ワクチンの品質確保のための国家検定制度の抜本的改正に関する研究

文献情報

文献番号
201328011A
報告書区分
総括
研究課題名
ワクチンの品質確保のための国家検定制度の抜本的改正に関する研究
課題番号
H24-医薬-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 治雄(国立感染症研究所 )
研究分担者(所属機関)
  • 倉根 一郎(国立感染症研究所)
  • 浜口 功(国立感染症研究所)
  • 西條 政幸(国立感染症研究所)
  • 脇田 隆字(国立感染症研究所)
  • 竹田 誠(国立感染症研究所)
  • 柴山 恵吾(国立感染症研究所)
  • 加藤 篤(国立感染症研究所)
  • 板村 繁之(国立感染症研究所)
  • 柊元 巌(国立感染症研究所)
  • 多屋 馨子(国立感染症研究所)
  • 内藤 誠之郎(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,340,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国家検定(ロットリリース)にSLP審査制度が導入されたことにより、国立感染症研究所(感染研)には、これまで以上に、ワクチンのロットごとの製造情報並びに試験情報が集積されることになった。これらの情報を適切に評価して、ワクチンの品質向上に生かすためには、承認審査、GMP調査並びに製造販売後調査からの関連情報が感染研に提供されることが重要である。また、逆に、感染研に集積されたSLPから得られた製剤各ロットの製造記録情報は、承認審査、GMP調査並びに製造販売後調査に対しても、有用な情報になり得ると期待される。さらに、リソースの最適配分という観点からの検定業務の抜本的な見直しも必要になって来ている。以上のような背景のもと、さらなるワクチンの「安心、安全」の向上に資することを目的に、「GMP調査との連携のあり方」「製造販売後調査との連携のあり方」「製造販売承認制度との整合的運用」などの観点を含めて、国家検定制度に関する網羅的かつ抜本的な調査研究を行った。
研究方法
国家検定制度を中心に、承認審査、GMP調査並びに製造販売後調査にも通暁する人材をそろえ(必要に応じて研究協力者を招聘)、1.全ロット全製品一律試験制度の見直しを含めた国家検定制度の抜本的見直し、2.国家検定とGMP調査の連携のあり方、3.国家検定と製造販売後調査の連携のあり方、4.製造販売承認制度と国家検定制度の整合的運用、5.国家検定における生物基と承認書の位置づけ、6.国際調和の観点からの国家検定制度のあり方、の各論点について調査研究を実施した。欧米の状況を現地調査やアンケート調査等により調査し、本邦の状況と比較した。
結果と考察
海外調査の結果では、ほとんどの国/地域において、SLP審査をワクチンのロットリリースの必須要件としており、それに加えていくつかの試験を実施している国/地域が多かった。本邦においてSLP審査をワクチンの国家検定に導入したことは、国際調和の面から有意義であったことが確認された。欧州においては血液製剤についてもSLP審査を実施していた。血液製剤の国家検定にSLP審査を導入するかどうかは、今後の検討課題として重要である。ロットリリースに際して実施する試験の種類及び項目数には、国/地域により違いが見られた。本邦においては、SLP審査が導入されたところで、あらためて試験の必要性を検証し実施項目を見直すことが必要と考えられた。試験の実施頻度については、本邦のようにすべてのロットについて試験を実施している国/地域がある一方で、製剤/製品のリスクを評価して、それに応じた頻度で試験を実施している国/地域があった。限られたリソースを有効に活用して、よりよいワクチンの品質確保の体制を構築するという観点から、リスクベースでの一部ロット試験を導入することは、本邦においても検討する価値のある課題と考えられた。新規ワクチンの試験法及び規格に関しての製造所と公的医薬品試験所との間での協議の開始時期については、臨床試験の実施の開始時から行うなど、承認申請前に開始する国/地域が多かった。ロットリリース制度と承認審査、GMP査察、製造販売後調査等の薬事規制間の連携や試験法導入時の検討体制については、改善の余地がある課題と思われる。2013年3月の予防接種法の一部を改正する法律により、同年4月1日以降、医師に予防接種後副反応報告が義務化された。膨大なデータを的確に解析し、副反応の異常集積と当該ロットの国家検定情報とを迅速に分析し、両者の関連性の発見をタイムリーな警告に結びつけることができるシステムの導入が望まれる。
結論
1) SLP審査をワクチンの国家検定に導入したことは、国際調和の面から有意義であったことが確認された。2) 血液製剤に対するSLP審査を導入は今後の検討課題である。3) ロットリリース試験の実施項目としては、力価試験など共通な項目もあっが、試験の種類及び項目数には、国/地域により違いが見られた。4) 試験の実施頻度については、全ロット試験の国/地域と一部ロット試験の国/地域に分かれた。5) 新規ワクチンの試験法及び規格に関する製造所と公的医薬品試験所との協議等の開始時期については、承認申請前の段階からとする国/地域が多かった。6) 予防接種後副反応報告のデータを検定情報とも関連づけて解析し、副反応の異常集積等を迅速に探知するためには、コンピュータを利用した解析システムを導入することが不可欠である。7) SLP審査導入後にも、国家検定制度には様々な課題が残っている。課題の解決に向けてさらに調査研究を進める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2018-06-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201328011Z