流行の恐れがある病原大腸菌の遺伝学的調査とその食中毒予防・迅速対応に資する情報ネットワーク基盤構築に関する研究

文献情報

文献番号
201327053A
報告書区分
総括
研究課題名
流行の恐れがある病原大腸菌の遺伝学的調査とその食中毒予防・迅速対応に資する情報ネットワーク基盤構築に関する研究
課題番号
H25-食品-若手-018
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
井口 純(国立大学法人宮崎大学IR推進機構 )
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli:EHEC)を含む病原大腸菌による食中毒事例は世界各地で発生しており、一部の患者は重症化して死亡することから最も注意が必要な食中毒細菌の1つとして挙げられる。また稀なタイプの病原大腸菌による突発的な事例も発生しており、それらの出現や侵入を日常的に監視できる検査体制を整えて我が国における食の安全を確保する必要がある。本研究では、事例報告数は少ないものの散発事例や食品汚染が報告されている、(1) O157、O26、O111以外のEHEC(非典型的EHEC)、(2) 腸管病原性大腸菌(EPEC)、(3) 腸管凝集付着性大腸菌(EAggEC)に注目し、食品や家畜、ヒトなどの横断的なサンプルから分離された菌株について遺伝学的な特徴を網羅的に解析し、それらの情報を基に病原大腸菌の食中毒予防・迅速対応に資する情報共有ネットワーク基盤の構築、および実用可能な遺伝学的検査系の開発を目指した。
研究方法
2007年以降に国内で家畜・野生動物糞便、食品、ヒト糞便(下痢症などの有症患者および無症状保菌者を含む)から分離された非典型的EHEC(542株)、EPEC(10株)、EAggEC(32株)の計584株を使用した。基本的に一集団事例からは最大2株を使用し、一検体からは1株のみ(O-genotypeが異なる場合は各タイプ1株)を使用した。遺伝学的な解析として、21種類の既知大腸菌病原関連遺伝子の保有をPCRにより確認した。さらに菌株のクローン性(系統的単一グループ)を識別する手法としては代表者グループが開発したO血清群の遺伝学的なタイピング(E. coli O-genotyping)を行った。
結果と考察
全体として113種類のO-genotypeが確認され、そのうち非典型的EHECからは96種類のO-genotypeが確認された。判定不能(O-genotype untypeable:OgUT)は584株中97株(16.6%)であった。非典型的EHECにおいて家畜・野生動物とヒト-有症患者分離株の両方で確認されたO-genotypeは、Og5、Og8、Og84、Og88、Og91、Og98、Og103、Og109、Og113、Og115、Og146、Og156、Og163、Og172、Og174、Og177、Og182、OgC10の18種類であった。その中で家畜・野生動物とヒト-有症患者分離株間で同じ遺伝子プロファイルが確認されたものは、Og5、Og8、Og91、Og103、Og113、Og156、Og163 、Og177、Og182の9種類であった。さらに家畜・野生動物と重症(血便またはHUS)患者分離株間でO-genotypeと遺伝子プロファイルが同じものがOg5、Og84、Og103、Og113、Og163、Og177、Og182の7種類でみられたことから、それぞれのクローン株が動物やヒトに広く分布(汚染)していると推測された。感染症対策に資する情報として、事例報告数は少ないものの散発事例や食品汚染が報告されている稀なタイプの病原大腸菌についても、O-genotypeや病原関連遺伝子保有の詳細を解析しておくことは、汚染状況や今度の動向を把握する上で重要であると考えられた。
結論
家畜・野生動物、食品、ヒトより分離された、流行の恐れがある病原大腸菌の遺伝学的特徴解析を実施した。今後は本研究で得られた結果を基に、情報共有データベースの構築や新規分類手法の開発を行い、継続的な監視システムを構築することが必要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201327053Z