、かつ実地診療に必要な薬剤をいち早く届けるためには、海外臨床試験結果等のエビデンスの質と量に応じて、我が国で必要な臨床試験のサンプルサイズや試験デザインを定め、臨床試験の結果解釈の方法も含めて一定の指針を定めていく必要があると考えられ、①小児がんを対象とする臨床開発においてデザイン上考慮すべき事項の整理、② ベイズ流アプローチ、③ デザインにおける統計的考慮点について検討を行った。
一つ一つの問題点を我が国の薬事承認制度に即し検討していくことで、一定のガイドラインの骨子・素案が作成しつつある。来年度、本ガイドラインを完成させることで、小児悪性腫瘍に対する抗悪性腫瘍薬の臨床試験のあり方の指針を示すのみならず、薬事承認ラインの明確化により開発戦略が立てやすくなり、企業の薬剤開発インセンティブにもつながると考える。
結論
我が国の現行制度下において、製薬企業に対しても自ら治験を実施する医師に対しても、小児がん用の医薬品の薬事承認への道筋を明らかにし、治験を推進する目的で、小児がんに対する医薬品の臨床評価方法を記載したガイドラインの作成を進めている。次年度はガイドライン案を完成した後、関係諸機関や広く国民に対してパブリックコメントを求め、新たに出てきた論点について考え方の整理を行い、ガイドラインの完成を目指す。

公開日・更新日

公開日
2015-06-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201328035Z