コンパニオン体外診断用医薬品の臨床性能試験の在り方に関する再帰的研究

文献情報

文献番号
201328001A
報告書区分
総括
研究課題名
コンパニオン体外診断用医薬品の臨床性能試験の在り方に関する再帰的研究
課題番号
H23-医薬-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
池田 正行(香川大学 医学部附属病院 医療情報部)
研究分担者(所属機関)
  • 嶋澤 るみ子(九州大学病院 ARO 次世代医療センター)
  • 戸高 浩司(九州大学病院 ARO 次世代医療センター)
  • 横井 英人(香川大学 医学部附属病院 医療情報部)
  • 狩野 芳伸(国立情報学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,860,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ゲノム薬理学バイオマーカー(以下PGBM)並びにコンパニオン体外診断用医薬品(以下CoDx)の開発及び承認審査の在り方に対して適切な提言する
研究方法
1.米国が承認済みの医薬品に関連したPGBM/CoDxについて、公開されている情報を用いて日米の承認/保険償還状況を比較検討した.
2.米国、英国、日本の添付文書へのコンパニオン診断を目的としたバイオマーカーの記載状況調査を行い、各規制当局の取り組みについて比較した。
3.CoDx承認例の規制当局による情報公開について米国と本邦とで比較調査した。
4.厚労省法令DB に公開されているコンパニオン診断薬に関連する行政文書を中心にテキストマイニングを行った.
結果と考察
1.ゲノム薬理学バイオマーカー並びにコンパニオン体外診断用医薬品(CoDx)の承認/保険償還状況―日米の比較検討―:2013年3月現在、38のPGBMが米国FDAの一覧表にリストアップされていた。38 PGBMのうち、診療分野別では,悪性新生物が15(39%)と最も多かった。対応するCoDx が承認されていたのは20(53%)だった.38 PGBM中、日本で対応する医薬品が承認されているのは32PGBMだった。その中で,診療分野別では,悪性新生物が11(34%)と最も多かった。32PGBM中で,対応するCoDx が承認されていたのは11(34%)だったが,未承認でも保険償還されている4PGBMを含めると,承認/保険償還されているPGBMは15(47%)であった
2.コンパニオン診断薬の審査標準化―医薬品添付文書におけるバイオマーカー記載の比較/コンパニオン診断薬の同等性評価事例―:米国、英国、日本の添付文書へのコンパニオン診断を目的としたバイオマーカーの記載状況調査を行い、各規制当局の取り組みについて比較した。添付文書に関する調査では、バイオマーカーに関する記載を積極的に取り入れる傾向は、最も米国が強く、英国、日本の順であった。’Indications’に記載される情報は一致率が高いなど、3ヶ国間の記載状況の差はバイオマーカーの種類、医薬品の対象疾患等により異なっていた
3.テーラーメード医薬品開発における障壁の検討:CoDx承認例の規制当局による情報公開について米国と本邦とで比較調査した。公開されたCoDx添付文書と対応する治療薬添付文書を対象とした。米国でCoDx15件、治療薬9件、日本ではそれぞれ14、7件と比較的少数であった。米国の添付文書では殆どの場合双方に「適応の判断に用いる」「FDA 承認検査を用いること」のように相手を指定した明瞭な記載がされていた。
4.審査過程の明確化を目指した審査報告書のテキストマイニング:厚労省法令DB に公開されているコンパニオン診断薬に関連する行政文書を中心にテキストマイニングを試みた。対象となる文書が限られていたため、分析には限界があった。また、行政文書には、独特な表現や特有の言い回しが多用されており、市販のテキストマイニングツールをそのまま活用するには限界があることも分かった
結論
PGBM/CoDxに関しては,まだ承認状況に日米差があるものの,その差は数年来縮小している.本研究で特記すべき事は,未承認ながらも保険償還されている4品目が日米差の縮小に貢献していたことである.我が国でも医療費の費用対効果や医療資源の効率的な分配が議論される中で,未承認でも保険償還を可能にするという,世界でも類の無い日本独自の仕組みを,今後の国民皆保険制度下でどのように運用すべきなのか,早急に議論を開始する必要がある.日米英3ヶ国の添付文書でのバイオマーカー記載状況に関しては、医薬品添付文書に記載されているバイオマーカーの情報が国により異なるが、’Indications’に記載される情報は一致率が高いなど、バイオマーカーの種類や医薬品の対象疾患による差がみられた。コンパニオン診断薬の同等性評価に関しては、FDAの審査においても、一致率90%以上程度が一つの目安で判断されている傾向が窺えた。

公開日・更新日

公開日
2018-06-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201328001B
報告書区分
総合
研究課題名
コンパニオン体外診断用医薬品の臨床性能試験の在り方に関する再帰的研究
課題番号
H23-医薬-一般-002
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
池田 正行(香川大学 医学部附属病院 医療情報部)
研究分担者(所属機関)
  • 嶋澤るみ子(九州大学病院 ARO 次 世代医療センター)
  • 戸高浩司(九州大学病院 ARO 次 世代医療センター)
  • 横井英人(香川大学 医学部附属病院 医療情報部)
  • 狩野芳伸(国立情報学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品の安全かつ効果的な使用のために不可欠な情報を提供するゲノム薬理学的バイオマーカー(PGBM)とコンパニオン体外診断用医薬品(以下CoDx と略)CoDx の臨床性能試験が科学的・倫理的に適切に実施されるための方策を明らかにし、その開発,承認審査,市販後規制に資すること
研究方法
1.公開されている承認情報を用いて、米国が承認済みの、CoDx が必要とされる医薬品について、日米欧三極の承認状況の比較検討,および米国が承認済みの医薬品に関連したゲノム薬理学的バイオマーカー(PGBM)/CoDx について、公開されている情報を用いて日米の承認/保険償還状況を比較検討した。
2.①米国FDA と欧州EMA より、それぞれ公表されているコンパニオン診断薬とそれに対応する治療製品の開発に関するガイダンス案の内容検討を中心とした両規制当局の取り組みの調査 ②米国、英国、日本の添付文書へのコンパニオン診断を目的としたバイオマーカーの記載状況調査 ③コンパニオン診断薬の同等性評価に関するFDA 承認事例の調査を行った。
結果と考察
1.①The Personalized Medicine Coalition のリストでCoDx の使用が必須とされていたのは、17品目、18 効能効果だった。18 効能効果のうち、16 効能効果が悪性新生物(うち固形癌7、血液・リンパ系9)、1 つがHIV/AIDS、もう1 つが嚢胞線維症だった。2012 年9 月現在、18 効能効果中、欧州で未承認は4 効能効果だった。日本で未承認は、6 効能効果だった.2005 年以降に米国で承認された効能効果では、米国や欧州よりも大幅に遅れることなく承認されていることが示された。
②2013 年3 月現在、FDA のリストには38 のPGBM が掲載されていた。38 PGBM のうち20 (53%) について対応するCoDx が承認されていたが、医薬品とCoDx が同時に開発されていたのは、ALK, ERBB2(HER2)、BRAF の3品目のみであり、他の17 品目では、医薬品とCoDx は別途に開発されていた。FDA のリストにある38 のPGBM のうち、対応医薬品が日本で未承認のものは, 6 品目であった。日本で対応医薬品が承認されていた32 のPGBM のうち、15 (47%) が対応するCoDx が承認ないしは保険償還されていたが、そのうち4 PGBM のCoDx は未承認にもかかわらず保険償還されていた.
2.①に関しては、FDA、EMA ともコンパニオン診断薬を伴う治療用製品(医薬品)の開発を推進する点は同様であるが、FDA が規制上の承認(許可)要件の理想的原則論を記載しているのに対し、EMA は実際の臨床試験デザインなどの具体的開発方法に重点が置かれている特徴があった。 ②に関しては、バイオマーカーに関する記載を積極的に取り入れる傾向は、最も米国が強く、英国、日本の順であるが、’Indications’に記載される情報は一致率が高いなど、3 ヶ国間の記載状況の差は、バイオマーカーの種類、医薬品の対象疾患等により異なっていた。③に関しては、一致率90%以上が一つの目安となっている印象は受けるものの、最終的な判断は、診断薬の測定原理や不一致例の原因等を総合的に判断して行われていることが窺えた。
結論
欧米で承認されながら日本で未承認のCoDx を伴う医薬品の承認審査は2008 年以降、急速に進み、今や欧米と比べても、ほぼ遜色のない承認状況となっていた。PGBM/CoDx の承認状況を検討した結果、未承認でも保険償還を可能にするという、世界でも類の無い日本独自の仕組みが日米差の縮小に貢献していたことが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2018-06-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201328001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
米国FDAと欧州EMAのコンパニオン診断薬(CoDx)開発に関するガイダンス案の内容を検討したところ、FDAが規制上の承認(許可)要件の理想的原則論を記載しているのに対し、EMAは実際の臨床試験デザインなどの具体的開発方法に重点が置かれている特徴があった。さらに米国、英国、日本の添付文書へのCoDxを目的としたゲノムバイオマーカー(PGBM)の記載状況調査を行ったところ、3ヶ国間の記載状況の差は、PGBMの種類、医薬品の対象疾患等により異なっていた.
臨床的観点からの成果
2013年3月現在米国FDAの一覧表に掲載されていた38のゲノムバイオマーカー(PGBM)のうち、対応するコンパニオン診断薬(CoDx) が承認されていたのは20(53%)だった.38 PGBM中、日本で対応する医薬品が承認されていた32PGBM中,対応するCoDx が承認されていたのは11(34%)だったが,未承認でも保険償還されている4PGBMを含めると,保険償還されているPGBMは15(47%)と,日米間ではほとんど差が無くなっていた.
ガイドライン等の開発
ガイドラインなどの開発:平成25年12月24日薬機発第1224029号コンパニオン診断薬及び関連する医薬品に関する技術的ガイダンス等について
審議会等:平成23年12月6日(火)内閣官房 医療イノベーション推進室 レギュラトリーサイエンスワーキングチーム コンパニオン診断薬に係る諸問題について意見交換を行った.
その他行政的観点からの成果
ゲノム薬理学的バイオマーカー/コンパニオン診断薬に関しては,まだ承認状況に日米差があるものの,その差は数年来縮小していること,未承認ながらも保険償還されている品目が日米差の縮小に貢献していたことを明らかにした.これらの我々の研究結果は,我が国でも医療費の費用対効果や医療資源の効率的な分配が議論される中で,未承認でも保険償還を可能にするという,世界でも類の無い日本独自の仕組みを,今後の国民皆保険制度下で運用する上で,政策提言の有意義な材料となった.
その他のインパクト
2012/9/21(金)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団会議室にて同財団規制動向調査ワーキングループよりヒアリングを受け,その結果はHSレポート No.79規制動向調査報告書「コンパニオン診断薬を用いた個別化医療-その開発と規制の動向-」として同財団ウェブで報道発表とともに公開されている.本報告書では,同財団の調査活動を通じて抽出された課題を速やかに解決するために,行政,アカデミア,産業等が採るべき方策として4項目について具体的な提言がなされた.

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
平成25年12月24日薬機発第1224029号コンパニオン診断薬及び関連する医薬品に関する技術的ガイダンス等について
その他成果(普及・啓発活動)
1件
2012/9/21(金)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団会議室にて同財団規制動向調査ワーキングループよりヒアリングを受けた

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shimazawa R, Ikeda M
Approval gap of pharmacogenomic biomarkers and in vitro companion diagnostics between the United States and Japan
J Clin Pharm Ther , 39 , 210-214  (2014)
原著論文2
Shimazawa R, Ikeda M
Differences in pharmacogenomic biomarker information in package inserts from the United States, the United Kingdom and Japan
J Clin Pharm Ther , 38 , 468-475  (2013)
原著論文3
Shimazawa R, Ikeda M
Safety information in drug labeling: a comparison of the USA, the UK, and Japan
Pharmacoepidemiol Drug Saf , 22 , 306-318  (2013)

公開日・更新日

公開日
2018-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201328001Z