国際的整合性を踏まえた医薬品情報・安全性情報の交換に関する研究

文献情報

文献番号
201328028A
報告書区分
総括
研究課題名
国際的整合性を踏まえた医薬品情報・安全性情報の交換に関する研究
課題番号
H24-医薬-指定-016
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 美保子(川崎医療福祉大学 医療福祉マネジメント学部医療情報学科)
研究分担者(所属機関)
  • 小出 大介(東京大学医学部附属病院)
  • 佐井 君江(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,580,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品安全性報告のガイドラインとして、ICH「個別症例安全性報告(ICSR)」(ICH E2B)がある。またICHでは2003年より「医薬品辞書のためのデータ項目及び基準」(ICH M5)の検討が進められてきた。一方、ICHでは電子仕様の開発は国際標準開発団体(SDO)に委ね、SDOの規格をもとにICH実装ガイドを策定するSDOプロジェクトを進めてきた。ICSRについては2011年11月にISO/HL7規格が制定され、医薬品辞書についてはISOでIDMP(Identification of Medicinal Product)の規格が2012年11月に制定された。本研究は、こうした状況を踏まえて医薬品情報、安全性情報の交換に関する国際標準の国内導入に向けての課題を整理し、円滑な導入を支援することを目的としている。平成25年度はICH E2B実装作業グループの活動、医薬品関係のIDや用語の活用を検討するサブグループの活動、関連SDOの動向を明らかにする。また、ICH内外における医薬品辞書の実装及びメンテナンス方法等に関する議論を調査するとともに、今後のISO-IDMPの実装により得られる有益性と考慮すべき課題について検討するため、現行の副作用個別症例報告データを用いて日米欧州間の重篤副作用の被疑薬情報を比較し、必要となる安全性関連情報について考察する。
研究方法
ICSRに関してはICH国際会議、HL7年総会、CDISC Interchangeの各国際会議への参加等を通じて、ICH E2B(R3)、M2、HL7 RCRIM、CDISCに関する資料を入手した。また国内で発出された複数の通知等を参照した。医薬品辞書については、ICH国際会議におけるE2B実装作業グループ(IWG)ならびにICH外の活動内容を調査した。また、日本医療情報センター(JAPIC)の提供する副作用報告データソースを用いて重篤副作用として横紋筋融解症を対象に、各国における自発報告件数とともに、横紋筋融解症発症を特徴とする被疑薬の検出のためPRR法によるシグナル値を用いて解析した。さらにICH M2専門家会議の議論について国際会議および国際電話会議への参加を通じて調査しSDOプロセス全般に関わる活動を整理した。
結果と考察
ICHではIDMPをICSRに限定して用いることとなり、E2B(R3) IWGに引き継がれ、各種IDMPの管理についてはE2B(R3) IWGのサブグループが担当することとなった。新ICSRの国内導入について通知が出され、2016年4月1日からの開始が示された。今後システム開発を含めた準備、製薬企業と規制当局とのテストを確実に進め万全を期すことが求められる。HL7のメッセージを用いていることから詳細な解説集などが望まれる。また、米国や欧州の独自仕様の部分等を含めコンフリクトがないか検討が必要である。
現行の各国副作用個別症例報告データを基に、横紋筋融解症を対象として各極における被疑薬情報の比較を行い、ISO-IDMPの実装の有益性とともに安全性監視活動推進のため考慮すべき情報について考察した。IDMPを利用したICSRの情報交換が実現すれば、安全性評価のための解析も容易となり、安全性監視活動の一層の推進に繋がると考えられる。またIDMP及びICSRに基づく情報から安全性評価プロセスの効率化を目指すには様々な副作用リスクに影響する要因についても考慮することが必要となる。ICHでは2013年にE2B(R3)を対象としたサーベイが実施され、SDOパイロットを通じて得られた知見が集約された。ICHとして最初のSDOプロジェクトであるE2B(R3)は組織間調整等も含め多くの労力と時間が費やされたが、SDOプロセスに関する重要な知見が得られた。
結論
ICHでは今後、ICSRに制限してIDMPを利用していくためE2B(R3)IWGに活動が継続され、また維持管理組織との連携のためサブグループが形成され活動していくこととなった。欧米との独自仕様部分についてはコンフリクトがないか早急に情報を得て対応されなければならない。日本においても今後ともICH内外の活動を通じて各極との情報共有を図りながら、日本の実状に適した医薬品辞書システムの構築に向けて継続的な検討が重要となる。今後のIDMPの実装が各国のファーマコビジランス活動をより効率的なものとするためにも関連情報の発信のあり方について、さらなる検討が必要である。また、国際規格化と同時にICH IGの開発を進めるSDOプロジェクト支援のためのマネジメントシステムが今後とも重要である。

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201328028Z